管理人の給与から家賃を引く大家は、書面の労使協定が要ります|労働基準法24条は賃金の全額払いが原則です

結論からお伝えすると、住み込みの管理人などに払う給与から、家賃を引いてはいけないわけではありません。ただし、事業場の労働者の過半数を代表する者などとの書面の協定がないまま引くと、労働基準法24条1項の違反になります。給与は、通貨で、直接本人に、その全額を払うのが原則だからです。

「家賃は給与から引いて渡す」は、大家さんにとって自然な段取りに見えます。条文を開いて、引けるときと引けないときの線を整理しました(2026年10月1日時点)。

給与から家賃を引く条件。賃金は全額払いが原則、書面の協定があれば引ける、口約束では足りない、管理人が1人のときは確かめる。

24条1項は「全額払い」を原則にしています

労働基準法24条1項は、賃金について、次の3つを原則にしています。

  • 通貨で払う
  • 直接、労働者に払う
  • その全額を払う

11条は、賃金を「名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定義しています。管理人に払う給与も、ここでいう賃金です。家賃は賃貸借の代金ですが、給与から先に引いてしまうと、払うべき賃金の一部を払わなかったことになります。

引けるのは、法令に定めがあるときか、書面の協定があるときです

同項のただし書は、賃金の一部を控除して払える場合を2つ挙げています。

場合 中身
法令に別段の定めがある 所得税の源泉徴収など
書面による協定がある 事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、なければ労働者の過半数を代表する者との協定

家賃を引くのは、法令に定めがある場合ではないため、書面の協定の側に当たります。口約束や、本人が「引いていいです」と言っただけでは、条文が求める書面の協定にはなりません。

協定を結ぶ相手は、管理人が1人のとき誰になりますか?

労働組合がない事業場では、相手は「労働者の過半数を代表する者」です。管理人が1人だけのとき、誰が過半数を代表するかは、条文だけでは読み切れません。結ぶ前に、所轄の労働基準監督署へ確かめてください。

24条の条文は、協定を労働基準監督署へ届け出ることを求める書き方ではありません。届出が要らないことは、協定の効力がないまま引いてよいこととは別の話です。

家賃は引くか別に払うか。給与から引くなら書面の協定が必要、別に払ってもらうなら24条の控除の論点は起きない。

違反したときと、帳簿への書き方

24条から27条までの違反には、30万円以下の罰金の定めがあります(120条1号)。この記事では、罰金の定めがあることまでを条文で確かめたもので、実際の運用は確かめていません。

給与から引いた額は、賃金台帳に記入します。施行規則54条1項8号が、24条1項の規定で賃金の一部を控除した場合は、その額を書くよう定めています。

都合の悪いことも書いておきます

  • 引かずに、管理人が家賃を別に払う形なら、24条の控除の論点は起きません。ただし、家賃を相場より安くしている場合に、その差額が給与にあたるかどうかは税金の側の話です。税務署か税理士に確かめてください。
  • 家事使用人には労働基準法が適用されません(116条2項)。賃貸経営のために雇う人が当たるかは、条文だけでは判断できません(清掃のパートを1人雇う大家の労災保険)。
  • 協定の書式について、24条に定めはありません。何を、いくら、いつ引くのかを、管理人にも同じ書面が渡るようにしておくと、後から行き違いが起きにくくなります。

賃金や労働条件を書面で示すときの項目はアパートの管理人を雇う大家が書面で示すことに整理しています。家賃のほうを相手の都合で引かれる側の話は入居者が修繕費を家賃から引いてくるのは、条文の上では「相殺」ですにあります。個別の判断は、労働基準監督署か社会保険労務士に確かめてください。

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