空室対策のリノベーションはどこまで投資すべきか|回収年数で決める

結論からお伝えすると、空室対策のリノベーションにどこまでお金を入れるかは、好みでも流行でもなく「何年で回収できるか」と「あと何年その建物を持つか」の2つを並べて決めます。この2つが交差するところが、投資してよい上限です。

そして、回収年数は掛け算と割り算だけで出ます。見積書が1枚あれば、その場で計算できます。

リノベーションを決める前に並べる5つ。工事費の総額、賃料の増加見込み、空室期間の短縮、回収年数の式、あと何年その物件を持つか

工事を決める前に、数字を3つ並べる

見積書を開く前に、紙に3行だけ書いてください。

  1. 工事費(税込・総額)…「一式」ではなく、部位ごとに分かれた金額でもらいます
  2. 賃料がいくら上がる見込みか(月額)…自分の期待ではなく、管理会社や仲介会社に聞いた数字を書きます
  3. 空室期間が何か月縮む見込みか…ここを忘れる方が多いのですが、金額に直せます

3つ目が効きます。家賃8万円の部屋が、工事によって3か月早く決まるなら、それだけで24万円です。賃料アップが月2,000円でも、空室が3か月縮むなら、初年度の効果はまったく違う数字になります。

回収年数の出し方

式は1つだけです。

工事費 ÷(月額の増加分 × 12)= 回収年数

計算の例を置きます。金額は計算のしかたを示すための例で、相場ではありません。実際の工事費は必ず見積りで確認してください。

  • 工事費60万円/賃料アップ月3,000円 → 60万 ÷ 3.6万 = 約16.7年
  • 工事費60万円/賃料アップ月3,000円+空室が2か月短縮(家賃7万円なら14万円)→ 初年度に14万円が乗るので、実質は約12.8年
  • 工事費20万円/賃料アップ月2,000円 → 20万 ÷ 2.4万 = 約8.3年

並べてみると、金額の大きい工事ほど回収が長いという当たり前のことが、数字ではっきりします。「せっかくやるなら全部きれいに」で膨らませたぶんは、そのまま回収年数に乗ります。

何年で回収できれば、やっていいのですか?

一律の正解はありません。ただし、比べる相手は決まっています。あと何年その物件を持つつもりかです。

10年後に売るつもりの物件に、回収17年の工事を入れると、差の7年ぶんは回収できません。売却価格に上乗せできる可能性はありますが、それは買う人が決めることなので、当てにして計画は立てないほうが無難です。

逆に、次の世代まで持つ物件で、回収8年なら、判断はかなり楽になります。迷ったら「保有予定年数の半分以内で回収できるか」を一つの目安に置くと、線が引きやすくなります。数字の考え方そのものは賃貸経営で最初に覚える3つの数字にまとめています。

予算が限られたときの残し方の比較。後回しにしてよいのは間取りを触る工事や好みの強い内装、先に残すのはにおいと水回りの清潔さ、照明、寿命が近い設備

順番は、金額の大きい順ではありません

予算が限られているとき、高い工事から削るのではなく、「決まらない理由」に近い順に残します。

  • においと水回りの清潔さ…内見で最初に体が反応するところです。ここが残っていると、他が新しくても戻ってきません
  • 暗さ…照明の位置と器具は、工事としては小さい部類に入ります
  • 床と壁の面…面積が大きいので印象は変わりますが、費用も面積に比例します
  • 間取りを触る工事…いちばん費用がかかり、いちばん回収が長くなります

原状回復の範囲でどこまで戻せるかは、原状回復を安くする方法と、安くしてはいけない場所クロスの張替え費用の目安と、見積書の見方もあわせてどうぞ。原状回復で戻せるものを、リノベーションの予算で買い直さない。これだけで金額がかなり変わります。

やらないほうがいい投資

  • オーナーの好みが強く出る内装。次に住む人を選んでしまい、募集の母数が減ります
  • 入居中に効果が確かめられない工事。次の退去まで結果が出ないものは、優先度を下げます
  • 設備の寿命を無視した内装工事。壁と床を新しくした翌年に給湯器が寿命を迎えると、また工事で部屋を止めることになります。エアコン・給湯器はいつ替えるかで、先に時期を確認してください
  • 大規模修繕の予定を確認せずに進める内装。外壁の足場が来る年に室内をやると、順番が逆になります(大規模修繕の積立をどう考えるか

やる前に決めておく3つ

  1. 工事後の募集賃料をいくらにするかを、着工前に管理会社と合意しておく。終わってから決めると、結局据え置きになりがちです
  2. 工期と、募集開始日をセットで決める。退去から募集開始まで何日かかるかのとおり、ここが延びるとせっかくの効果が空室損で相殺されます
  3. 見積りを2社以上で取る。同じ内容で比べないと、高いのか安いのか判断できません

まとめ

リノベーションの上限は、感覚ではなく式で決められます。工事費 ÷(月額の増加分 × 12)で回収年数を出し、あと何年持つかと比べる。それだけです。

そのうえで、空室の原因が本当に部屋にあるのかは、工事を決める前にもう一度確かめてください。掲載や条件で止まっているなら、工事をしても同じ結果になります。空室が3か月埋まらない。募集条件のどこを動かすかペット可にするかどうかの判断|費用と回収の目安は、工事以外で回収を考える回です。

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