遠方の物件をどう管理するか

結論からお伝えすると、遠方の物件で問題になるのは距離そのものではありません。問題になるのは①水漏れや鍵の紛失が起きたときに、何時間で現場に人が立てるか、②室内と共用部の状態を、誰の目で定期的に見ているか、この2点だけです。逆に言えば、この2つが埋まっていれば、大家さんが片道3時間の場所に住んでいても経営は回ります。

釈迦に説法かもしれませんが、遠方物件を持っている大家さんの多くは、相続で受け取ったか、利回りを求めて地方を買ったかのどちらかです。どちらの場合も「見に行けない」という同じ悩みに行き着きます。

先に、よくある失敗から

遠方物件でこじれる話には、はっきりした型があります。緊急対応と、劣化の見落としです。

  • 上階の給水管から漏水。入居者が大家さんの携帯に電話したが日中は出られず、折り返したのは6時間後。到着はさらに翌日。下階の天井まで抜けて、原状回復の範囲が2部屋に広がった
  • 年に1回しか現地を見ていなかったため、外階段の鉄部の錆に気づくのが遅れた。部分補修で済んだはずが、踏板の交換まで必要になった
  • 退去の連絡を受けてから業者を探し始めたので、原状回復の着手まで3週間。募集開始が繁忙期の2月から3月にずれ込み、決まったのは5月
  • 共用部の電球が切れたまま2か月放置。内見に来た人が「管理されていない物件」と受け取り、2件続けて申込みが入らなかった

いずれも、大家さんの熱意が足りなかったわけではありません。距離があると、初動の遅れがそのまま金額に変わるという構造の問題です。

自分で通う場合、いくらかかるのか

「管理料を払うくらいなら自分で行く」という考え方は理解できます。ただ、実際の金額に直してみると印象が変わることがあります。片道200キロ、往復の高速代と燃料代で1回あたり1万2千円、所要7時間として計算してみます。

通う頻度年間の交通費年間の拘束時間緊急時の初動
年1回1万2千円7時間最短でも当日中は不可
年4回4万8千円28時間同上
毎月14万4千円84時間同上

注目していただきたいのは右端の列です。通う頻度をいくら上げても、緊急時の初動だけは1ミリも改善しません。漏水も鍵の紛失も、大家さんが現地にいない瞬間に起きるからです。月1回通うために年14万円と84時間を使っても、埋まるのは「見る」ほうだけで、「駆けつける」ほうは空いたままになります。

一方、家賃収入が月20万円の物件で管理料が5%なら年12万円です。金額だけを並べれば、月1回通う交通費とほぼ変わりません。もちろん物件の規模や距離で数字は動きますので、ご自身のケースで一度出してみることをおすすめします。

遠方物件は買うべきではないのか?

一般的には「物件は自分の目が届く範囲で持て」と言われます。ただ、現場を見ていると、事故が起きているのは遠方物件よりも、近所にあるのに自主管理で放置されている物件のほうが多いのです。近いといつでも行けると思ってしまい、結局は年に数回しか見ない。遠方だと最初から人に任せるので、かえって定期的に目が入る。距離ではなく体制の話だ、というのはそういう意味です。

ですから判断のものさしは「近いか遠いか」ではなく、「一次対応が何分で立ち上がるか」に置いたほうが正確です。目安として、水漏れや設備の停止であれば連絡から2時間以内に一次対応、当日中に業者手配ができる体制なら、被害はほぼ広がりません。

遠方物件で埋めるべき4つの穴

やるべきことは多くありません。次の4つが誰かの担当になっていれば足ります。誰が担当してもかまいません。

埋め方の例費用の目安
緊急時の一次対応現地の管理会社に委託/24時間対応サービスの契約管理料に含む、または1戸あたり月数百円
定期的な目視巡回清掃を月1〜2回入れ、写真付きで報告を受ける1棟あたり月数千円〜(規模による)
入居者からの連絡窓口大家さんの携帯を出さず、窓口を一本化する管理料に含むことが多い
退去後の工事手配あらかじめ地元の施工先を1〜2社押さえておく

特に効くのが2つめの「写真付きの報告」です。月1回でも定点で写真が届けば、鉄部の錆、外壁のひび、雑草、放置自転車、ゴミ置き場の状態は把握できます。文章だけの報告書はあまり役に立ちません。読んでも現場が浮かばないからです。報告書の見方については、管理会社の対応が遅い。改善を求めるか、変えるかの判断基準もあわせてご覧ください。

なお、地元の管理会社に頼めば安心とも限りません。近いからこそ「見に行っています」で報告が終わってしまうこともあります。距離の遠近にかかわらず、報告の形式は最初に決めておくべきです。

空室が出たときだけは、距離が本当に効いてくる

遠方物件でいちばん差が出るのは、退去から募集開始までのスピードです。退去立会い、鍵の回収、原状回復の見積もり、着工、完了確認、写真撮影、募集開始。この一連の流れを遠隔で回そうとすると、都度の判断待ちで簡単に2〜3週間伸びます。

家賃6万円の部屋なら、1か月の遅れは6万円の機会損失です。年間で2戸の退去があり、それぞれ3週間ずつ余分にかかっているなら、年間で約9万円が消えている計算になります。空室が長引いているときの見直し方は空室が3か月埋まらないときに見直す6つのポイントにまとめています。

まとめ

遠方だから難しいのではなく、一次対応と定期的な目視が空いているから難しくなります。通う回数を増やしても前者は埋まりません。まずはご自身の物件で、この2つが誰の担当になっているかを書き出してみてください。空欄があれば、そこが弱点です。

さいたま市周辺に遠方から物件をお持ちの方は、ご相談ください。管理を任せるかどうかを決める前に、今の体制のどこが空いているかを一緒に洗い出すところからでもかまいません。

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