建築協定は、土地を買った大家にも効きます|建築基準法75条の例外と、入居者を「所有者等」とみなす77条

結論からお伝えすると、建築協定は協定に判を押していない人にも効きます。建築基準法75条は、認可の公告があった日より後に区域内の土地の所有者等になった人にも協定の効力が及ぶ、と定めています。ただし例外が1つあり、協定に合意しなかった人の土地を引き継いだ人には及びません。さらに77条は、基準が建物の借主の権限にかかわる場合、借主を「土地の所有者等」とみなすとしています。それなのに、建物を貸すときの重要事項説明の項目に建築協定は入っていません(宅地建物取引業法施行令3条3項)。2026年10月12日時点の条文と、さいたま市の公表資料で順に確かめます。

仮の話です。分譲から30年ほどたった住宅地の中古の一戸建てを、貸すつもりで買おうとしている。売買の重要事項説明書の「法令上の制限」の欄に、建築基準法の項目と並んで「建築協定」と書いてある。説明は数分で終わり、手元には協定書の写しが1部。この1部が、買ったあとの自分と、そこに住む入居者に何をするのか。条文を開いていきます。

建築協定の区域で大家が見る5点。買った人にも効く(75条)、合意しなかった人の土地を継いだ人は除かれる、入居者も所有者等とみなされうる(77条)、賃貸の重要事項説明の項目には入っていない、工事の前に運営委員会へ届け出る。

建築協定とは、誰が決めたルールなのか?

建築基準法69条は、市町村が条例で区域を定めたうえで、その区域の土地の所有者と借地権者(「土地の所有者等」)が、建物の敷地・位置・構造・用途・形態・意匠・建築設備について協定を結べるとしています。国や市が決めた規制ではなく、住んでいる人どうしの申し合わせを、法律が後押しする仕組みです。

70条1項は、協定書に次の4つを書き、特定行政庁の認可を受けるよう求めています。

  • 協定の区域(建築協定区域)
  • 建築物に関する基準
  • 協定の有効期間
  • 協定違反があった場合の措置

協定書は土地の所有者等の全員の合意が要ります(70条3項)。認可されると公告され、協定書は市町村の事務所で誰でも見られるようになります(73条2項・3項)。

さいたま市のページ(2026年4月15日更新)によると、市内の建築協定区域は10か所・合計1,089区画・184,260平方メートルです。いちばん大きい区域は283区画、いちばん小さい区域は5区画です。

協定に判を押していない人が買っても、縛られるのか?

縛られます。75条は、認可の公告があった建築協定は「その公告のあつた日以後において当該建築協定区域内の土地の所有者等となつた者」にも効力があると定めています。協定は契約の一種ですが、ふつうの契約と違い、土地を買った人へ引き継がれます。

ここで、同じ75条のかっこ書きが効いてきます。効力が及ぶ人から、「合意をしなかつた者の有する土地の所有権を承継した者」を除いています。協定は全員の合意で結ぶと書きましたが、70条3項ただし書きにより、借地権の目的になっている土地については所有者の合意がなくても成り立ちます。さらに区域の中に、もともと合意していない人の土地が残ることもあります。そうした土地を引き継いだ人には、協定は効きません。

ただし、合意しなかった人もあとから加われます(75条の2第1項)。「区域の中にある土地」と「協定が効いている土地」は、必ずしも一致しないということです。どちらに当たるかは、地番の一覧だけでは分かりません。

売買では、この点を宅建業者が説明する項目に入っています。宅地建物取引業法施行令3条1項2号は、重要事項説明の対象として建築基準法75条・75条の2第5項・76条の3第5項を挙げています。冒頭の仮の話の「建築協定」の欄は、ここから来ています。

入居者は、建築協定と関係ないのか?

関係することがあります。77条は「建築協定の目的となつている建築物に関する基準が建築物の借主の権限に係る場合においては、その建築協定については、当該建築物の借主は、土地の所有者等とみなす」と定めています。どの基準が「借主の権限に係る」かは条文に例示がなく、協定ごとに判断されます。

一方で、建物の貸借の重要事項説明で説明する法令上の制限は、宅地建物取引業法施行令3条3項で新住宅市街地開発法・新都市基盤整備法・流通業務市街地の整備に関する法律の3つの規定だけに絞られています。建築協定はここに入っていません。

つまり、条文の上では借主にも効きうるのに、賃貸の契約の場面では説明の項目にない、という並びになっています。入居者が協定の存在を知らないまま住んでいることは十分にありえます。重要事項説明の紙の扱いは大家がもらう重要事項説明書は2種類あるに整理しました。

さいたま市の10区域では、何が決められているのか?

さいたま市の「建築協定の概要」(令和7年12月更新)から、大家に関係しそうなものを拾います。

  • 民泊を除くと書いた用途の基準がある区域(大宮けやき台・北区盆栽町・浦和市常盤5丁目・三室大古里など)。空室を民泊に回す前には空室を民泊に回す前に見る4つのこととあわせて、協定の用途の欄も見る必要があります
  • 用途を一戸建ての専用住宅に限る区域が多く、アパートは建てられません
  • 共同住宅を認めていても「ワンルーム形態は除く」、5戸以上の共同住宅は駐輪場を設けるとした区域(中央区本町東5丁目737番地)。ワンルームの規制は川口市は条例、さいたま市は指導基準も参照してください
  • 敷地の分割の禁止・地盤面の高さの変更の禁止(複数の区域)
  • 外壁の仕上げはレンガで区域全体を統一、原色・高彩度色は原則使わない、外壁と屋根に屋外広告物を置かない(自己名・法人名の掲出を除く。武笠ガーデン三室)

手続きも区域ごとに違います。「建築確認申請の前に運営委員会へ届け出て承諾を受ける」区域、「確認申請後10日以内(確認が要らない工事は着工10日前)に届け出る」区域、「確認申請が要らない工事でも着工前に承認を得る」区域があります。市は、区域内で建築等をするときは事前に建築協定運営委員会へ連絡するよう案内しています。外壁の色の届出はさいたま市で届出が要るのは高さ12メートル超からで書きましたが、届出が要らない大きさでも、協定の側で色や仕上げが決まっていることがあります。

建築協定の変更と廃止の違い。変更(74条)は区域・基準・有効期間を変えるもので全員の合意が要り、廃止(76条)は過半数の合意でよい。どちらも特定行政庁の認可を受ける。

協定には終わりがある。延ばすのと、やめるのは別の手続き

協定書には有効期間を書くので、期限が来れば終わります。さいたま市のページには、コンフォートヒルズ本郷町(令和6年6月6日)・二ツ宮団地(令和6年12月8日)・SPLESE大宮(令和7年12月25日)の3つが有効期間の満了で終わったと書かれています。

有効期間を延ばすのは「変更」で、74条の手続きになります。74条2項が70条から73条を準用しているため、変更の合意は70条3項の全員の合意が基準になります。これに対して、協定をやめる「廃止」は76条1項で過半数の合意で足ります。続けるほうが、やめるより難しいつくりです。

分譲の前に、土地を持つ事業者が1人で定める「一人協定」もあります(76条の3)。認可の日から3年以内に区域内の所有者等が2人以上になった時から、ふつうの協定と同じ効力を持ちます(同条5項)。さいたま市はこの届出の様式(様式第18号)を用意しています。

都合の悪いことも書いておきます

  • 市の一覧の地番は「◯◯他」となっていて、自分の土地が区域に入っているかは一覧だけでは分かりません。市は地図情報で位置を公開し、詳細は建築行政課に問い合わせるよう案内しています。
  • 協定違反があったときの措置は、70条1項で協定書ごとに定めることになっています。何が起きるかは、その協定書を読まないと分かりません。
  • 77条の「借主の権限に係る」基準に何が当たるかは、条文に書かれていません。入居者にどう伝えるかは、協定書を読んだうえで、宅建業者や弁護士に確かめてください。
  • 買ったあとに入居者付きで売る場面も出てきます。その考え方は空室にしてから売るか、入居者付きで売るかにあります。

今日できること

  1. 手元の売買の重要事項説明書の「法令上の制限」の欄に建築協定の文字があるか見る。あれば協定書の写しを出してくる
  2. 協定書の建築物に関する基準(とくに用途)・有効期間・違反時の措置の3か所に印を付ける
  3. 工事や用途の変更を考えているなら、運営委員会の連絡先を建築行政課(048-829-1533)に聞く。高さ10メートルを超える建物なら近隣説明の条例も同時に見る

出典

  • 建築基準法69条〜77条、宅地建物取引業法施行令3条1項2号・3項(e-Gov 法令検索・2026年10月12日時点)
  • さいたま市「建築協定制度について」(さいたま市ウェブサイト・2026年4月15日更新)と、同ページの「さいたま市建築協定の概要」(令和7年12月更新)

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