住宅ローンが残っている家を貸してよいのか|転勤で貸す前に出す届出は2つあります
結論からお伝えすると、住宅ローンが残っている家でも、転勤のように戻る前提があれば貸せます。ただし黙って貸すのは別の話です。フラット35の公式Q&Aは、目的外利用が判明した場合について「お借入れの全額を一括で返済いただく場合があります」とはっきり書いています。そして貸す前に出しておく届出が、借入先の窓口と税務署に1つずつあります。
4月半ばに内示、6月着任。家は3年前に買ったばかりで、ローンは32年残っている。売るには早い、空けておくのはもったいない、単身で行くか家族で行くかもまだ決まっていない。この状態で最初に開くべき書類は、不動産会社のチラシではなく金銭消費貸借契約証書です。

住宅ローンは「そこに住む人」に貸したお金です
住宅ローンの金利が投資用のローンより低いのは、返済の原資が家賃ではなく借りた本人の給与だからです。だから契約には、本人または親族が住むことが前提として書かれています。フラット35のQ&A(Q&A番号3149)は次のとおりです。
「フラット35は、お申込ご本人またはそのご親族の方がお住まいになる住宅の取得資金としてご利用いただいております。転勤等のやむを得ないご事情で、一時的に居住できない場合、融資住宅に戻ることを前提に賃貸することは可能です。ただし、金融機関の窓口で住所変更に関する手続を行ってください。なお、第三者に賃貸する目的の物件などの投資用物件の取得資金に利用するなどの目的外利用が判明した場合には、お借入れの全額を一括で返済いただく場合があります」(住宅金融支援機構「フラット35」よくある質問)
読み方が3つあります。①転勤なら貸せる ②「戻ることを前提に」が条件 ③ただし窓口で手続きが要る。「バレるかどうか」の話ではなく、手続きをすれば通る話だ、というのが公表されている内容です。
民間の銀行でも同じですか
制度がフラット35と同じかどうかは、金融機関と商品ごとに違います。ここは一般論でしか書けません。確かめる場所は決まっていて、手元の金銭消費貸借契約証書の「期限の利益の喪失」の条項です。融資対象の住宅に居住しなくなったとき、第三者に賃貸したときに何が起きると書かれているかを読んでから、借入先の窓口に「転勤で、戻る予定で貸したい」と相談してください。相談する前に入居者を決めてしまうと、順番が戻せません。

もうひとつの届出は、税務署に出します
住宅ローン控除は、家に住んでいることが条件です。転勤でどうなるかは、家族が残るかどうかで分かれます。国税庁のタックスアンサーNo.1234「転勤と住宅借入金等特別控除等」によれば、次のとおりです。
- 単身赴任の場合。配偶者や生計を一にする親族が取得から6か月以内に入居し、その後も引き続き居住していて、事情が解消したら所有者も一緒に住むと認められるときは、所有者本人が住んでいるものとして扱われ、控除を受けられます
- 家族と一緒に出る場合。居住の用に供しなくなった日の属する年以降、控除は受けられません
問題はここからです。家族ごと出て賃貸に出すとき、何もしないと、戻ってきても控除は復活しません。国税庁は再適用の要件をこう定めています。
- 勤務先からの転任の命令その他これに準ずるやむを得ない事由があること
- 家屋を居住の用に供しなくなる日までに、一定の手続を行っていること
この「一定の手続」が、「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を、その家屋の所在地の所轄税務署長に提出することです。出す期限は「居住の用に供しなくなる日まで」。引っ越したあとでは間に合いません。年末調整用の証明書を税務署から交付されている場合は、未使用分もあわせて提出します。
戻ってきた年から、すぐ控除は戻りますか
戻りません。国税庁は、再適用は「その家屋を再び居住の用に供した日の属する年(その年において、その家屋を賃貸の用に供していた場合には、その年の翌年)以後」としています。3月に入居者が退去して、4月に自分が戻った年は、その年に賃貸していたことになるので、控除は翌年からです。しかも残存控除期間は延びません。空けていた分は戻ってこない、という設計です。
貸すと決めたあとに、続けて動くもの
- 火災保険。住宅用として入っている契約が、賃貸に出した状態でそのまま有効かを保険会社に確認します。証券の見方は 大家が火災保険の証券で確認する5つの欄 にまとめています
- 契約の形。戻る予定があるなら、期間を区切れるかどうかが分かれ目になります。更新と解約の基本は はじめての大家さんが押さえる借地借家法の基本 をご覧ください
- 確定申告。家賃は不動産所得になります。何が経費になるかは 賃貸経営で経費にできるもの・できないもの、収入と所得の違いは 賃貸経営の「収入」と「所得」は同じではない に書いています
- 管理を誰がやるか。赴任先から自分で対応するのは、想像よりきついです。遠方の物件をどう管理するか を先に読んでおいてください
都合の悪いことも書いておきます
- 「戻る前提」が崩れたときの話は、貸す前には決まりません。赴任が延びる、転勤先で家を買う、家族が戻りたがらない。そのときは借入先に再度相談することになります。最初に伝えた前提と違う状態が続くのがいちばん危ないところです
- 普通借家で貸すと、戻りたい時期に戻れないことがあります。期間を決めて貸す形にできるかは物件と募集条件しだいで、家賃も条件も下がる方向に働きます
- 3年空けて戻ったとき、家は3年ぶんの原状回復が要ります。クロスも設備も、自分たちが使っていない期間の傷みです。戻ったその月に工事の見積りが来ます
- 税務の判断は個別です。ここに書いたのは国税庁が公表している一般的な取扱いで、適用の可否は事情によって変わります。届出書の要否とタイミングは、必ず所轄の税務署か税理士に確認してください
- ローンの取扱いも金融機関ごとに違います。フラット35の記載を、そのまま自分の借入先の答えとして使わないでください
売る選択肢も含めて迷っている方は もう続けられないと思ったときの選択肢|貸す・売る・任せる をご覧ください。
順番だけ間違えなければ、転勤で貸すことは無理な話ではありません。契約証書を読む、借入先に相談する、居住しなくなる日までに税務署へ届け出る。この3つが、引っ越しの荷造りより先です。
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