さいたま市で令和6年に着工した住宅の半分は貸家でした|大家が統計書12-9で見る区ごとの貸家の供給

持っているアパートの3軒先に仮囲いが立ち、「建築計画のお知らせ」の看板が出る。用途の欄には「共同住宅」、戸数の欄には「12戸」。半年後に募集が始まれば、同じ駅を使う部屋が12室増えます。そんな場面で、大家さんが確かめたくなるのは「この辺りで、いま年に何戸の貸家が建っているのか」です。

結論からお伝えすると、さいたま市で令和6年(2024年)に着工した新しい住宅11,292戸のうち、貸家は5,625戸で、ほぼ半分(49.8%)でした。全国の貸家は3年続けて減っていますが、さいたま市は令和4年の4,173戸から2年で約1,450戸増えています。区で見ると差はさらに大きく、西区は新しい住宅の3分の2が貸家でした。

数字はすべて、さいたま市統計書(令和7年版)の第12章「12-9 利用関係,資金,建て方別新設着工住宅」の原表から取っています(資料は国土交通省「建築着工統計調査」)。

さいたま市の令和6年の貸家の着工を区別にまとめた図。新設住宅の49.8%が貸家、全国とは逆に増加、西区は3分の2が貸家、浦和区は民営借家に対する比率が最も低い、1戸あたりの広さは区で違う

まず、この表の「貸家」とは何を数えたものか

建築着工統計は、建築主が都道府県知事に出す建築工事の届出を集計したものです。根拠は建築基準法15条1項で、床面積の合計が10平方メートル以内の建築は届出が要らないため、統計にも入りません。

住宅は「誰が何のために建てるか」で4つに分けられています。国土交通省の用語の定義は次のとおりです。

  • 持家:建築主が自分で居住する目的で建築するもの
  • 貸家:建築主が賃貸する目的で建築するもの
  • 給与住宅:会社、官公署、学校等がその社員、職員、教員等を居住させる目的で建築するもの
  • 分譲住宅:建て売り又は分譲の目的で建築するもの

大家さんが読むときに押さえておきたい点が2つあります。

  1. 数えているのは「棟」ではなく「戸」です。定義では「戸」は独立して居住できるように設備された区画のことで、12戸のアパートは1棟でも12戸と数えます
  2. 貸家には、個人が建てるアパートも、法人が建てる賃貸マンションも入ります。社宅は給与住宅の側に入るので、貸家には含まれません

(出典:国土交通省「建築動態統計調査【建築着工統計調査】用語の定義」)

さいたま市の貸家は、年に何戸建っているのか

統計書12-9の市全体の行を、令和2年から並べます。

年 新設住宅の総数 うち貸家 貸家の割合
令和2年 11,637戸 4,385戸 37.7%
令和3年 11,867戸 4,408戸 37.1%
令和4年 11,153戸 4,173戸 37.4%
令和5年 12,453戸 5,383戸 43.2%
令和6年 11,292戸 5,625戸 49.8%

令和2年から令和4年までは、新しい住宅の4割弱が貸家という状態で動いていませんでした。変わったのは令和5年からです。総数は11,000〜12,000戸台でほぼ横ばいなのに、貸家だけが増え、割合が5割近くまで上がりました。

その分、減っているのは持家と分譲住宅です。令和4年から令和6年にかけて、持家は2,287戸から2,027戸へ、分譲住宅は4,668戸から3,621戸へ減りました。新しく建つ家の数が増えたのではなく、建つ家の中身が「売る家・住む家」から「貸す家」へ寄った、という読み方になります。

全国の動きとは逆です

国土交通省の令和7年計の報告では、全国の貸家は324,991戸で前年比5.0%減、3年連続の減少です(令和6年は342,092戸)。全国が減っていた令和5年・令和6年に、さいたま市は前年より増えていました(令和5年は前年比で約29%増、令和6年は約4.5%増)。

「全国で貸家の着工は減っているから、新築との競合は落ち着く」という見方は、さいたま市には当てはまりません。県の月次の動きは建築着工統計(令和8年7月分)埼玉県の貸家は2,776戸・前年同月比77.5%増で取り上げましたが、そこでは市区町村別の数字までは読めませんでした。統計書の12-9は、その空白を埋める表です。

区で見ると、どこに貸家が集中しているのか

12-9には令和6年の区別の行があります。貸家の戸数に加えて、2つの比率を出しました。1つは新しい住宅に占める貸家の割合。もう1つは、同じ統計書の12-5(令和5年住宅・土地統計調査)にある民営借家の数に対して、1年で何戸の貸家が着工したかです。

区 貸家の着工 新設に占める割合 民営借家に対する割合 1戸あたり床面積
西区 648戸 66.2% 6.8% 44.6平方メートル
見沼区 788戸 51.7% 4.1% 41.8平方メートル
緑区 484戸 37.2% 3.7% 58.9平方メートル
北区 745戸 58.1% 3.5% 47.5平方メートル
大宮区 619戸 52.5% 3.3% 52.7平方メートル
中央区 529戸 59.5% 3.2% 44.8平方メートル
南区 700戸 46.7% 2.4% 45.3平方メートル
岩槻区 225戸 34.8% 2.4% 39.8平方メートル
桜区 410戸 54.0% 2.4% 35.7平方メートル
浦和区 477戸 38.5% 2.0% 58.2平方メートル
市全体 5,625戸 49.8% 3.2% 47.1平方メートル

(1戸あたり床面積は、貸家の着工床面積の合計を戸数で割ったもの。民営借家に対する割合は、12-9の令和6年の貸家着工戸数を、12-5の令和5年10月1日現在の民営借家の数で割ったもの)

読み取れることを3つに絞ります。

  1. 西区は、今ある民営借家(9,580戸)に対して1年で6.8%ぶんの貸家が着工しています。市全体の3.2%の2倍を超え、10区で最も高い数字です。新しい住宅979戸のうち648戸が貸家で、持家は163戸でした
  2. 浦和区は戸数こそ477戸ありますが、民営借家が24,420戸と多いため、比率は2.0%で10区で最も低くなります。戸数の多い少ないだけで「建っている区」「建っていない区」を判断すると、読み違えます
  3. 新しく建つ貸家の広さは、区によってまったく違います。桜区は1戸あたり35.7平方メートルで単身向けの広さ、緑区(58.9平方メートル)と浦和区(58.2平方メートル)は2人以上で住む広さです。同じ「貸家が増えた」でも、競合する相手の間取りが違います

今ある部屋の広さを区ごとに比べたいときは、さいたま市の民営借家は1戸43.26平方メートル、区で最大16平方メートル違うを合わせて見てください。新しく建つ部屋と今ある部屋の広さの差が、区ごとの競合の形になります。

統計書12-9で読めること(区ごとの貸家の着工戸数、床面積、市の推移、持家・分譲との割合)と読めないこと(区の前年比較、間取りと家賃、完成時期と空室、令和7年の市の数字)の比較図

この表から分からないこと

都合の悪いところも書いておきます。12-9だけで判断しないほうがよい点が4つあります。

  • 区別の数字は令和6年の1年分しかありません。区ごとに前年より増えたのか減ったのかは、この表からは言えません
  • 民営借家に対する割合は、性質の違う2つの数字を割った目安です。12-5は令和5年10月時点の抽出調査で、人が住んでいる住宅だけを数えています。12-9は届出を全部数えた暦年の数字です。空室は12-5に入っていないので、実際の比率はこれより低くなります
  • 着工は完成でも入居でもありません。着工から募集開始までは数か月以上かかり、計画の変更で戸数が変わることもあります
  • 令和7年のさいたま市の数字は、統計書(令和7年版)にはまだ載っていません。全国では令和7年に貸家が減っていますが、さいたま市が同じように減ったかどうかは、次の版を待つ必要があります

また、表には「公的資金住宅」の列もあり、令和5年・令和6年は800戸前後と令和2年(309戸)より増えています。ただ12-9は資金と利用関係を掛け合わせた表ではないため、増えた分が貸家なのかどうかは読めません。ここは結びつけずにおきます。

大家さんは、この数字をどう使えばよいのでしょうか?

着工の数字は、今日の空室の理由にはなりません。効いてくるのは半年から1年先です。だからこそ、慌てて家賃を下げる材料ではなく、先回りして段取りを決める材料として使います。

  1. 自分の物件がある区の行を見る。西区・見沼区のように民営借家に対する比率が高い区では、同じ駅で新築と並ぶ場面が増えると考えておきます
  2. 1戸あたり床面積で、競合の間取りを見当づける。自分の部屋より広い新築が多い区なのか、同じくらいの単身向けが多い区なのかで、打ち手が変わります
  3. 新築と設備の新しさで勝負しない。募集条件で何を動かすかは空室が3か月埋まらない。募集条件のどこを動かすかにまとめています
  4. 比べられる相手は新築だけではない。市営住宅・県営住宅・URがどの区に多いかは、さいたま市の公営住宅は県営が市営の3.9倍、URは桜区・南区・北区に集中で数えています

空室が長引いたときに、原因が周りの供給なのか、物件や管理の側なのかを切り分けたい場合は、空室が続くのは管理会社のせいか、物件のせいかの順番で確かめてください。人口の増え方も区で違うので、さいたま市は10区すべてで亡くなる人が生まれる人より多い。それでも9区で人口が増えた理由と並べて読むと、供給と需要の両方がそろいます。

まずは統計書12-9を開き、自分の物件がある区の行で、貸家の戸数と床面積の2つの数字を書き出してみてください。次の退去がいつ来るかの一覧と並べると、どの部屋から手を付けるかが見えてきます。

(出典:さいたま市「さいたま市統計書(令和7年版)」第12章 12-5・12-9/国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年計)」令和8年1月30日公表/国土交通省「建築動態統計調査【建築着工統計調査】用語の定義」)

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