アパートのガス点検は、大家ではなくガス会社の義務です|4年に1回の調査と、入居者が断ると止まる条文

入居者から電話が来ます。「ポストにガスの点検のお知らせが入っていたんですが、大家さんが頼んだんですか? 平日の昼は家にいないので、断ってもいいですか」。大家の側も、そんな点検を頼んだ覚えはありません。

結論からお伝えすると、ガスの消費設備の定期的な調査は、大家ではなくガス会社の義務です。都市ガスはガス事業法159条2項でガス小売事業者が、LPガスは液化石油ガス法27条1項で販売事業者が行います。頻度はどちらも基本は4年に1回以上です。そして、入居者が立ち入りを断れば、都市ガスの調査は条文上そこで止まります。大家の仕事は点検をすることではなく、点検が止まらないようにすることと、「基準に合っていない」という通知を受け取って直すことです。

点検をするのは誰で、何年に1回ですか?

都市ガス LPガス(プロパン)
義務を負う人 ガス小売事業者(ガス事業法159条2項) 液化石油ガス販売事業者(液化石油ガス法27条1項)
調べるもの 消費機器が技術上の基準に合っているか 供給設備の点検と、消費設備の調査
基本の頻度 ガスの使用の申込みを受けたとき、4年に1回以上(ガス事業法施行規則200条) 供給開始時、4年に1回以上(液化石油ガス法施行規則37条。地下室や地中に埋めた亜鉛めっきの配管などは1年に1回以上)
書面での注意喚起 2年に1回以上、書面を配る(同規則197条) 災害防止の周知も保安業務に含まれる(同法27条1項3号)

どちらも、大家が依頼して行うものではありません。ポストのお知らせは、ガス会社が法律の義務として出しているものです。

ガス点検の決まり。調べるのはガス会社、頻度は4年に1回、入居者が断ると止まる、通知は持ち主か住む人へ

都市ガスの4年ごとの調査は、全部の機器が対象ではありません

ガス事業法施行規則200条の表を読むと、4年に1回以上の調査の対象はガス湯沸器とガスふろがま、その排気筒と排気筒につながる排気扇です。そのうえで、次のものは対象から外されています。

  • 不完全燃焼する状態になったとき、自動でガスを止めて燃焼を停止する機能があると認められるもの
  • 密閉燃焼式で、特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律6条の表示が付いているものなど

こんろなどの燃焼器は、表の「ハ」でガスの使用の申込みを受けたときだけの調査です。つまり、「4年に1回、ガス会社がすべての設備を見てくれている」わけではありません。調査が来ないから安全だ、とも言えません。

なお、4年の期限の直前4か月以内に調査をした場合は、期限の日に調査したものとみなされます(同条1項2号)。お知らせの時期が前後するのはこのためです。

入居者が断ったら、どうなりますか?

ガス事業法159条2項には、ただし書があります。

「その消費機器を設置し、又は使用する場所に立ち入ることにつき、その所有者又は占有者の承諾を得ることができないときは、この限りでない。」

部屋に住んでいる入居者は「占有者」です。入居者が立ち入りを承諾しなければ、ガス会社は調査をしなくてよい、という書き方になっています。入居者に罰則はありません。ガス会社は、承諾を求めた年月日を帳簿に残すことになっています(同規則205条1項8号)。

ここで混同しやすいのが、民法606条2項です。賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人はこれを拒むことができない、という条文ですが、これは大家が自分で行う保存行為の話です。ガス会社の調査は大家の行為ではないため、この条文で入居者に受けさせることはできないと考えられます。

大家にできるのは、お願いです。入居時の説明や掲示で「ガス会社の法定の調査なので、日程の変更を申し出てでも受けてほしい」と伝えておくと、断られる件数は減らせます。

ガス会社の点検のお知らせが来たら大家がやる4つの手順

「基準に合っていない」と言われたら、直すのは誰ですか?

ガス事業法159条3項は、調査の結果、消費機器が基準に合っていないときは、とるべき措置と、措置をとらなかった場合に生ずべき結果を、その所有者又は占有者に通知しなければならないとしています。さらに同規則200条1項3号で、ガス会社は毎年度1回以上その通知を繰り返し、通知から1か月たった日以後5か月以内に再び調査します。

LPガスでも同じ形で、液化石油ガス法27条1項2号が所有者または占有者への通知を定めています。加えて同法35条の5は、都道府県知事または指定都市の長が、所有者または占有者に修理・改造・移転を命ずることができるとしています。

給湯器や配管が建物の設備として付いているなら、所有者は大家です。そして民法606条1項は、賃貸人に賃貸物の使用・収益に必要な修繕の義務を課しています。通知が入居者に届いて、大家まで上がってこないのがいちばん危ない形です。

なお、LPガスでは給湯器や配管をガス会社が所有している物件もあります。その場合の扱いは 単身向けの部屋に大家が設備を足す順番 で触れています。

都合の悪いことも書いておきます

  • 調査は「基準に合っているか」を見るもので、寿命の判定ではありません。点検で問題なしでも、翌月に壊れることはあります。交換の時期の考え方は エアコン・給湯器はいつ替えるか に書きました
  • 直す費用は、通知を受けた側の負担です。ガス会社が直してくれるわけではありません。入居中の設備の修繕費の分け方は 入居中に設備が壊れたときの修繕費 を参照してください
  • 空室の部屋は、調査の日程から漏れやすくなります。ガスを止めている部屋の扱いは 空室の光熱費は止めれば消えるのか にあります
  • ガス会社ごとに、お知らせの書式も回り方も違います。ここに書いた頻度は法令の最低限で、実際の日程はガス会社に確認してください

機器ごとの技術上の基準の当てはめは、専門の判断になります。個別の設備については、契約しているガス会社に確認してください。

ガス会社のお知らせが来たら、大家がやる3つ

  1. 入居者に一言伝える。「ガス会社の法定の調査です。都合が悪ければ日程を変えてもらってください」
  2. 調査の結果を入居者から回収する。「基準に合っていない」旨の書面が入居者に届いていないか、調査のあとに確かめます
  3. 各戸の給湯器の型式と製造年を台帳に書く。どの部屋のどの機器が4年ごとの調査の対象になるか、交換がいつ来るかが、この台帳から見えてきます

給湯器の置き場所と排気筒の決まりは 給湯器を屋外に置くのは、法律の決まりではありません、消防設備の点検との違いは アパートの消防設備点検は業者に頼むしかないのか にまとめています。

(出典:e-Gov法令検索 ガス事業法159条、ガス事業法施行規則197条・200条・205条、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律27条・35条の5、同法施行規則36条・37条、民法606条。2026年9月25日時点)

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