管理人のミスで給料を減らせるのは「減給の制裁」だけです|労働基準法91条は1回の額を平均賃金の半日分までに限ります
結論からお伝えすると、管理人のミスを理由に、罰として給料を減らす(減給の制裁)なら、1回の額は平均賃金の1日分の半額まで、総額は1賃金支払期の賃金総額の10分の1までです(労働基準法91条)。「ミスをしたから今月は半分」のような減らし方は、この上限を超えます。現行の条文で確かめました(2026年10月7日時点)。

91条の上限は、2つあります
91条は、就業規則で労働者に減給の制裁を定める場合の上限を、次のように決めています。
| 上限 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 1回の額 | 平均賃金の1日分の半額を超えてはならない |
| 総額 | 一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない |
「一賃金支払期」は、給料を月に1回払っているなら、その1か月と読めます。条文は「一賃金支払期」としか書いていません。
「平均賃金」は、直近3か月の賃金を、暦の日数で割った額です
平均賃金は12条が決めています。原則は、算定すべき事由が起きた日より前の3か月に払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額です。ただし書で、次の最低保障が置かれています。賃金が、働いた日や時間で決まる場合(時給・日給など)は、賃金の総額をその期間中に働いた日数で割った金額の100分の60を、下回ってはなりません。
たとえば、時給1,200円で、週3日・1日4時間の清掃のパートさんを考えます(説明のための数字です)。
- 直近3か月は総日数が92日、働いた日が39日だったとします
- 賃金の総額は、1日4,800円×39日=187,200円です
- 原則の計算は、187,200円÷92日=約2,035円です
- 最低保障は、187,200円÷39日×60%=2,880円です
- 平均賃金は、12条1項の書き方で大きいほうの額になるので、2,880円です
- 1回の減給の上限は、その半額の1,440円です
- 月に13日働いて賃金が62,400円なら、総額の上限は、その10分の1の6,240円です
つまり、この人に「ミスを3回したから1万円引く」はできません。上の例では、1回の上限が1,440円、1か月の総額が6,240円で止まります。3か月の中に、業務上のけがで休んだ期間や試みの使用期間などがあるときは、その期間と賃金を計算から外します(12条3項)。端数の扱いなど、実際の計算は社会保険労務士に確かめてください。

「1回の額」は、何を数えるのですか?
条文は「一回の額」と書いています。1つのミスに対する減給を1回と数えるのか、1回の給料日の支払いを1回と数えるのかは、条文だけでは読み切れません。迷うときは、労働基準監督署に確かめてください。
就業規則がないときは、どうなりますか?
91条は、「就業規則で」減給の制裁を定める場合の条文です。就業規則を作って届け出る義務は、常時10人以上の労働者を使う事業場にあります(89条)。管理人を1人か2人しか雇っていない大家さんは、就業規則がないのが普通で、その整理は雇う人が10人未満なら、就業規則を作らなくても法律違反ではありませんにあります。
就業規則がなく、契約書に「ミスをしたら減給」と書くときに、91条の上限がどう働くかは、条文だけでは読み切れません。はっきりしているのは、24条1項が賃金の全額払いを原則にしていて、減給は賃金の一部を払わない形になることです。実行する前に、所轄の労働基準監督署に確かめてください。
破ると、どうなりますか?
120条1号は、91条に違反した者を、30万円以下の罰金に処すると定めています。就業規則を作る際には、労働者の過半数を代表する者などの意見を聴くことが90条1項で求められています。
都合の悪いことも書いておきます
- 家事使用人には、労働基準法が適用されません(116条2項)。賃貸経営のために雇う人があたるかは、条文だけでは判断できません。
- どんなミスが制裁の対象になってよいかは、91条に書かれていません。91条は、減らせる額の上限だけを定めた条文です。
- 遅刻した時間の分の賃金を払わない扱いと、罰として上乗せして引く扱いは、別のものとして考えます。後者が91条の対象です。ただし、どこまでが前者にあたるかは、条文だけでは読み切れません。
- 平均賃金の計算は、期間の取り方で金額が変わります。上の数字は説明用の例で、実際の管理人の額ではありません。
今日やることを1つだけ選ぶなら
管理人の給与明細と契約書を開いて、「ミス」「遅刻」「破損」を理由に引いている項目がないかを探してください。あれば、いつ、いくら引いたかを書き出します。24条1項の規定で賃金の一部を控除した場合は、その額を賃金台帳に書く決まりです(施行規則54条1項8号。人を雇った大家が備える帳簿は2つです)。給料日の決まりは管理人の給料日は「毎月第4金曜日」では決められませんに、台風の日に休ませたときの賃金は台風で管理人を休ませた日の賃金にあります。契約書に書く項目はアパートの管理人を雇う大家が書面で示すことにあります。個別の判断は、労働基準監督署か社会保険労務士に確かめてください。
出典
- 労働基準法12条・24条・89条・90条・91条・116条・120条(e-Gov法令検索・2026年10月7日時点)
- 労働基準法施行規則54条(同)
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