ペット可にするかどうかの判断|費用と回収の目安

結論からお伝えすると、ペット可にするかどうかは「入居者の間口が広がるかどうか」ではなく、増える費用を何か月で取り戻せるかで判断します。追加でかかる費用の総額を、家賃の上乗せ分と空室期間が短くなる分の合計で割って、おおむね36か月以内に戻る見込みが立つなら検討に値します。ここを計算せずに踏み切ると、決まりやすくはなったのに手残りが減る、という結果になりがちです。

ご存じの方も多いと思いますが、ペット可の住戸は今も少数派です。だからこそ効く一方で、後戻りしにくい判断でもあります。一度ペット可で募集して契約が成立すれば、その入居者が退去するまで、その部屋は実質ペット可のままです。

先に、よくある失敗から

「空室が長いのでペット可にしてみましょう」という提案を受け、その場で了承する。踏み切ること自体は間違っていないのですが、条件を決めないまま募集に出すと、後から次のようなことが起きます。

  • 家賃も敷金も据え置きのまま「ペット可」だけを追加し、退去時に想定外の補修費が出た
  • 敷金を1か月分だけ増やしたが、床とドアの補修で敷金を超えた
  • 一棟のうち1戸だけペット可にしたところ、既存入居者から鳴き声と共用部の苦情が出た
  • 頭数と体格の取り決めを口頭で済ませ、退去時に「聞いていない」と言われた

いずれも、ペット可にしたことが失敗だったのではありません。費用と条件を先に決めていなかっただけです。順番に見ていきます。

増える費用を、先に分解しておく

費用は「募集前に出ていくお金」と「退去のときに出ていくお金」の二段構えです。下の金額は関東の単身向け1Kから1DKでよく見る幅で、仕様や地域、施工する範囲によって上下します。あくまで検討の出発点として見てください。

いつ項目目安
募集前床を耐傷仕様に張替(6畳相当)4万〜9万円
募集前壁の下部を耐傷クロス・腰壁に3万〜8万円
募集前脱走防止の建具・網戸の補強1万〜3万円
退去時消臭・消毒の追加施工1万〜4万円
退去時ドア・柱の傷補修1枚あたり1.5万〜4万円
退去時通常退去との差額(合計の目安)10万〜30万円

退去時の差額に幅があるのは、飼い方の差がそのまま出るためです。同じ犬でも、床の傷がほとんど残らない部屋と、フローリングを全面張替えになる部屋があります。予算を組むときは幅の上限側で置いておいて、下振れしたら助かった、と考えるほうが安全です。

回収は何か月で見るのが妥当か?

家賃6万円の1K、ペット可対応に募集前で20万円、退去時の差額を15万円と見込んだ場合で並べてみます。平均入居年数を4年とすると、退去時の差額15万円は月あたり約3,100円の負担です。

項目ペット不可のままペット可にする
月額家賃60,000円63,000円(5%上乗せ)
募集前の追加投資0円200,000円
退去時の差額(月換算)0円▲3,100円
想定空室期間4か月2か月
空室が減る分の効果約126,000円

この例では、家賃の上乗せ3,000円と退去時負担3,100円がほぼ相殺され、実質の効果は「空室が2か月短くなること」だけになります。募集前の20万円を約12.6万円で回収し始めるので、次の一回転まで含めてようやく戻る計算です。上乗せを1割の6,000円まで取れるなら回収は一気に早まりますし、逆に空室期間が変わらない立地なら回収できません。ペット可は「決まりやすくなるか」ではなく「上乗せが取れるか」で採算が決まります。

そもそも空室の原因がペット不可ではないこともあります。原因の切り分けは空室が3か月埋まらないときに見直す6つのポイントを先に一読してから決めても遅くはありません。

やめておいたほうがよい物件はあるか

既存入居者が多く残っている木造アパートで、1戸だけを途中からペット可にするのは慎重に考えたほうがよい場面です。鳴き声と足音は界壁を通りますし、先に住んでいる方からすれば条件が後から変わったことになります。空室が半分以上あって、これから一棟の性格を変えていける段階なら話は別です。

ここでひとつ、業界でよく言われることに触れておきます。ペット可は原状回復費が跳ね上がるから避けるべき、という言い方です。ただ、現場で費用が本当に大きくなるのは、ペット可にした部屋ではなく、不可のまま黙って飼われていた部屋のほうです。可にしていれば設計も契約も準備できますが、隠れて飼われた場合は何の備えもないまま傷と臭いだけが残ります。

契約と規約で、先に決めておくこと

決めておく項目はそれほど多くありません。頭数の上限、体格や種類の範囲、繁殖の可否、共用部での移動方法、退去時の消臭・消毒の扱い、そして敷金の追加分と償却の有無。この6点を賃貸借契約書とペット飼育規約に落とし込んでおけば、退去時のやり取りはかなり静かになります。

なお、退去時の負担をどこまで入居者に求められるかは、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方が基準になります。特約を設けること自体はよく行われていますが、その有効性は書き方と個別の事情によって判断が分かれる領域です。金額の大きい特約を入れるときは、契約書の文言そのものを弁護士など専門家に確認してもらうことをおすすめします。管理会社に相談しても具体的な案が返ってこないという場合は、管理会社の対応が遅い。改善を求めるか、変えるかの判断基準もあわせてご覧ください。

まとめ

募集前の投資と退去時の差額を足す。家賃の上乗せと空室短縮で割る。36か月で戻るかを見る。判断はこの三手で足ります。数字を置いてみて回収の絵が描けないなら、ペット可は空室対策としては後回しでよい、という答えになります。

さいたま市周辺でペット可への切り替えを検討されている方は、ご相談ください。踏み切ると決めていない段階でも、その物件で上乗せがいくら取れそうかの見立てだけをお伝えすることもできます。

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