管理会社が指定する家賃保証会社を大家は変えられるのか|契約の当事者は大家ではありません
送金明細に、見たことのない会社名が1行だけ入っていました。「保証料」でも「代位弁済」でもなく、保証会社の社名。滞納が出たときに督促の連絡が1か月遅れて、そこで初めて名前を覚えた——そういう順番で保証会社を知る大家さんは少なくありません。それなら、この会社を変えたい。そう管理会社に伝えると、返ってくる答えはたいてい「うちで扱っているのはここだけです」です。
結論からお伝えすると、大家さんが単独で保証会社を変えることはできません。保証委託契約の当事者が大家さんではないからです。変えられるのは次の募集からで、既に入居している部屋は原則そのままです。ただし、契約条項の中身については、大家さんが確認しておくべきことが1つあります。

契約の当事者は、大家さんではありません
家賃保証の仕組みは、契約が2本に分かれています。
- 保証委託契約……入居者(賃借人)と保証会社の間の契約。保証料を払うのは入居者
- 賃貸借契約……大家さんと入居者の間の契約。保証会社はここの当事者ではありません
国土交通省も、この関係を「賃貸住宅の賃借人及び家賃債務保証業者との間の保証委託契約」と書いています。大家さんは、保証してもらう側であって、契約を結んでいる側ではない。だから「この会社をやめて別の会社にしてほしい」と言っても、入居者と保証会社の間の契約を大家さんの意思で解約することはできません。
ここが「管理会社が握っているから変えられない」と受け取られやすいところですが、正確には管理会社が握っているのではなく、契約の構造上そうなっているということです。保証会社そのものの役割と守られる範囲は家賃保証会社は入れるべきかにまとめています。
では、どこなら動かせるのか?
動かせるのは次の募集からです。管理委託契約で保証会社が指定されているかどうかを、まず契約書で確認します。
- 管理委託契約書の別表・特約を見る。「保証会社は乙の指定するものとする」と書かれているなら、そこが根拠です。書かれていなければ、慣行でそうなっているだけの可能性があります
- 指定の理由を聞く。審査の通りやすさ、代位弁済の速さ、明渡しまで見てくれるか。理由が説明できる会社なら、変える必要がない場合もあります
- 次の募集分から別の会社を使えるかを、書面で確認する。口頭で「検討します」で終わらせないところです
- 入居中の部屋は触らない。切り替えを求めると入居者に新しい保証料の負担が発生します。契約更新のタイミングでも、入居者の同意なしには動きません
管理委託契約書のどこを読むかは管理委託契約書はどこを読むべきか、担当者が変わったときの確認事項は担当者が合わない・変わったときに確認することをご覧ください。
国の「登録」は、あると安心という意味ではありません
ここは通説と大きくずれるところなので、原文のまま書きます。国土交通省は家賃債務保証業者登録制度のページにこう書いています——これは任意の登録制度であり、登録をしなくても家賃債務保証業を営むことは可能です。
つまり、登録がないことは違法でも無資格でもありません。免許や許可ではなく、告示による任意の登録です(家賃債務保証業者登録規程・平成29年国土交通省告示第898号。告示公布は平成29年10月2日、施行は同年10月25日。最終改正は令和7年7月18日国土交通省告示第543号で、令和7年10月1日施行)。
そして令和7年10月1日から、この上にもう1段が乗りました。認定家賃債務保証業者制度です。住宅確保要配慮者が利用しやすい家賃債務保証業者として、登録業者等から一定の要件を満たす者を国土交通大臣が認定するもので、根拠は住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の第7章(72条から80条)です。
数を並べると、位置関係が分かります。
- 登録家賃債務保証業者……123者(令和8年8月13日時点)
- 認定家賃債務保証業者……12者(令和8年7月31日時点)
認定は登録の約10分の1です。「国の登録があるから安心」と読むのではなく、「登録は名簿、認定はさらに絞った先」と読むのが正しい距離感だと思います。どちらの一覧も国土交通省のサイトで社名・本社所在地・登録番号まで公表されているので、管理会社から会社名を聞いたら、その場で名簿にあるかを見ることができます(出典:国土交通省「登録家賃債務保証業者一覧」「認定家賃債務保証業者一覧」)。
大家さんが確認しておくべき契約条項が2つあります
変えられるかどうかより、こちらのほうが実害に直結します。令和4年12月12日の最高裁判決(最高裁判所 令和3年(受)第987号)で、保証委託契約の2つの条項が消費者契約法10条に該当するとして使用を差し止められました。
- 所定の賃料等の支払の遅滞が生じた場合、家賃債務保証業者が、何らの限定なく賃貸人および賃借人との間の賃貸借契約を無催告で解除できる条項
- 賃貸借契約が終了していない場合において、家賃債務保証業者が、賃貸住宅の明渡しがあったものとみなすことができる条項
国土交通省は登録事業者と加盟団体に対し、同様と認められる条項を使っている場合は速やかに使用をやめるよう周知しています。消費者契約法10条は、法令の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比べて消費者の権利を制限し、または義務を加重する条項であって、信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効とする条文です。
これが大家さんに効くのはなぜか。「保証会社が代わりに解除して明け渡してくれる」という説明を前提に運用していると、その前提が崩れているからです。使えない条項に頼っていた場合、滞納が長引いたときに動くのは結局大家さんです。滞納の初動は家賃を滞納された。最初の3日でやることに手順を書いています。
変えたほうがよい場合と、変えなくてよい場合
変えたい理由が「報告が遅い」なら、会社ではなく報告の経路が原因のことがあります。代位弁済の請求には報告期限があり、そこを管理会社が握っているためです。会社を変えても、期限を過ぎる運用が変わらなければ同じことが起きます。
一方、次の理由なら変えることに意味があります。
- 保証の上限が家賃12か月分で、明渡しまでの期間に足りていない
- 原状回復費や残置物撤去が対象外で、退去のたびに自己負担が出ている
- 更新料の管理を入居者任せにしていて、保証が切れていた部屋がある
- 審査が厳しすぎて、申込が続けて落ちている(大家が入居審査をどこまで厳しくするか)

都合の悪いことも書いておきます
- 会社を変えると、審査基準も変わります。通りやすい会社に変えれば申込は増えますが、滞納の確率も動きます。空室期間と回収リスクのどちらを取るかという話で、無料の乗り換えではありません
- 管理会社に断られること自体は、不当ではありません。保証会社との代理店契約や事務のシステムがそこに組んであるためです。強く言えば通るという種類の交渉ではなく、次の募集分から並行して使えるかを聞くのが現実的です
- 連帯保証人が付いていても、保証会社の代わりにはなりません。役割が違い、極度額を書いていない個人根保証は無効です(連帯保証人の保証が切れる3つの場面)
- 保証会社の名称や登録番号は、入居者の個人情報とは別に大家さんが持っておくべき情報です。引き継ぎで落ちやすい項目でもあります(入居申込書と身分証のコピーはいつまで持てるのか)
- 条項が無効かどうかの判断は個別です。自分の契約書の文言が最高裁の判示に当たるかは、弁護士に確認してください
今日やることを1つだけ選ぶなら
管理会社に、いま使っている保証会社の社名と保証の上限月数を1行で聞いてください。それだけで、名簿にあるか、上限が明渡しまで足りるかが分かります。
埼玉県の事業者に関する登録・認定の窓口は、国土交通省関東地方整備局(048-601-3151)です。名簿は国土交通省のサイトで誰でも見られますので、社名が分かればその日のうちに確認できます。
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