アパートの消防設備点検は業者に頼むしかないのか|大家の報告は3年に1回です
結論からお伝えすると、消防用設備等の点検と報告の義務を負っているのは建物の所有者・管理者・占有者で、大家はここに入ります。そして共同住宅(アパート・マンション)の報告は3年に1回です。さらに、資格を持った人に点検させなければならないのは、延べ面積1,000平方メートル以上で消防長または消防署長が指定した建物だけで、それ以外は条文上「自ら点検し」と書かれています。
消防署の封筒が届く。中身は「消防用設備等(特殊消防用設備等)点検結果報告書」の様式と案内文。前回の報告日を見ると3年前の日付になっている。物件は木造2階建て8戸、延べ床170平方メートルほど。消防用設備と呼べるものは、各階の廊下の端に置かれた粉末消火器が4本だけ。この規模で何を点検し、どこまで自分でやれるのか——最初に確かめるのは「うちの建物に何が付いているか」です。設備が付いていない建物には、点検する対象そのものがありません。

消防法の「関係者」に、大家は入っている
消防法第2条は用語の定義を並べており、そこに「関係者とは、防火対象物又は消防対象物の所有者、管理者又は占有者をいう」とあります。所有者である大家、管理を受託している管理会社、そして占有者である入居者。3者すべてが「関係者」です。
そのうえで第17条第1項が、政令で定める防火対象物の関係者に「消防用設備等」を政令で定める技術上の基準に従って設置し、及び維持しなければならないと定めています。設置して終わりではなく、維持まで義務です。
共同住宅は、消防法施行令の別表第一で(五)項ロ「寄宿舎、下宿又は共同住宅」に分類されます。旅館・ホテル((五)項イ)や飲食店、物品販売店舗などと違って、この後の基準がすべて(五)項ロの行で決まります。用途の分類を1つ間違えると、必要な設備も報告の頻度も全部変わります。
何が付く建物なのかは、面積と階で決まる
消防用設備等の設置基準は政令に細かく書かれています。アパート・マンションで関係するのは主に次の2つです。
消火器具(消防法施行令第10条)
第1項第2号イが(五)項を挙げており、延べ面積が150平方メートル以上のものが対象です。加えて第5号に、それ以外の建物でも「地階、無窓階又は三階以上の階で、床面積が五十平方メートル以上のもの」という規定があります。
自動火災報知設備(消防法施行令第21条)
第1項第4号が(五)項ロを挙げており、延べ面積が500平方メートル以上のものが対象です。さらに第11号に「別表第一に掲げる建築物の地階、無窓階又は三階以上の階で、床面積が三百平方メートル以上のもの」があります。
ここから読めることが2つあります。ひとつは、延べ面積が150平方メートルに届かない小さなアパートには、消火器具の設置義務が条文上かからないということ。もうひとつは、3階以上の階を持つかどうかで基準が変わるということです。2階建てと3階建てでは、同じ戸数でも見る条文が増えます。市町村の条例で上乗せがある場合もありますので、自分の建物が何の対象なのかは、必ず所轄の消防署で確認してください。
点検は業者に頼むしかないのか?
ここが今日いちばん伝えたいところです。消防法第17条の3の3の条文を、そのまま読みます。
「第十七条第一項の防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等(中略)について、総務省令で定めるところにより、定期に、当該防火対象物のうち政令で定めるものにあつては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあつては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。」
「政令で定めるものにあっては資格者に点検させ、その他のものにあっては自ら点検し」——2つの道が書き分けられています。では資格者点検が要るのはどこか。消防法施行令第36条第2項が並べており、共同住宅((五)項ロ)が出てくるのは第2号です。
「別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項(中略)に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもののうち、消防長又は消防署長が火災予防上必要があると認めて指定するもの」
条件が2つ重なっています。①延べ面積1,000平方メートル以上、かつ②消防長または消防署長が指定したもの。面積だけでは足りず、指定がなければこの号には当たりません。旅館・ホテルや飲食店(同項第1号)は1,000平方メートル以上なら指定を待たずに資格者点検ですから、共同住宅はここが違います。
都合の悪いことも書いておきます
「自ら点検してよい」は、「好きな方法でよい」ではありません。消防法施行規則第31条の6は、点検を「種類及び点検内容に応じて、一年以内で消防庁長官が定める期間ごとに行う」とし(第1項)、「点検の方法及び点検の結果についての報告書の様式は、消防庁長官が定める」としています(第5項)。方法と様式は国が決めているので、そこに従う必要があります。
さらに、自動火災報知設備や誘導灯のように配線や感知器が絡む設備は、点検に道具と知識が必要です。消火器だけの小さなアパートと、自動火災報知設備が入っている建物とでは、現実的な判断が変わります。「法律上は自分でもできる」ことと「自分でやったほうがいい」ことは別の話です。

報告は3年に1回。台帳に残すところまでが義務
消防法施行規則第31条の6第3項は、点検した結果を「維持台帳」に記録するとともに、区分に応じた期間ごとに消防長または消防署長へ報告しなければならないと定めています。区分は2つです。
- 第1号((一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イなど=店舗・飲食店・旅館・病院・福祉施設などの特定防火対象物)…1年に1回
- 第2号((五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項までなど=共同住宅・学校・事務所・工場など)…3年に1回
同じ条文で「維持台帳」の中身も定義されています。設置届に係る書類の写し、検査済証、報告書の写し、消防用設備等の工事や整備の経過一覧表など、維持管理に必要な書類を編冊したものです。つまり報告書を出したら控えを台帳に綴じ、次の3年後にそれを見て動く形が想定されています。
物件を買った直後の方は、ここが引き継がれていないことが多いです。「前回いつ、誰が点検して、どこへ報告したのか」を売主か前の管理会社に一度で聞いておくと、3年後に困りません。
報告を出さなかったらどうなるのか
消防法第44条は「三十万円以下の罰金又は拘留」に処する行為を列挙しており、その第11号に「第十七条の三の三の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者」が入っています。報告しないことと、事実と違う報告をすることが同じ号に並んでいます。
金額としては大きくありませんが、注意しておきたいのは火災が起きたあとに「維持義務を果たしていたか」を問われる場面です。第17条第1項は設置と維持を義務にしていますので、点検記録が残っていないと、維持していた事実を自分で示せません。
住宅用火災警報器は、これとは別の話
混ざりやすいのでもう一つ。各室の天井に付いている住宅用火災警報器は、消防法第9条の2という別の条文です。「住宅の関係者は(中略)住宅用防災機器を設置し、及び維持しなければならない」とされ、設置と維持の基準その他必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例で定めると書かれています。
つまり細かい基準は市町村ごとに条例で決まっているということです。寝室と階段が基本ですが、台所を含めるかどうかなどは自治体で違います。お持ちの物件がある市町村の消防のページか所轄消防署で確認してください。そして「関係者」には所有者・管理者・占有者すべてが含まれますので、電池切れや本体の交換を誰がやるのかは、契約書か入居時の案内で決めておくほうが揉めません。
大家がやることは3つ
- 自分の建物に何が付いているかを書き出す。消火器の本数と設置場所、自動火災報知設備の有無、誘導灯の有無。延べ面積と階数もあわせて1枚に
- 前回の点検日と報告日を確定させる。維持台帳がなければ、そこから作り始める。所轄消防署に聞けば過去の報告の有無が分かります
- 3年に1回の予定を年間の予定表に入れる。賃貸経営で3年周期の予定はほとんどないので、書いておかないと必ず飛びます
物件を買った直後に集めるべき書類は 収益物件を買った大家が最初に集める7つの書類|固定資産税の精算金は税金ではない にまとめています。年間の手続き全体の地図は 大家になったら必要になる書類と手続きの一覧、点検費用が共用部の費用としてどこに乗るかは アパートの共用部の電気代は10月からどうなるか|大家が9月のうちに見ておく4か所 と 管理手数料に含まれるもの・含まれないもの をあわせて読むと整理できます。記録の残し方は 大家が使う帳簿は何か|白色申告でも記帳と7年保存は義務です に書きました。
消防の書類は、届いたときに面倒な順で言えば上位に入るものです。ただ中身は「何が付いているか」「いつ点検したか」「どこへ出したか」の3つしかありません。1枚の紙にしておけば、3年ごとに同じ紙を更新するだけになります。
個別の建物にどの設備が必要か、資格者点検の指定があるかどうかは、所轄の消防署の判断になります。この記事は条文の枠組みを整理したもので、建物ごとの判定はしていません。必ず所轄消防署にご確認ください。
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