アパートの共用部での喫煙に大家が示せる根拠|外廊下は健康増進法の上では「屋外」です

2階建てのアパートの外階段。踊り場の手すりの根元に、飲み終えた缶コーヒーが1本置かれていて、飲み口のまわりが灰で黒くなっています。下の階の入居者から「階段を上がるたびに煙を吸わされる。共用部は法律で禁煙のはずでは」と連絡が来ました。

結論からお伝えすると、外廊下や外階段は、健康増進法の上では多くの場合「屋外」です。健康増進法が喫煙を禁じているのは、学校や病院などを除けば、多数の者が利用する施設の「屋内」だけです(健康増進法29条1項2号)。屋根と壁の付き方で「屋内」か「屋外」かが決まり、吹きさらしの外廊下はその外側に出ます。

一方で、エントランスや内廊下のように壁で囲まれた共用部は、話が変わる可能性があります。大家さんが示せる根拠は、共用部の造りによって変わるというのがこの記事の要点です。

アパートの共用部での喫煙に大家が示せる根拠5つ。外廊下は屋外、内廊下は喫煙禁止の場合あり、灰皿を置くと大家が条文の相手、吸う人の配慮、契約と使用細則

共用部は、健康増進法のどこに入るのか

健康増進法の受動喫煙の規制は、「多数の者が利用する施設」を3つに分けています。学校・病院・行政機関などの第一種施設、喫煙を目的とする施設、そしてそれ以外のすべてである第二種施設です(28条4号〜7号)。

「多数の者が利用する」の意味について、厚生労働省の施行通知(平成31年2月22日 健発0222第1号)は「2人以上の者が同時に、又は入れ替わり利用する施設」と書いています。アパートの共用廊下は、複数の入居者が入れ替わり通る場所です。

ここで効いてくるのが40条1項1号の適用除外です。外されているのは「人の居住の用に供する場所」で、同じ通知は、老人ホームなどの入所施設について「多床室・相部屋や共用部は多数の者が利用する場所であるため、適用除外の場所には当たらず」と書いています。住戸は外れても、共用部までは外れない、という線の引き方です。

ただし、国の通知と「改正健康増進法の施行に関するQ&A」(令和元年6月28日最終改正)を読んだ範囲では、アパートやマンションの共用部を名指しした問答は見つかりませんでした。入所施設の書き方から読み取れる線であって、共同住宅について国が明言しているわけではありません。個別の建物の扱いは、最後に保健所で確かめる必要があります。

外廊下と外階段は、なぜ「屋外」なのですか?

同じ施行通知が、「屋内」を次のように定めています。

  • 外気の流入が妨げられる場所として、屋根がある建物であって
  • かつ、側壁が概ね半分以上覆われているものの内部
  • これに当たらない場所は「屋外」

第二種施設の喫煙禁止場所は、29条1項2号で「屋内の場所」に限られています。腰の高さの立ち上がり壁だけで上が開いている外廊下や、屋根のない外階段は、側壁が半分も覆われていないので屋外です。共用部が第二種施設に当たるとしても、外廊下には29条の禁止が届きません。

木造2階建ての外廊下型アパートは、共用部のほとんどがこの形です。「共用部は法律で禁煙」という言い方は、建物の造りを確かめないまま使うと外れます。

エントランスや内廊下なら、何が変わるのか

壁と屋根で囲まれたエントランスホールや内廊下は「屋内」に当たります。そこが第二種施設の一部だとすると、次の条文がかかってきます。

  1. 喫煙の禁止:何人も、正当な理由なく喫煙禁止場所で喫煙してはならない(29条1項)
  2. 中止・退出の命令:違反して吸っている人に、都道府県知事(さいたま市のような保健所を設置する市では市長)が命じることができる。命令に従わないと30万円以下の過料(29条2項・77条1号)
  3. 灰皿を置いてはいけない:管理権原者は、喫煙禁止場所に喫煙用の器具や設備を使える状態で置いてはならない(30条1項)。勧告に従わなければ公表、さらに命令に違反すると50万円以下の過料(32条・76条1号)
  4. 声をかける努力義務:管理権原者は、喫煙禁止場所で吸っている人に中止か退出を求めるよう努める(30条2項)

3つ目は、入居者ではなく大家さんの側にかかる条文です。施行通知は、管理権原者を「施設の設備の改修等を適法に行うことができる権原を有する者」と説明しています。内廊下に「ここで吸ってください」と灰皿スタンドを置くと、吸う人を止めるどころか、大家さん自身が条文の相手になります。

外の共用部で、残る条文はあるのですか?

屋外の共用部でも、法律がまったく無関係になるわけではありません。共用部を第二種施設の一部とみる前提に立つと、次の2つが残ります。

  • 27条1項(配慮義務):何人も、特定施設等の喫煙禁止場所以外の場所で喫煙をする際、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない
  • 27条2項:管理権原者が喫煙できる場所を定めるときは、望まない受動喫煙を生じさせない場所とするよう配慮しなければならない

どちらも罰則はありません。それでも「法律に何も書いていない」と「配慮しなければならないと書いてある」では、入居者に伝える文面が変わります。

もう1つ、細かいところですが、40条1項は「この節の規定(第三十条第四項及びこの条の規定を除く。)は、適用しない」と書いています。管理権原者に受動喫煙を防ぐ措置を求める30条4項の努力義務だけは、適用除外の場所にも残す、というかっこ書きです。施行通知も「適用除外の場所であっても、当該施設の管理権原者等は、望まない受動喫煙を防ぐために必要な措置を講ずるように努めなければならない」と念を押しています。

外廊下・外階段と内廊下・エントランスの比較。外は健康増進法29条の禁止が届かず27条の配慮だけ、中は第二種施設なら喫煙禁止で命令違反は30万円以下の過料

法律の次に示せるのは、契約です

入居者に直接示せる根拠として強いのは、やはり賃貸借契約書と、その付属の使用細則です。共用部の使い方について何が書いてあるかで、言えることが決まります。用法を守る義務(民法616条が準用する594条1項)と、契約違反があってもすぐ解除にはならない理由は、ベランダの喫煙の記事で条文を追っています(→ アパートのベランダの喫煙に、受動喫煙の法律は届きません)。

踊り場の空き缶のような吸い殻入れは、共用廊下に置かれた私物と同じ扱いになり、大家さんが勝手に捨ててよいとは限りません(→ 共用廊下の私物を大家が勝手に片づけることはできません)。

都合の悪いことも書いておきます

  • 外廊下型のアパートでは、健康増進法の禁止そのものが届きません。条文を貼り出しても、根拠としては配慮義務までです
  • 過料は、知事や市長の命令に従わなかった場合の話です。吸った時点で何かが起きるわけではなく、過料は刑罰の罰金とも別のものです
  • 共同住宅の共用部の扱いを国が名指しした資料は、探した範囲では見つかっていません。内廊下だから必ず喫煙禁止場所、とまでは言い切れません
  • 入居者同士の煙の問題に、大家さんが仲裁に入る法律上の義務があるかは別の話です(→ 入居者同士のもめごとに、大家が入る義務はあるのか)

大家さんが今日できること

  1. 苦情が出ている場所を見に行き、屋根があるか、側壁が半分以上覆われているかを確かめてください。ここで「屋内」か「屋外」かが分かれます
  2. 内廊下やエントランスに、灰皿や吸い殻入れに使われている物が置かれていないかを見てください。大家さんが置いた物なら、30条1項の相手は大家さんです
  3. 契約書と使用細則を開き、共用部での喫煙について書いてある行を探してください。1行もなければ、次の募集から入れるかどうかを決めます
  4. 内廊下で判断がつかないときは、建物のある市の担当課に、造りを伝えて扱いを確かめてください。さいたま市の窓口は保健衛生総務課(048-829-1294)です(埼玉県「喫煙・受動喫煙対策に関する問合せ先一覧」2026年1月6日掲載)

共用部の電気や共益費の扱いと同じく、共用部の話は「どこまでが共用部か」を先に決めると整理がつきます(→ アパートの共益費は何に使うお金か)。

出典

  • 健康増進法(平成14年法律第103号)27条・28条・29条・30条・32条・40条・76条・77条。e-Gov法令検索(2026年10月15日時点の現行条文で確認)
  • 厚生労働省健康局長通知「『健康増進法の一部を改正する法律』の施行について(受動喫煙対策)」(平成31年2月22日 健発0222第1号)
  • 厚生労働省「改正健康増進法の施行に関するQ&A」(平成31年4月26日公表・令和元年6月28日最終改正)
  • 民法(明治29年法律第89号)594条・616条。e-Gov法令検索(同日確認)
  • 埼玉県「喫煙・受動喫煙対策に関する問合せ先一覧」(2026年1月6日掲載・2026年10月15日閲覧)

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