新築アパートの表題登記は、所有権を取得した日から1か月以内です|怠ると10万円以下の過料、表題登記のない建物を買った人も同じです(不動産登記法47条・164条)
結論からお伝えすると、新築したアパートの表題登記は、所有権を取得した日から1か月以内に申請しなければなりません(不動産登記法47条1項)。正当な理由がなく怠ると、10万円以下の過料です(同法164条1項)。しかも条文の対象は新築だけではありません。表題登記がない建物の所有権を取得した人にも、同じ1か月がかかります。この記事では、条文を順に読んで、いつから数えるのか、怠るとどうなるのか、融資や保存登記とどう関わるのかを整理します。
表題登記とは、何を登記簿に載せるものですか?
表題登記は、その建物を登記簿に初めて載せる登記です。申請情報には、建物の所在と地番、種類、構造、床面積、名称があるときはその名称を書きます(不動産登記令3条8号)。種類は建物の主な用途で決まり、居宅、店舗、共同住宅、事務所などに分けられています(不動産登記規則113条1項)。
あわせて、その建物の所有者の氏名と住所が「表題部所有者」として載ります。申請には、次の4つが要ります(不動産登記令の別表、建物の表題登記の項)。
- 建物図面(建物の位置を示す図面)
- 各階平面図(各階の形を示す図面)
- 表題部所有者となる者が所有権を持つことを証する情報
- 表題部所有者となる者の住所を証する情報
図面の作り方は法務省令で決まっています(不動産登記令2条5号・6号)。「所有権を持つことを証する情報」に具体的に何が使えるかは、条文には書かれていません。法務局か土地家屋調査士に確かめる項目です。
「建物」になるのは、工事のどの段階ですか?
登記の対象になる建物は、「屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるもの」と規則に書かれています(不動産登記規則111条)。柱が立っただけ、基礎ができただけの段階では、まだ登記の対象になる建物ではありません。
ただし、47条の1か月は「建物ができた日」ではなく、「所有権の取得の日」から数えます。この2つが同じ日になるとは、条文からは言い切れません。請負で建てた建物の所有権が施主にいつ移るかは、請負契約の書き方によっても変わるためです。契約書の引渡しの条項と、所有権が移る時期の条項を、次の節の前に確認してください。

1か月は、いつまでですか?
民法の期間の数え方に従います。期間の初日は数えません(民法140条)。月で定めた期間は、暦に従って数え、最後の月の「起算日に応当する日の前日」に終わります(同法143条2項)。
たとえば、所有権を取得した日が10月21日なら、数え始めるのは翌日の10月22日で、期限は11月21日です。最後の月に応当する日がないときは、その月の末日になります(同項ただし書)。
ここで確かめられるのは数え方だけで、「所有権の取得の日がいつなのか」は個別の契約によります。条文を読んでも日付は決まりません。迷ったら、早いほうの日付で数えておくのが安全です。
期限を過ぎると、どうなりますか?
不動産登記法164条1項は、47条1項の申請をすべき義務がある人が「正当な理由がないのにその申請を怠ったとき」は、10万円以下の過料に処すると定めています(e-Gov法令検索・2026年10月21日時点)。過料は罰金や科料とは別のもので、地方裁判所が非訟事件手続法に従って決めます。その手続は、次のとおりです。
- 管轄は、本人の普通裁判籍の所在地(住所など)を管轄する地方裁判所です(非訟事件手続法119条)
- 裁判には理由を付けなければならず、あらかじめ検察官の意見と本人の陳述を聴きます(同法120条1項・2項)
- 本人は、即時抗告で争うことができます(同条3項)
注意したいのは、条文が「10万円以下」としか書いていないことです。「正当な理由」が何にあたるのか、何日遅れたらいくらになるのかは、条文からは分かりません。
「表示に関する登記は、登記官が職権でできる」という規定もあります(不動産登記法28条)。ただしこれは登記官が「できる」という規定で、47条の申請義務を外す書き方にはなっていません。法務局が代わりにやってくれるから放っておける、とは読めません。
保存登記と融資には、どう関わりますか?
所有権の保存登記は、法律で決まった人しか申請できません。その最初に挙がっているのが「表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人」です(不動産登記法74条1項1号)。残りの2つは、所有権を持つことが確定判決で確認された人と、収用で所有権を取得した人だけです(同項2号・3号)。
つまり、表題登記がない建物で保存登記を申請できるのは、原則として、判決か収用で所有権を得た人に限られます。新築アパートを建てた大家さんが保存登記へ進むには、先に表題登記が済んでいる必要があります。
融資を受けて建てるときは、融資の実行までに、表題登記と保存登記をいつまでに済ませるかを求められることがあります。この日程は法律ではなく、融資の契約書と金融機関の運用で決まります。条文の1か月より前に、融資のほうの期限が来る可能性があります。融資の契約書の該当箇所は、必ず自分の目で確かめてください。
自分で申請できますか?調査士に頼むと何が変わりますか?
土地家屋調査士法3条は、調査士が「他人の依頼を受けて」不動産の表示に関する登記の申請手続の代理などを業とすると定めています。同法68条は、調査士会に入会している調査士か調査士法人でない者が、これらの事務を業とすることを禁じています(弁護士などの例外があります)。どちらも、他人の依頼を受けて業として行うことが対象で、所有者本人が自分の建物の登記を申請することまでは、この条文では止められていません。
ただし、申請には建物図面と各階平面図が必要で、図面の様式は省令で決まっています。測量が必要になる場面もあります。調査士に頼む費用は事務所ごとに異なり、今回は金額を確かめていません。見積りは、同じ内容で2か所以上から取ると比べられます。
買った建物に表題登記がなかったときは、どうなりますか?
47条1項の対象は、2つのどちらかです。
- 新築した建物(区分建物を含む)の所有権を取得した者
- 区分建物以外の、表題登記がない建物の所有権を取得した者
2番目は、中古の建物を買ったら登記簿に載っていなかった場合です。この場合も、買った日(所有権を取得した日)から1か月で、買主が表題登記を申請する義務を負います。区分建物を新築したときの申請は、同じ建物に属する他の区分建物の申請と併せてします(同法48条1項)。
築古の建物を買うときは、売買契約の前に、登記簿に建物が載っているかを確かめておくと、あとから1か月の期限に追われずに済みます。同じ1か月でも、増築部分の変更登記は増築した部分の登記は、変更から1か月以内です|築古アパートのオーナーが未登記の部屋を見つけたときに分ける3つの話、取り壊したときの滅失登記は建物を取り壊したら滅失登記は1か月以内です|築古アパートのオーナーが過料と1月1日で見る2つの日付に整理しました。
都合の悪いことも書いておきます
- 所有権の取得の日と、1か月の起算日が、請負契約のどの条項で決まるのかは、条文だけでは決まりません。個別の契約書で確認が必要です
- 過料が実際にどの程度の遅れでいくら科されるのかは、条文には書かれておらず、今回確かめた範囲では分かりませんでした
- 調査士の報酬、図面の作成にかかる期間は、今回確かめていません
- 表題登記を済ませても、所有権を第三者に主張するための保存登記は別の登記です。表題登記だけで安心できるわけではありません

今日やることを1つだけ選ぶなら
建築請負契約書(買ったなら売買契約書)を開いて、「引渡し」と「所有権の移転」が書かれた条項に線を引いてください。そのうえで、融資を使う場合は、金融機関から求められている登記の日程を、同じ紙に書き出します。条文の1か月と、融資の日程の、早いほうが実際の期限です。
個別の日付や、「正当な理由」にあたるかどうかは、土地家屋調査士か、管轄の法務局にご確認ください。登記の後に来る税金はアパートを買った不動産取得税は、登記から7〜9か月後に来ます|中古なら建物の軽減は使えませんに、建物の名称を変えるときの登記はアパートの名前を変えるとき|登記に名称があれば1か月以内に申請ですにあります。
出典
- 不動産登記法(平成16年法律第123号)第28条、第47条、第48条、第74条、第164条(e-Gov法令検索・2026年10月21日時点)
- 不動産登記令(平成16年政令第379号)第2条、第3条、別表(建物の表題登記の項)(同上)
- 不動産登記規則(平成17年法務省令第18号)第111条、第113条(同上)
- 土地家屋調査士法(昭和25年法律第228号)第3条、第68条(同上)
- 非訟事件手続法(平成23年法律第51号)第119条、第120条(同上)
- 民法(明治29年法律第89号)第140条、第143条(同上)
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