繁忙期を逃したときの募集の立て直し方

結論からお伝えすると、繁忙期を逃したあとにまずやることは家賃を下げることではありません。初期費用の組み替えと、掲載情報の入れ替え。この二つを先に回して、それでも動かないときに賃料を触るという順番です。順番を逆にすると、下げた家賃は次の入居者が退去するまで戻せず、閑散期の判断が数年分の収入に効いてしまいます。

ご存じの方も多いと思いますが、4月を過ぎると問い合わせの数そのものが落ちます。夏場の反響が繁忙期の半分以下になる物件も珍しくありません。ただ、数が減るのは母数の話であって、決まらない理由とは別です。

先に、よくある失敗から

3月末が過ぎても決まらず、焦って手を打つ。このときによく起きるのが次のような流れです。

  • 4月に家賃を5,000円下げ、6月にさらに3,000円下げた。決まったのは9月で、下げ幅だけが残った
  • 広告料を積んだが、募集図面と写真は3年前のまま。案内する側の材料が増えていなかった
  • 「夏は動かないから」と工事も撮影も止め、9月からまた同じ条件で募集を再開した
  • 2戸空いていたのに同じ条件で同時に出し、比較されて片方が完全に止まった

家賃8,000円の値下げは、年間で96,000円。4年入居されれば384,000円です。一方で、空室が1か月延びる損失は家賃6万円の部屋なら60,000円。下げるという判断は、空室1.6か月分の損失を毎年払い続けることと同じ重さになります。ここを並べずに下げるのが一番もったいない失敗です。

家賃を下げるのと、初期費用を削るのはどちらが痛いか?

家賃6万円の部屋で、入居者の負担を同じくらい軽くする三つの手を並べます。入居期間は4年で計算しています。

打ち手入居者から見た軽さ大家側の負担(4年間)戻せるか
家賃を5,000円下げる毎月5,000円240,000円退去まで戻せない
礼金1か月をゼロに初期費用60,000円60,000円次の募集で戻せる
フリーレント1か月初期費用60,000円60,000円次の募集で戻せる

負担の総額が4倍違います。しかも初期費用側は一度きりで、次の入居者には元の条件で出せます。閑散期の立て直しで先に触るべきなのが初期費用だというのは、この差から来ています。フリーレントは表面の家賃を落とさずに済むので、収益を利回りで見る場合にも影響が小さく収まります。

掲載情報を入れ替える。これは費用がほとんどかからない

ポータルサイトの掲載は、時間が経つほど順位も反響も落ちていきます。写真の差し替え、間取り図の書き直し、設備欄の追記、キャッチコピーの変更。この四つは実費ほぼゼロでできる打ち手です。特に写真は、撮り直すだけで問い合わせの入り方が変わることがあります。

同じ棟で2戸以上空いているときは、まったく同じ条件で並べないほうが動きます。片方は敷金礼金をゼロにし、もう片方は現状の条件のまま出す。反響が偏れば、それがそのまま答えになります。両方を同時に下げてしまうと、比較の材料が消えるうえに、決まったあとで「下げなくても決まったのでは」という疑問が残ります。

設備欄も見直す価値があります。宅配ボックス、独立洗面、追い焚き、インターネット無料。あるのに書かれていない設備が2つ3つ見つかることは、決して珍しくありません。検索の絞り込みで弾かれていた、というだけで反響がなかった部屋は確かに存在します。原因の切り分け方は空室が3か月埋まらないときに見直す6つのポイントに整理してあります。

閑散期は、待つ期間ではない

繁忙期を逃したら次の1月まで待つしかない、とよく言われます。ただ、現場の実感はむしろ逆で、閑散期は条件を試せる唯一の期間です。繁忙期は反響が多いぶん、条件を変えても何が効いたのか分かりません。反響が少ない時期に一つずつ変えるからこそ、どの条件が効いたのかが見えます。そこで見つかった答えが、そのまま翌年1月の募集条件になります。

もう一つ、閑散期にしかできないのが工事です。エアコンの入れ替え、水回りのパッキン交換、玄関ドアの塗り直し。繁忙期に案内が重なると職人の手配も取りにくく、着工から完了まで2週間かかる工事が1か月に延びることもあります。動きの少ない時期に済ませておくほうが、単価も日程も落ち着きます。

次の繁忙期から逆算する

時期やること
5月〜6月初期費用の条件を変更。掲載写真とコピーを差し替え
7月〜8月設備工事・クリーニングをこの時期に入れる
9月〜10月秋の異動需要に合わせて再掲載。反響数を記録する
11月〜12月翌年の募集条件を確定。図面を作り直す
1月〜3月条件は動かさない。案内後のフォローに集中する

この表で一番大事なのは最後の行です。繁忙期に入ってから条件をいじり始める物件は、たいてい前年の12月までの準備が終わっていません。

まとめ

初期費用を組み替える。掲載情報を入れ替える。工事を閑散期に寄せる。それでも動かないときに、初めて賃料を検討する。この順番を守るだけで、下げなくて済んだ家賃がいくつも出てきます。なお、こうした提案が管理会社から上がってこない場合、それ自体が別の課題です。判断の目安は管理会社の対応が遅い。改善を求めるか、変えるかの判断基準にまとめてあります。

さいたま市周辺で募集が止まっている物件をお持ちの方は、ご相談ください。管理をお任せいただくかどうかは別として、いまの条件のどこを動かせるかだけをお伝えすることもできます。

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