辞めた管理人から「証明書がほしい」と言われたら、遅滞なく出します|労働基準法22条は請求されていない事項を書くことを禁じています
結論からお伝えすると、辞めた管理人から、働いた期間や賃金などの証明書を請求されたら、大家さん(使用者)は遅滞なく交付します(労働基準法22条1項)。ただし、証明書には本人が請求していない事項を書いてはいけません(同条3項)。現行の条文で確かめました(2026年10月7日時点)。

22条1項が挙げる、証明書の5つの事項
退職した労働者が証明書を請求できる事項は、条文に次の5つが書かれています。
- 使用期間
- 業務の種類
- その事業における地位
- 賃金
- 退職の事由(退職の事由が解雇の場合は、その理由を含む)
この5つのうち、本人がどれを請求するかを、本人が決めます。3項は、証明書に労働者の請求しない事項を記入してはならないと定めています。たとえば、本人が「働いた期間と業務の種類だけ」と言っているのに、辞めた理由や賃金の額まで書き込むのは、3項に反します。
書いてはいけないことは、3項のほかにもあります
4項は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、国籍・信条・社会的身分・労働組合運動に関する通信をすることや、証明書に秘密の記号を書き込むことを禁じています。他の事業者に「あの人は雇うな」と知らせる目印を証明書に入れるような場面が、これにあたると読めます。
| 条文 | 中身 | 違反したときの罰則 |
|---|---|---|
| 22条1項〜3項 | 請求された証明書を遅滞なく交付する。請求されていない事項は書かない | 120条1号:30万円以下の罰金 |
| 22条4項 | 第三者と謀って就業を妨げる通信・秘密の記号の記入をしない | 119条1号:6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
解雇を予告された人は、辞める日より前に「解雇の理由」を請求できます
22条2項は、20条1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間に、労働者が解雇の理由について証明書を請求したときも、遅滞なく交付することを求めています。ただし、予告の日以後に、労働者がその解雇以外の事由で退職した場合は、退職の日以後は交付しなくてよいとされています。解雇の予告そのものは管理人に辞めてもらうときは、30日前に伝えるか30日分の平均賃金を払いますにあります。
書くための材料は、どこにありますか?
労働者名簿と賃金台帳です。107条の労働者名簿には、施行規則53条で次の事項を書く決まりになっています。
- 性別・住所・雇入の年月日
- 従事する業務の種類(常時30人未満の事業では書かなくてよい)
- 退職の年月日とその事由(解雇の場合は理由を含む)
- 死亡の年月日とその原因
賃金は賃金台帳に各人別に書いてあります。名簿と台帳の備え方は人を雇った大家が備える帳簿は2つですに整理しています。109条は、名簿と台帳を5年間保存することを求めています(当分の間は3年間とする経過措置があります。143条1項)。
雇用保険の「離職票」と、同じものですか?
別の手続きです。22条の証明書は、労働基準法にもとづき、本人の請求を受けて出すものです。雇用保険の被保険者が離職したときは、事業主が、離職した日の翌日から10日以内に、資格喪失届を公共職業安定所に出します(雇用保険法施行規則7条1項)。離職票の交付を本人が希望しないときは、離職証明書を添えないことができますが、離職の日に59歳以上の被保険者は除かれます(同条3項)。どちらか一方を出したから、もう一方が要らなくなる、とは条文に書かれていません。週に何時間から雇用保険の対象になるかは大家が雇う管理人や清掃のパートは、週20時間から雇用保険の対象ですにあります。

「遅滞なく」は、何日のことですか?
条文に日数は書かれていません。請求を受けたら、時間をおかずに用意するのが、条文の言葉に沿った進め方です。
請求できる期間も、22条には書かれていません。115条は、賃金の請求権は5年間、それ以外の請求権は2年間行わないと時効で消えるとしています(賃金の請求権は、当分の間3年間とする経過措置があります。143条3項)。証明書の請求がこの2年のほうにあたるかは、条文だけでは読み切れませんが、辞めてからしばらくして請求されることは起こりえます。名簿と台帳は、辞めた人の分も、保存の期間は残しておきます。
都合の悪いことも書いておきます
- 家事使用人には、労働基準法が適用されません(116条2項)。賃貸経営のために雇う人があたるかは、条文だけでは判断できません。
- 退職の事由を、「自己都合」と書くか「会社都合」と書くかで本人と意見が分かれたときの決め方は、22条には書かれていません。
- 証明書の書式は、条文に決まりがありません。請求された事項だけを並べた文書になります。
- 本人の就職活動を妨げる意図がなくても、請求されていない評価や感想を書き足せば、3項の問題になりえます。
今日やることを1つだけ選ぶなら
管理人を雇っているなら、労働者名簿を開いて、退職の年月日と事由を書く欄があるかを確かめてください。名簿がまだなければ、作るところからになります。実際に請求を受けたときは、本人がどの事項を求めているかを書面かメールで確かめてから、その事項だけを書きます。労働条件を書面で示す項目はアパートの管理人を雇う大家が書面で示すことに、賃金の払い方は管理人の給料日は「毎月第4金曜日」では決められませんにあります。個別の判断は、労働基準監督署か社会保険労務士に確かめてください。
出典
- 労働基準法20条・22条・107条・109条・115条・116条・119条・120条・143条(e-Gov法令検索・2026年10月7日時点)
- 労働基準法施行規則53条(同)
- 雇用保険法施行規則7条(同)
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