保証会社が家賃を立て替えても、契約を解除できるのは大家だけです|代位弁済のあとに残る3つの条文
保証会社から「代位弁済いたしました」という通知が届いた。口座には家賃と同じ額が入っている。ここで多くの大家さんが、「あとは保証会社が回収して、出ていってもらうところまでやってくれる」と受け取ります。
結論からお伝えすると、契約を解除できるのは大家さんだけです。民法502条4項に、そう書いてあります。保証会社は立て替えた分について大家さんの権利を引き継ぎますが、引き継がれないものが2つあります。解除権と、部屋を貸している当事者という立場です。
代位弁済を受けるまでの動き方は別の記事にまとめてあるので、ここでは入金があったあとの話を扱います(→ 家賃を滞納された。最初の3日でやること)。

立て替えた瞬間に、何が移るのか
民法499条は1行です。「債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する」。保証会社が入居者の代わりに家賃を払うと、その瞬間に大家さんの持っていた家賃債権が保証会社に移ります。
移った先で何ができるかは、501条が決めています。1項は「債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる」。2項で、その行使は「自己の権利に基づいて債務者に対して求償をすることができる範囲内」に限ると絞られています。
ここで出てくる「求償」は、459条の求償権です。「保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって……債務を消滅させる行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額……の求償権を有する」。
つまり保証会社が入居者に請求しているのは、大家さんの家賃債権であると同時に、保証会社自身の求償権です。この2本立てになっていることが、あとの話に効いてきます。
解除できるのは、なぜ大家さんだけなのですか?
民法502条は「一部弁済による代位」の条文です。その4項がこうなっています。
「第一項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない」。
賃貸借契約は毎月家賃が発生し続ける契約なので、保証会社が滞納2か月分を立て替えても、それは債権の一部にすぎません。一部代位なので、502条の場面です。
この条文には、見落としやすい後段が付いています。解除するなら、代位者(保証会社)に対して、立て替えた金額と利息を償還しなければならない。解除は大家さんの専権ですが、無料の専権ではありません。実際にどう精算するかは保証委託契約と保証契約の条項で決まっているので、解除を考える前に、その条項を読む順番になります。
保証会社から聞かれたら、答える義務があります
民法458条の2は、あまり話題になりませんが、大家さんの側に義務を置いている条文です。
「保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない」。
努力義務ではなく「しなければならない」です。保証会社から残額の照会が来たら、遅滞なく答える。滞納が何か月分で、いくら残っていて、どれが支払期日を過ぎているか。この記録がすぐ出せない状態だと、義務のほうに引っかかります。
入金の記録をどこまで管理会社に残してもらうかという話は、別の記事にあります(→ 大家が管理会社に対応履歴を残してもらうには)。
そもそも保証契約は、書面がなければ効きません
民法446条2項は「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」と決めています。3項で、電磁的記録によるものも書面とみなされます。
保証会社との関係では、大家さんの手元に保証契約書(または保証委託契約の承諾書)が残っているかどうかがここに当たります。管理会社経由で入れた保証会社の場合、大家さんの手元には1枚も無いことがあります。引き継ぎのときに確認する書類のひとつです(→ 管理会社が指定する家賃保証会社を大家は変えられるのか)。

2025年10月から、保証会社の「国のお墨付き」は2つになりました
これまで家賃債務保証業者の制度は、国土交通省の告示にもとづく登録制度だけでした。任意の登録で、入っていない会社も普通に営業しています。
そこに認定家賃債務保証業者制度が加わりました。住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)の第7章、72条から80条です。令和6年6月5日公布、令和7年(2025年)10月1日施行。e-Gov法令検索で施行日の前日を指定すると72条はまだ存在せず、10月1日で現れます。
登録が告示だったのに対し、認定は法律に根拠があるところが違います。そして認定の基準(72条1項と施行規則33条)に、大家さんの実務に直接ひびく項目が並んでいます。
- 72条1項2号……保証契約の締結条件として、親族その他の関係者の連絡先の情報提供を求めないこと。ここでいう関係者は、施行規則32条で「友人、知人その他の住宅確保要配慮者が氏名を知り、かつ面識がある自然人」と定義されています
- 施行規則33条3号……保証委託契約の締結条件として、保証人の設定を求めないこと
- 施行規則33条2号……保証委託契約の締結の実績と、標準的な保証委託契約の内容およびその締結の条件を、インターネット等で公示すること
- 施行規則33条4号……保証委託料が、契約の履行に要する費用に照らして不当に高くないこと
「緊急連絡先がないと審査が通らない」は、認定を受けた会社では条件にできません。身寄りのない高齢の申込みを断る理由に使われてきた項目なので、ここは覚えておく値打ちがあります。そして33条2号のおかげで、大家さんは申し込む前に審査の条件を読めます。
立て替えた分は、保証会社が全部かぶっているのですか?
認定を受けた会社については、住宅金融支援機構の保険が用意されています(法80条)。3項で、保険金額は保証した金額に「百分の九十を超えない範囲内において国土交通省令で定める割合」を乗じた額とされ、その割合は施行規則44条で決まっています。
- 認定住宅の入居者の家賃債務の保証……100分の70から100分の90までの範囲内
- その他の家賃債務の保証……100分の70
保険がある分だけ、認定を受けた会社は断る理由が減ります。入居を断られやすい層を受け入れても、立て替えの7割から9割が戻る設計だからです。
都合の悪いことも書いておきます
- 認定も登録も、支払能力を国が保証したという意味ではありません。基準に適合しているかを見ているだけで、倒産しないという話ではありません。保証会社を入れるかどうかの判断材料は別に整理しています(→ 家賃保証会社は入れるべきか|費用と守られる範囲)
- 通知の期限は法律ではなく約款で決まります。「滞納発生から何日以内に報告」は会社ごとに違い、遅れると立て替えの対象から外れることがあります。これは民法ではなく契約の話です
- 保証会社が入居者に取り立てても、部屋は空きません。明渡しは別の手続きで、そこは大家さんが動く領域です
- 入居者との関係は、保証会社が入っても切れません。修繕の義務も、契約の更新も、大家さんの側に残ります(→ 入居中に設備が壊れたときの修繕費)
大家さんが今日できること
- 保証会社の名前で、国土交通省の「認定家賃債務保証業者一覧」と「登録家賃債務保証業者一覧」を引いてください。どちらにも載っていない会社なら、それが今の状態です
- 手元に保証契約書があるか確かめてください。無ければ管理会社に写しを求めてください。446条2項の書面がどこにあるかを知らないまま運用している物件は、思っているより多くあります。連帯保証人も付けている部屋なら、極度額の欄も一緒に見てください(→ 連帯保証人の保証が切れる3つの場面)
- 代位弁済の通知が来ている部屋があれば、その通知に「解除」の文字があるかを見てください。解除は大家さんしかできないので、保証会社の通知に書いてあるのは依頼か案内です
認定の申請や制度の問い合わせ先は、埼玉県の物件なら国土交通省関東地方整備局(048-601-3151)です。これは保証会社が申請する側の窓口ですが、制度の確認先としても使えます。
出典
- 民法(明治29年法律第89号)446条・458条の2・459条・499条・501条・502条。e-Gov法令検索(2026年9月14日時点の現行条文で確認)
- 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成19年法律第112号)72条〜80条。e-Gov法令検索(同日確認。72条は施行日2025年10月1日、公布2024年6月5日)
- 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則(平成29年国土交通省令第63号)32条・33条・44条。e-Gov法令検索(同日確認)
- 国土交通省「認定家賃債務保証業者制度」(2026年9月14日閲覧。同ページのQ&Aは令和8年6月19日時点)
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