大家の契約は本当に「自動更新」なのか|法定更新すると期間の定めが消えます

管理会社から「更新のご案内」が入居者に送られたのが5月。期間満了は7月末。返事が来ないまま6月が過ぎ、7月が過ぎ、8月に入っても入居者はそのまま住んでいて、家賃は毎月同じ日に振り込まれている。更新の書類には、まだ誰も署名していません。この状態の契約は、いま何年契約なのか。

結論からお伝えすると、この契約はもう「2年契約」ではありません。契約書に自動更新の条項があっても、当事者が合意しないまま満了日を過ぎて使用が続けば、働くのは借地借家法26条の法定更新です。そして同条1項のただし書には、更新後の「その期間は、定めがないものとする」と書かれています。期間が2年延びるのではなく、期間そのものが消えます。

更新の3つのしくみを並べた図。合意更新、自動更新条項による更新、法定更新の違いと、通知後の異議、期間の下限と上限を示している。

更新には3つの種類があります

大家さんが「更新」と呼んでいるものは、実際には3つに分かれます。混ざったまま考えると、あとで終わらせ方が変わってきます。

  • 合意更新|貸主と借主が新しい期間を決めて合意する。更新契約書に双方が署名する形
  • 自動更新条項による更新|「異議がなければ同一条件で2年間更新する」といった契約書の特約による更新。法律の制度ではなく当事者の合意なので、合意更新の一種です
  • 法定更新|借地借家法26条による更新。当事者が何もしなくても、法律の側で更新したことにする制度

自動更新条項が入っていれば、多くの場合はその条項どおりに期間が延びます。問題は、条項の条件(たとえば「双方が異議を述べないとき」)に当てはまらなかったときや、そもそも条項が入っていない契約書のときです。そこで法定更新が出てきます。

法定更新すると、契約はどう変わるのか

借地借家法26条1項は、次のように定めています。

建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかつたときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

読みどころは2か所です。ひとつは「従前の契約と同一の条件」。賃料も、使い方の約束も、そのまま引き継がれます。もうひとつが、ただし書の「その期間は、定めがないものとする」。ここで契約は期間の定めのない賃貸借に変わります。

更新料についても同じ場面で問題になります。法定更新は当事者の合意ではないので、契約書に「法定更新の場合も更新料を支払う」と書いてあるかどうかで扱いが変わります。更新料そのものの考え方は大家は更新料を取るべきか|国の標準契約書に「更新料」の欄はないにまとめています。

期間の定めが消えたあとの終わらせ方を貸主と借主で比べた図。貸主は借地借家法27条1項で6か月と正当事由、借主は民法617条1項2号で3か月。

期間の定めが消えると、終わらせ方が非対称になります

ここが実務でいちばん効いてきます。期間の定めのない建物賃貸借を終わらせる手順は、貸主と借主で条文も日数も違います。

  • 貸主から|借地借家法27条1項。解約の申入れの日から6か月を経過することで終了。さらに28条により、その解約申入れには正当の事由が必要です
  • 借主から|民法617条1項2号。建物の賃貸借は、解約の申入れの日から3か月で終了。正当事由は要りません

つまり法定更新は、貸主にとっては「いつまでも終わらない状態」に近づき、借主にとっては「3か月で出られる状態」になります。2年の期間があったときより、貸主側が不利になっていると考えたほうが実態に合います。正当事由の中身は賃貸の更新を大家が拒否できるのか|正当事由は立退料だけでは足りないで詳しく書いています。

更新しない通知を出せば、それで終わるのでしょうか

終わりません。26条2項は、通知を出したあとにもう一段の条件を置いています。

2 前項の通知をした場合であつても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかつたときも、同項と同様とする。

期間満了の1年前から6か月前までに更新拒絶の通知を出した。それでも入居者が住み続けていて、貸主が満了後に何も言わずにいると、結局は法定更新になります。「通知は出したから大丈夫」と思って夏を越し、家賃をそのまま受け取り続けていた、というのがよくある形です。

加えて、その通知自体が28条の正当事由を満たしていなければ効力がありません。通知を出す前に、正当事由の材料が手元にあるかを先に確かめるほうが順番として正しいことになります。

期間の決め方で、最初から決まっていること

契約の期間そのものにも、借地借家法29条が枠をはめています。

  • 1年未満にはできません|29条1項「期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす」。普通借家で「半年だけ貸す」という契約は作れず、書いても期間の定めのない契約として扱われます
  • 上限はありません|29条2項が、民法604条(賃貸借の存続期間は50年を超えることができない)を建物の賃貸借に適用しないと定めています。20年でも30年でも契約できます

「2年」が広く使われているのは法律の要求ではなく、慣行です。下限だけが法律で決まっていて、上限は決まっていないと覚えておくと、条件を組み替えるときに迷いません。

更新のない契約にしたいなら、定期借家という別の枠があります

期間が来たら確実に終わる契約にしたい場合は、借地借家法38条の定期建物賃貸借を使うことになります。ただし手続きが細かく、1つ落とすと普通借家になってしまいます。

  1. 書面で契約する(38条1項)。契約の内容を記録した電磁的記録でも書面とみなされます(同2項)
  2. 契約とは別に、事前に説明の書面を交付して説明する(同3項)。「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを説明します
  3. この説明をしなかったときは、更新がないとする定めが無効になります(同5項)。契約書だけ定期借家の形にしても、説明を落とせば普通借家です
  4. 期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに終了の通知をしないと、終了を借主に対抗できません(同6項)
  5. 居住用で床面積200平方メートル未満の場合、転勤・療養・親族の介護などのやむを得ない事情があれば、借主から1か月で解約できます(同7項)

手間は増えますが、出口が決まっている物件(数年後に建て替える、売却を予定している、自宅に戻る予定がある)では検討する価値があります。

借主に不利な特約は、書いても無効になります

最後に、契約書の書き方でひっくり返せる範囲について。借地借家法30条は「この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする」と定めています。

ですから「法定更新はしないものとする」「更新拒絶に正当事由を要しない」「解約申入れから1か月で明け渡す」といった特約を入れても、借主に不利な部分は効きません。契約書を厚くしても、この線から外側には出られないということです。契約書のどこを読むかは大家が賃貸借契約書で必ず読む3か所|特約は書けば通るわけではないにまとめています。

いま手元の契約書で確かめる4点

  1. 自動更新条項があるか。あるなら、どういう条件で働く条項か(「異議がなければ」なのか「双方が申し出なければ」なのか)
  2. 更新料の定めが、法定更新の場合まで書いてあるか
  3. いま期間の定めがある状態か、法定更新で消えている状態か。過去に更新契約書を交わしていない期間があれば、そこで消えている可能性があります
  4. 定期借家のつもりの物件は、事前説明書面の控えが残っているか

3番目と4番目は、管理を委託している場合でも大家さん側に控えが残っていないことがあります。契約関係の書類の預け先を整理しておくと、いざ終わらせたいときに動けます。管理の引き継ぎで抜けやすい書類は管理委託契約の解約予告は何か月前?契約書のどこを見るかでも触れました。

なお、更新拒絶や明渡しの通知は、出した時点で相手方に効果が生じます。正当事由の有無や立退料の水準は個別の事情で判断が分かれるため、一般的には、動く前に弁護士へ相談することをおすすめします。借地借家法の全体像ははじめての大家さんが押さえる借地借家法の基本|更新・解約・家賃の3点から読み直せます。

投稿者プロフィール

Follow me!

この記事の内容について、個別に相談したい方へ

さいたま市周辺で賃貸管理をお探しの方、いまの管理に迷いがある方のご相談をお受けしています。 まだ何も決めていない段階でもかまいません。

相談する(お問い合わせフォーム)