クッションフロアかフロアタイルか|大家が部屋ごとに決めるときの分かれ目

結論からお伝えすると、水がかかる場所はクッションフロア、人と家具が動く場所はフロアタイルという分け方が、賃貸の原状回復ではいちばん扱いやすい基準です。どちらが上等かではなく、その部屋で先に傷むのが「水」なのか「へこみ」なのかで決まります。この記事では、退去後の部屋に立ったときに、大家さん自身がどちらを選ぶかを決める順番を整理します。

退去した部屋の床は、何で傷んでいるのか

家具の出た6畳の洋室に入って床を見ると、ベッドの脚があった位置に丸いへこみが4か所、窓側に細い線が1本残っている。指で押しても戻らない。こういう部屋があります。

一方で、単身向けの部屋の洗面所は、洗濯機置き場の手前だけ色が濃く変わり、継ぎ目のところが少し波打っていることがあります。上から踏むと、かすかに沈む感触が返ってくる。

同じ「床が傷んだ」でも、原因はまったく別です。前者は荷重、後者は。どちらの傷み方をしているかを先に見分けることが、材料選びの出発点になります。傷の記録の残し方は退去立会いで確認すべき場所と、写真の撮り方にまとめています。

床材を決める前に見る4つのこと。何で傷んでいるかを見る、水がかかる場所か、家具と人が動く場所か、下地の状態を確かめる。

クッションフロアとフロアタイルは、何がどう違うのか

クッションフロア(CF)

  • 塩化ビニル系のシート。ロール状の材料を部屋の形に合わせて敷き込む
  • 裏に発泡層があり、踏むと少し沈む
  • 継ぎ目が少ないので、水が下地に回りにくい
  • やわらかいぶん、重い家具の脚あとが残りやすい
  • 張り替えるときは、原則その部屋を一度にはがして敷き直す

フロアタイル

  • 同じ塩ビ系でも、板状・タイル状の硬いピースを並べて貼る
  • 踏んでも沈まない。家具のへこみに強い
  • 木目や石目の質感が出やすく、写真での見え方が変わりやすい
  • ピースの継ぎ目が多いため、水が回る場所では目地から下地に入ることがある
  • 傷んだ部分だけ差し替えられる場合がある(同じ品番が手に入れば)

部屋ごとの分かれ目はどこにあるか

  • 洗面所・トイレ・キッチンの足元……水が前提の場所。継ぎ目の少ないクッションフロアが基本
  • 洋室・LDK……家具の荷重と見た目が効く場所。フロアタイルが向きやすい
  • 玄関からの動線……砂と靴の跡がつく。硬い材料のほうが持ちやすい
  • 単身向けのワンルーム……面積が小さく家具も少ない。クッションフロアで足りることが多い
  • ファミリー向け……在室時間が長く、家具も重い。フロアタイルの差が出やすい

「全部フロアタイルにすれば強い」とはなりません。水回りに目地の多い材料を入れると、表面がきれいなまま、見えない下地のほうが傷んでいくことがあります。

いくらかかるのか|「1平方メートル2,000円台」はもう出てきません

先に、検索して出てくる数字の話をします。「クッションフロアの張り替えは1平方メートルあたり2,000〜4,000円」「6畳で3〜5万円」と書いた記事が上位に並んでいますが、いまその金額では動きません。

関東で賃貸の原状回復を専門にしている内装会社が公表している料金表(2026年7月1日改定・税抜)を見ると、実際の水準はこうです。

  • クッションフロア貼り……1平方メートルあたり3,980円
  • フロアタイル貼り……1平方メートルあたり6,999円
  • カーペット張り替え……1平方メートルあたり6,190円

(出典:大家さんの内装屋 料金表・2026年7月1日改定・税抜)

そしてこれは業者どうしの取引に近い水準です。大家さんが個別に工事会社へ頼む場合は、ここから2〜3割ほど上を見ておいてください。6畳(約9.7平方メートル)に置き換えると、次のあたりになります。

  • クッションフロア……およそ4万6,000〜5万円(税抜)
  • フロアタイル……およそ8万2,000〜8万8,000円(税抜)

⚠️ ここまでの金額は、既存の床の上から重ねて貼れる場合のものです。はがして貼り替えるときは、処分代と下地処理が別に乗ります。床は、はがしてみるまで下が分からない工事だという点は押さえておいてください。

フロアタイルは「少し高い」ではありません

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

クッションフロアとフロアタイルの差は、1平方メートルあたり3,980円と6,999円。約1.8倍です。6畳ひと部屋で置き換えると、3万円台後半の差になります。

「せっかくだからフロアタイルにしておこう」と決められる金額ではありません。どの部屋をフロアタイルにするかは、1部屋ずつ選ぶ判断です。洋室とLDKは硬さが効くので回収しやすい。洗面所やトイレは、そもそも継ぎ目の少ないクッションフロアのほうが向いています。全室フロアタイルは、費用の面でも材料の面でも合理的ではありません。

見積りが動くのはどこか

面積だけでは決まりません。実際に金額が動くのは、次のところです。

  1. 下地の状態……既存をはがしたら合板が水を吸って柔らかかった、というときは下地の補修が別に立ちます
  2. はがすか、上から重ねるか……既存撤去と廃材の処分が入ると、工程が1つ増えます
  3. 部屋の形……柱の出入りや変形の多い部屋は、材料代より手間が増えます
  4. 面積の小ささ……1畳分だけでも養生と道具の搬入は同じだけかかります。単価で見ると割高になります
  5. 見切り材と敷居……材料の厚みが変わると、扉が擦る・段差ができることがあります

見積書に「床工事一式」としか書かれていないときは、材料の品番/㎡数/既存撤去の有無/下地補修の有無を分けて出してもらってください。見積書の読み方そのものはクロスの張替え費用の目安と、見積書の見方で整理しています。

張り替えないほうがよい場合もある

床は工事のなかでも「やった感」が出やすいぶん、順番を飛ばして先に手を付けがちです。投資として判断するなら、回収年数から考える視点も要ります(空室対策のリノベーションはどこまで投資すべきか)。

クッションフロアとフロアタイルの比較。クッションフロアは1平方メートル3,980円でシート状、継ぎ目が少なく水に強いが脚あとが残る。フロアタイルは1平方メートル6,999円で家具のへこみに強いが目地が多く水回りは注意。㎡単価で約1.8倍の差がある。

よくある質問

床を変えると、内見の反応は本当に変わるのか?

床だけを変えたから決まった、という因果は言い切れません。ただし床は募集写真のなかで面積をいちばん大きく占める部分で、色が変わると部屋全体の印象が動きます。壁を1面だけ変える手と組み合わせる考え方は白い壁と茶色い床で埋もれていないかにまとめました。

色はどう選べばよいか?

周辺の競合と同じ色を選ぶと、写真が並んだときに区別がつきません。とはいえ濃すぎる色はホコリと傷が目立ちます。建具(扉)の色と喧嘩しないことを先に決めると、外しにくくなります。

工期はどのくらい見ればよいか?

1部屋だけなら短く済むことが多い一方、下地の補修が入ると別日になります。空室期間そのものの考え方は退去から募集開始まで何日かかるかをご覧ください。

まとめ

床材は「良いほうを選ぶ」ものではなく、その部屋で先に負ける原因に合わせるものです。水の場所はクッションフロア、荷重の場所はフロアタイル。この2つを部屋ごとに割り振るだけで、次の退去のときの傷み方が変わります。

迷ったときは、退去のたびに撮った写真を並べて、同じ場所が同じように傷んでいないかを見てください。2回続けて同じ傷み方をしているなら、それは使い方ではなく材料の選び方の問題です。判断に迷う部屋があれば、材料の品番まで書いた見積りを2社から取って、内訳を並べて比べるところから始めてみてください。

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