さいたま市の公営住宅は県営が市営の3.9倍、URは桜区・南区・北区に集中|大家が統計書で数える「比べられる相手」
さいたま市統計書の「12-7」を開くと、行は5本しかありません。令和6年度末の数字で、市が管理する住宅は2,507戸、県が管理する住宅は9,719戸、都市再生機構(UR)が7,173戸。県住宅供給公社の欄は「0」です。
「市営住宅と比べて、うちの家賃はどうか」と考えるとき、多くの大家さんは市営住宅を思い浮かべます。ところが、さいたま市の中にある公的な賃貸住宅のうち、市営は1割強にすぎません。
結論からお伝えすると、さいたま市で民間の賃貸と並んでいる公的な借家は、借家全体の7.8%です(令和5年の住宅・土地統計調査)。その中心は市営ではなく県営とURで、区によって偏りがはっきりあります。桜区はUR・公社の借家が借家の10.1%、見沼区と岩槻区は公営の借家が1割を超えます。一方、西区・大宮区・岩槻区にはUR・公社の借家が統計上ありません。さらに、公営住宅とURは法律上の家賃の決め方がまったく違い、民間の家賃と「比べられる相手」になるのはURの側です。

さいたま市に、公的な賃貸住宅は何戸あるのか
統計書の12-7「公営・都市再生機構賃貸住宅管理戸数」は、各年度末に管理している戸数です(資料:都市再生機構東日本賃貸住宅本部、埼玉県都市整備部住宅課、さいたま市建設局建築部住宅政策課)。
| 年度末 | 総数 | 市営 | 県営 | 県住宅供給公社 | UR |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和2年度 | 19,632 | 2,678 | 9,640 | 27 | 7,287 |
| 令和3年度 | 19,601 | 2,678 | 9,642 | 17 | 7,264 |
| 令和4年度 | 19,323 | 2,507 | 9,642 | 0 | 7,174 |
| 令和5年度 | 19,323 | 2,507 | 9,642 | 0 | 7,174 |
| 令和6年度 | 19,399 | 2,507 | 9,719 | 0 | 7,173 |
(出典:さいたま市「さいたま市統計書(令和7年版)」12-7・単位は戸)
表の注には、市営に改良住宅と特定公共賃貸住宅を含むこと、県営に特定公共賃貸住宅と特別県営住宅を含むこと、公社の欄は特定優良賃貸住宅であること、URに高齢者向け優良賃貸住宅を含むことが書かれています。
この5年で動いたのは次の3つです。
- 市営は令和4年度に171戸減った(2,678戸→2,507戸)。12-8で見ると、簡易耐火の40戸が0戸になり、中層耐火が2,245戸から2,114戸へ131戸減っています
- 公社の特定優良賃貸住宅は27戸→17戸→0戸と、令和4年度に市内から無くなった
- 県営は令和6年度に77戸増え、URは令和2年度から6年度までに114戸減った
市営住宅より、県営住宅のほうが4倍近く多い
令和6年度末で、県営9,719戸は市営2,507戸の約3.9倍です。「さいたま市の公営住宅=市営住宅」と考えていると、市内の公営住宅の8割近くを見落とします。
市営住宅だけは、12-8「構造,種類別市営住宅管理戸数」に区別の戸数があります。
| 区 | 市営住宅(戸) | うち中層耐火 | うち高層耐火 |
|---|---|---|---|
| 西区 | 205 | 205 | 0 |
| 北区 | 370 | 232 | 122 |
| 大宮区 | 45 | 45 | 0 |
| 見沼区 | 364 | 186 | 178 |
| 中央区 | 180 | 180 | 0 |
| 桜区 | 50 | 50 | 0 |
| 浦和区 | 201 | 201 | 0 |
| 南区 | 583 | 506 | 77 |
| 緑区 | 221 | 221 | 0 |
| 岩槻区 | 288 | 288 | 0 |
(出典:さいたま市統計書(令和7年版)12-8・令和6年度末。北区の残り16戸は耐火構造二階建て)
市全体の2,507戸の内訳は、公営住宅2,480戸、改良住宅12戸、市民住宅15戸です。公営住宅2,480戸の「うち借上」が122戸あり、122戸すべてが高層耐火です。
公営住宅法2条2号は、公営住宅を「地方公共団体が、建設、買取り又は借上げを行い」低額所得者に貸す住宅と定めています。つまり公営住宅は、自治体が建てたものだけではありません。同条6号の「借上げ」は、自治体が住宅を賃借して入居者に転貸することです。なお、表の上では北区の高層耐火もちょうど122戸ですが、借上げの区別の内訳は12-8に無く、同じ建物かどうかは確かめられていません。
どの区に、URと公営の借家があるのか
県営とURは、12-7に区別の数字がありません。区ごとの姿は、12-5(令和5年住宅・土地統計調査)の「住宅の所有の関係」で見ます。こちらは人が住んでいる住宅の数で、管理戸数とは数え方が違います。
| 区 | 借家の総数 | 公営の借家 | UR・公社の借家 | 公的の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 西区 | 10,200 | 470 | - | 4.6% |
| 北区 | 26,580 | 980 | 1,820 | 10.5% |
| 大宮区 | 21,620 | 700 | - | 3.2% |
| 見沼区 | 22,920 | 2,300 | 570 | 12.5% |
| 中央区 | 18,690 | 720 | 270 | 5.3% |
| 桜区 | 20,150 | 580 | 2,040 | 13.0% |
| 浦和区 | 27,780 | 840 | 260 | 4.0% |
| 南区 | 33,890 | 650 | 2,170 | 8.3% |
| 緑区 | 14,880 | 370 | 110 | 3.2% |
| 岩槻区 | 10,990 | 1,400 | - | 12.7% |
| 市全体 | 207,700 | 9,000 | 7,200 | 7.8% |
(出典:さいたま市統計書(令和7年版)12-5・令和5年10月1日現在・資料は総務省統計局「住宅・土地統計調査報告」。「-」は該当なし。公的の割合は公営とUR・公社の合計を借家の総数で割って当サイトで計算)
読み取れることは3つです。
- UR・公社の借家は、桜区・南区・北区に集まっている。3区で6,030戸、市全体の7,200戸の8割強です。桜区では借家の10.1%がUR・公社です
- 公営の借家は、見沼区と岩槻区で1割を超える。ところが市営の管理戸数は見沼区364戸・岩槻区288戸で、12-5の公営の借家(2,300戸・1,400戸)よりずっと少ない。市営以外、つまり県営などの公営住宅が大きいと読めます(数え方が違うので、差を戸数として読むことはできません)
- 西区・大宮区・岩槻区には、UR・公社の借家が統計上ない。緑区は110戸、浦和区は260戸で、借家の1%にも届きません
市全体では、民営借家177,800戸に対して公的な借家は16,200戸。民営11戸に公的1戸の割合です。大宮区と緑区では27戸に1戸、桜区・見沼区・岩槻区では6〜7戸に1戸まで縮まります。同じさいたま市でも、隣に団地がある区とない区では、募集で比べられる相手の数が4倍違います。
なお、住んでいる住宅の広さは、公営の借家が1戸あたり46.68平方メートル、UR・公社の借家が57.57平方メートル、民営借家が43.26平方メートルです(市全体)。民営借家の広さを区ごとに見る話は、別の記事でまとめます。

公営住宅とURは、民間の賃貸と同じ土俵にいるのか?
戸数だけ並べると、どちらも「家賃の安い公的な住宅」に見えます。しかし法律の家賃の決め方は逆向きです。
公営住宅:入居できる収入に線があり、家賃は収入で決まる
- 入居者資格(公営住宅法23条):収入が条例で定める金額を超えないこと、現に住宅に困窮していることが明らかであること
- 収入の線(公営住宅法施行令6条):条例の金額の上限は25万9千円(23条1号イ=入居者の心身の状況や世帯構成などから、特に居住の安定を図る必要がある場合として条例で定める場合)。それ以外は15万8千円を参酌して条例で定める(同号ロ)
- この「収入」は月給ではない(施行令1条3号):世帯の過去1年間の所得金額の合計から、同居者1人につき38万円などを控除し、12で割った額です
- 家賃(公営住宅法16条1項):毎年度、入居者の収入の申告に基づき、立地・規模・経過年数に応じて、近傍同種の住宅の家賃「以下」で事業主体が定める
つまり公営住宅は、入居できる人が収入で絞られ、家賃も入居者ごとに収入で決まります。民間の賃貸の入居希望者が、同じ物件を見比べて公営住宅を選ぶ、という競合の形にはなりにくい相手です。
UR:新しく入る人の家賃は、近所の相場と均衡させる
- 新規の家賃(独立行政法人都市再生機構法25条1項):新たに入居する者の家賃は「近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないよう」定めなければならない
- 家賃の変更(同条2項):変更後の家賃は、近傍同種の住宅の家賃を上回らないように定める
- 減免(同条4項):高齢者・身体障害者など特に居住の安定を図る必要がある人で支払いが難しい場合などに限る
URの家賃は、法律の上では「安くしなさい」ではなく「相場と釣り合わせなさい」と書かれています。URは割安な住宅ではなく、相場並みの家賃で、広さと条件で勝負している相手です。そして法律に入居者の収入の上限は書かれていません(入居の条件はURが定めており、この記事では確かめていません)。
民間の賃貸と同じ入居希望者を取り合うのは、公営住宅よりURの側だと考えるのが自然です。桜区・南区・北区で募集するなら、近くのURの募集家賃と広さは、自分の部屋の比較表にそのまま入る数字です。
この数字を読むときの注意
- 12-5と12-7は引き算しない。12-5は抽出調査で、人が住んでいる住宅だけを数え、10の位で丸めています(表の注に、市と各区の合計は必ずしも一致しないとあります)。12-7は年度末の管理戸数で、空いている住戸も入ります。市全体で見ても、公営の借家9,000戸に対し市営と県営の管理戸数は令和5年度末で12,149戸です。この差がどこから来るかは、表からは分かりません
- 12-5の「UR・公社の借家」は、URと公社をまとめた欄です。公社の管理戸数は令和4年度から0戸なので、令和5年の数字はほぼURと読めますが、統計の上で分けられてはいません
- 県営住宅とURの区別の管理戸数は、統計書に載っていません。区ごとの戸数を正確に知るには、県とURが公表している団地の一覧を当たる必要があります(この記事では確かめていません)
- さいたま市が条例で定めている収入の金額は、この記事では確かめていません。政令の金額(15万8千円・25万9千円)は条例の上限や参酌の基準で、実際の募集の条件は市と県の募集案内で確かめてください
大家が自分の区で見ること
- 12-5で、自分の区の「公的の割合」を見る。西区・大宮区・浦和区・緑区は4%前後。比べられる相手はほぼ民営だけです
- UR・公社の借家が多い区(桜区・南区・北区)では、近くのURの募集家賃と広さを1件ずつ控える。法律上、URの新規の家賃は相場と均衡させる決まりなので、自分の家賃を考えるときの物差しになります
- 公営の借家が多い区(見沼区・岩槻区)では、公営は収入で入居者が絞られる住宅だと割り切る。家賃の安さで張り合う相手ではありません
区ごとの家賃の動きはさいたま市の家賃は上がったのか|住宅統計は5年で5.8%、物価指数は横ばい、小売物価は1年で9.1%に、これから入居者になる年齢層の推計はさいたま市の人口は2050年も2020年より多い。それでも20〜34歳は14%減りますに整理しました。区ごとの年齢の入り方は見沼区と北区は隣どうしでも、入ってくる年齢が違います、学生の多い区はさいたま市の学生需要は桜区と大宮区に集まりますもあわせてどうぞ。
まずは統計書の12-5を開き、自分の物件がある区の行で「公営の借家」と「UR・公社の借家」の2つの数字を、借家の総数で割ってみてください。
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