アパートの1室を民泊にすると、火災報知設備は建物の延べ面積で決まります|配線なしで付けられる特定小規模施設用の線

空室が半年続いた2階の角部屋を、民泊に回してみようか。そう考えて最初に開くのは、たいてい観光庁の届出の手引きです。180日の上限、管理の委託、宿泊者名簿。消防の話は「火災警報器くらいは付いている」で後回しにされがちです。

ところが消防法では、民泊にした部屋は「旅館」の側に数えられます。そして1室の用途が変わると、アパート1棟の用途まで変わります。自動火災報知設備が要るかどうかは、その部屋ではなく建物で決まります。

結論からお伝えすると、次の5点です(2026年10月13日時点の法令と、総務省消防庁・さいたま市の公表資料で確認しています)。

  • 住宅宿泊事業の届出住宅は、原則として消防法施行令別表第一(5)項イ=旅館・ホテル・宿泊所の扱いです。家主が不在にならない届出をして、宿泊室の床面積の合計が50平方メートル以下なら住宅の扱いに戻ります(消防庁 消防予第330号)
  • アパートの1室が(5)項イになると、棟は原則として(16)項イ=複合用途防火対象物になります
  • 自動火災報知設備は、延べ面積300平方メートル未満なら民泊の部分だけ、300平方メートル以上なら原則として建物全体です(消防法施行令9条・21条1項)
  • 延べ面積が300平方メートル未満などの建物なら、配線のいらない「特定小規模施設用自動火災報知設備」で代えられます。感知器だけで組むなら消防設備士の資格は要りません
  • (16)項イは「特定防火対象物」です。点検結果の報告は3年に1回から1年に1回になり、建てたときの基準のままでよいという扱いも外れます
民泊にしたアパートで自動火災報知設備をどこまで付けるかの5つの線(民泊の部屋は旅館の扱い・部屋には必ず付く・延べ300平方メートル以上は棟全体・民泊が1割以下なら部屋だけ・内階段1本の2階なら棟全体)

民泊の部屋は、消防法では何になるのですか

消防庁は、住宅宿泊事業法の施行に合わせて「住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて(通知)」(平成29年10月27日 消防予第330号)を出しています。中身は短く、届出住宅は別表第一(5)項イの防火対象物またはその部分として取り扱う、と書いています。

例外は1つだけです。人を泊める間、住宅宿泊事業者が不在にならない旨の届出をしていて、宿泊者が寝る部屋の床面積の合計が50平方メートル以下なら、住宅として扱います。家主が同じ住戸に住みながら1部屋を貸す形がこれに当たります。

空室を丸ごと民泊にする大家さんは、ほぼ確実に「不在」の側です。つまりその住戸は旅館と同じ欄に入ります。家主の居住・不在は、一戸建てなら建物単位、共同住宅なら住戸単位で判断すると、消防庁のリーフレット(令和8年3月時点版)に書かれています。

1室だけなのに、建物の用途が変わるのはなぜですか

通知は続けて、届出住宅が一部にある共同住宅は「届出住宅ごとに用途を判定した上で、棟ごとにその用途を判定する」としています。消防庁のリーフレットの流れ図では、民泊の住戸が9割以上なら棟全体が(5)項イ、9割未満なら(16)項イ、すべての住戸が住宅扱いなら(5)項ロ=共同住宅のままです。

8戸のアパートで1室だけ民泊にすると、9割未満なので棟は(16)項イ=複合用途防火対象物になります。別表第一の(16)項イは「その一部が(5)項イ…の用途に供されているもの」と定義されており、1室でも当てはまります。

自動火災報知設備は、どこまで付けることになりますか

ここが条文を2本重ねて読むところです。

  1. 民泊の部分には、面積にかかわらず要ります。消防法施行令9条は、(16)項の建物のうち(5)項イに使う部分を、1つの(5)項イの建物とみなします。そして21条1項1号イは、(5)項イには延べ面積の条件を付けずに自動火災報知設備を求めています
  2. 延べ面積300平方メートル以上なら、建物全体に要ります。21条1項3号イが(16)項イを「延べ面積が三百平方メートル以上のもの」として挙げており、この号は9条のみなしから外されているので、棟全体で判断します
  3. 例外として、民泊の部分が建物の1割以下で300平方メートル未満なら、民泊の部分だけで足りる場合があります。消防法施行規則13条1項2号の「小規模特定用途複合防火対象物」に当たり、同規則23条4項1号ヘで、ほかの住戸の感知器を省ける仕組みです。さいたま市消防局の表も「(5)項イ部分が全体の10%以下の場合は(5)項イ部分のみ」と整理しています

もう1つ、面積と関係なく建物全体にかかる号があります。21条1項7号は、(5)項イの部分が1階以外の階にあり、そこから地上に通じる階段が屋内に1本しかない建物に、自動火災報知設備を求めています。階段が屋外にあれば1本でよいので、外階段のアパートは多くがここを外れます。内階段1本の建物の2階で民泊をするときは、この号を先に確かめてください。

「特定小規模施設用」は、普通の自動火災報知設備と何が違いますか

普通の自動火災報知設備は、受信機・感知器・ベルを配線でつなぎます。築年数のたったアパートに後から入れると、共用部に配線を這わせる工事になります。

これに代えられるのが、平成20年総務省令第156号「特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」が定める特定小規模施設用自動火災報知設備です。使える建物は2条1号に並んでいます。

  • 21条1項の対象(3号〜6号など一部の号を除く)のうち、延べ面積または床面積が300平方メートル未満のもの(1号イ。7号の内階段1本の建物も入ります)
  • (16)項イのうち、旅館と共同住宅の用途しかなく、旅館の部分が300平方メートル未満で、延べ面積が300平方メートル以上500平方メートル未満のもの(1号ハ)

消防庁のリーフレットによれば、無線で連動する電池式の感知器を使えば、電源の配線も感知器どうしの配線も要りません。受信機や中継器を置かず感知器だけで組むなら、工事に消防設備士の資格は不要で、着工前の届出も要りません。工事が終わったあとの設置届は必要です。

ここで1つ取り違えやすいことがあります。ホームセンターで売っている連動型の住宅用火災警報器は、特定小規模施設用自動火災報知設備として使えません。リーフレットは「感知性能等が異なります」と明記しています。見た目が似ていても、代わりにはなりません。

普通のアパートのままなら、何が要らなかったのですか

共同住宅=(5)項ロのままなら、自動火災報知設備が要るのは延べ面積500平方メートル以上からです(21条1項4号)。点検結果の報告も3年に1回で済みます(消防法施行規則31条の6第3項2号)。このあたりはアパートの消防設備点検は業者に頼むしかないのかにまとめました。

1室を民泊にして(16)項イになると、同じ3項1号で報告は1年に1回になります。さらに、消防法17条の2の5第2項4号は、基準が変わっても既存の建物には前の基準を当てるという扱いから「特定防火対象物」を外しており、施行令34条の4が(16)項イをその1つに挙げています。「建てたときは要らなかった」は理由になりません。

収容人員が30人以上になると防火管理者の選任も要る、とリーフレットの表にあります。共同住宅のままの線(50人)についてはアパートの消防計画は何戸からではありませんに書いています。

共同住宅のままの建物と1室を民泊にした建物の比較(用途・自動火災報知設備・点検報告の周期・適用される基準)

都合の悪いことも書いておきます

  • 判定するのは消防署です。9割の線や1割の線の数え方、共用部に警報音を出す感知器を求めるかどうかは、建物を見て決まります。リーフレットにも、廊下などの共用部での警報を指導される場合があると書かれています
  • 無線式が使えない建物があります。電波の届き方や階数によっては、感知器どうしが通信できず、配線式になります
  • 消防用設備の特例を受けている共同住宅は、民泊ができない場合があります。さいたま市消防局のページは「必要とされる消防用設備等が免除されている共同住宅の場合、入居できない場合もあります」と注意しています
  • 届出には消防法令適合通知書が要ります。さいたま市では事業を始める区の消防署へ申請し、職員の調査を経て後日交付です。設備を付け終わってからの申請になるので、開業日から逆算が要ります
  • 機器と工事の費用は、戸数・階数・感知器の数で大きく変わります。ここでは金額を書いていません。複数の業者から、同じ図面で見積りを取ってください

今日できること

  1. 建築確認の図面か登記で、建物の延べ面積を確かめる(300と500のどちら側か)
  2. 民泊にしたい住戸の階と、地上へ出る階段が屋外か屋内か、何本かを確かめる
  3. 最後の消防設備点検の報告書を出して、今の建物に何が付いているかを1枚に書き出す
  4. その3点を持って、物件の所在地を管轄する消防署の予防の窓口で、用途の判定を先に聞く

民泊そのものの届出と管理の委託については空室を民泊に回す前に見る4つのことに、各住戸の住宅用火災警報器の話は住宅用火災警報器は大家と入居者のどちらが替えるのかに整理しています。

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出典

  • 消防法17条の2の5、消防法施行令9条・21条・34条の4・別表第一、消防法施行規則13条・23条・31条の6、特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令2条・3条(e-Gov法令検索・2026年10月13日時点)
  • 総務省消防庁「住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いについて(通知)」平成29年10月27日 消防予第330号
  • 総務省消防庁「民泊における消防法令上の取扱い等に関するリーフレット(令和8年3月時点版)」(民泊における消防法令上の取り扱い等)
  • さいたま市消防局「民泊における消防法令上の取り扱い等について」(2025年3月18日更新)

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