さいたま市で近隣説明が要るのは高さ10メートルから|3階の一戸建ては外れ、3階のアパートは入ります

築45年の2階建てアパートを壊して、3階建てに建て替えたい。設計事務所に相談したら「先に近隣説明の手続きがありますので、確認申請はそのあとです」と言われた。大家さんにしてみれば、まだ図面も固まっていない段階で近所を回るのか、という話になります。

結論からお伝えすると、建築基準法に「近隣説明」という条文はありません。説明を義務づけているのは市の条例です。さいたま市の場合は「さいたま市中高層建築物の建築及び大規模開発行為等に係る紛争の防止及び調整に関する条例」(紛争防止条例)で、対象になるかどうかは用途地域ごとの高さで決まります。そして除外されるのは一戸建て住宅だけで、同じ3階でもアパートは外れません。

さいたま市の紛争防止条例で対象になる建物の高さを用途地域別に示した図

どこから対象になるのか(用途地域で3段に分かれます)

さいたま市が公表している紛争防止条例の概要によると、対象となる中高層建築物はこう分かれています。

  • 第1種・第2種低層住居専用地域 → 軒の高さが7メートルを超える建築物、または地階を除く階数が3以上の建築物
  • 第1種・第2種中高層住居専用地域、第1種・第2種住居地域、準住居地域、近隣商業地域(容積率200%の地域に限る)、準工業地域(容積率200%の地域に限る)、用途地域の指定のない地域 → 高さが10メートルを超える建築物
  • 近隣商業地域(容積率200%の地域を除く)、商業地域、準工業地域(同)、工業地域、工業専用地域 → 高さが15メートルを超える建築物、または高さ10メートル超で、上の2つの地域に冬至日の真太陽時で午前9時から午後3時までの間に日影を生じさせるもの

このほか、対象事業区域の面積が3,000平方メートル以上の建築や開発行為が「大規模開発行為等」として対象になります。

「うちは一戸建てだから関係ない」は、どこまで正しいですか?

条例の概要には、除外がこう書かれています。

中高層建築物で地階を除く階数が3以下の一戸建て住宅又は大規模開発行為等で自己の居住の用に供する建築物の建築を目的とするものは除く。

除かれるのは「一戸建て住宅」です。低層住居専用地域では「階数3以上」が対象ですから、3階建ての一戸建ては除外に入り、同じ3階建てでもアパートや長屋は除外に入りません。ここが大家にとっての分かれ目になります。

都合の悪いことも書いておきます。高さは設計で動きます。10メートルを1メートル超えるかどうかで手続きの有無が変わるため、設計の初期に「うちの用途地域の線は何メートルか」を先に確かめておくほうが、あとの手戻りが少なくなります。

説明する相手は、隣の家だけではありません

条例は「近隣住民」と「周辺住民」を分けています。範囲はこうです。

近隣住民

  • 敷地境界線から15メートル以内、かつ建物の外壁等から50メートル以内の、土地所有者・建物所有者・建物占有者
  • 外壁等から建物の高さの2倍以内、かつ冬至日の午前9時から午後3時に日影を生じる範囲(商業地域と工業専用地域を除く)の、同じ人たち
  • 大規模開発行為等では、対象事業区域の境界線から15メートル以内

周辺住民

  • 敷地境界線から15メートル以内
  • 冬至日の同じ時間帯に日影を生じる範囲
  • 外壁等から建物の高さの2倍以内
  • 地上デジタル放送の電波に著しい受信障害が生じると予測される人、または現に生じている人

ここで押さえておきたいのは、「建物占有者」が入っていることです。隣がアパートなら、その大家だけでなく入居している方々も相手になります。「隣は賃貸だから所有者に話せばいい」ではありません。

そして日影の高さの取り方も決まっています。平均地盤面からの高さで、第1種・第2種低層住居専用地域では1.5メートル、その他の地域では4メートルの水平面に生じる日影です。

さいたま市の紛争防止条例の手続きを確認申請より前の6段階で示した図

手続きは6段階で、確認申請より前に始まります

さいたま市の概要によると、順番はこうなっています。

  1. 概要届を市長に提出する
  2. 計画の概要を示した標識を設置し、設置後に標識設置届を提出する
  3. 事業計画書を市長に提出する。日照、観望、隣接道路の交通の安全、駐車場・駐輪場の設置、工事中の騒音・振動などへの方針まで書く。近隣住民等に説明するより前に提出します
  4. 近隣住民に説明する。周辺住民から求められた場合も同じ説明をする
  5. 説明が終わったら説明報告書を提出する。市はその一部を閲覧に供する
  6. 意見書が出たら回答し、意見対応報告書を提出する

条例は、これらの手続きを建築確認申請または開発行為の手続きをしようとする前に行うよう義務づけています。工程表を引くときは、確認申請の前にこの塊を置いてください。さいたま市では、概要届・標識設置届・事業計画書について電子申請も使えます。

なお、これは工事が始まってから入居者や近隣に出す「工事のお知らせ」とは別のものです。着工後の掲示については 工事のお知らせは何日前に出すか と アパートの掲示板に法律上の設置義務はありません をご覧ください。

逆に、隣に建つ側になったときに使えるもの

大家は、建てる側にも、隣に建てられる側にもなります。条例は後者にも道具を用意しています。

1つは、さいたま市が公表している「標識設置届出状況・説明報告書閲覧期間確認表」です。どの計画の標識設置届が出ているか、説明報告書の閲覧期間がいつまでかを確認できます。

もう1つが意見書です。概要にはこう書かれています。

近隣住民等は標識を設置した日から説明報告書の閲覧期間が終了する日までに近隣説明等報告書又は計画の内容に意見があれば事業者に対して意見書を提出することができます。事業者は、当該意見書を提出したものに対して回答しなければなりません。

締切は「標識が立った日」から数えます。説明会が終わってから考え始めると、閲覧期間の終わりが先に来ることがあります。自分のアパートの日当たりや、駐車場の出入口の位置が変わりそうな計画なら、標識を見つけた日に閲覧期間を確認してください。

ただし、市も「あくまでも、事業者と住民でお話し合いを行なっていただき、紛争に発展しないように努めてください」と書いています。意見書は話し合いの代わりではなく、言えなかったことを残すための道具という位置づけです。

これは市ごとに違う話です

ここまではさいたま市の条例の話です。同じ埼玉県内でも、市が違えば対象の高さも範囲も手続きも違います。川口市、越谷市、川越市にもそれぞれ条例があり、中身は同じではありません。物件のある市の建築指導の窓口で確認してください。

さいたま市の条例の窓口は建設局建築行政部建築総務課(電話048-829-1538)です。本記事は同市が2026年4月1日に更新した「紛争防止条例の概要について」および条例の案内ページによります。条例や運用は改正されることがありますので、実際の計画では必ず最新の内容を市にご確認ください。

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今日できることを1つだけ選ぶなら、自分の物件の用途地域を調べて、上の3段のどこに入るかをメモしておいてください。建て替えを考え始めたときに、最初に効いてくるのがその1行です。

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