管理人の給料から「貯金」を預かるには、書面の協定と届出が要ります|労働基準法18条は貯金を強制すること自体を禁じています

結論からお伝えすると、管理人に「辞めるときに渡すから」と給料の一部を積み立てさせることは、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせるものとして禁じられています(労働基準法18条1項)。本人の委託を受けて貯金を預かる形にするなら、書面の協定、労働基準監督署への届出、規程、利子、返還の条件を満たす必要があります(同条2項から5項)。現行の条文で確かめました(2026年10月7日時点)。

管理人の貯金を預かるときの6つの条件。協定、届出、規程、利子、返還、報告。

1項が禁じているのは、貯金を「させる」ことです

18条1項は、使用者が、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、または貯蓄金を管理する契約をしてはならないと定めています。給料の一部を強制的に積み立て、会社が預かる形です。

  • 「入社の条件として、毎月5,000円を積み立てる」のような形が、この条文の対象です
  • 119条1号は、18条1項に違反した者を、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処すると定めています

本人の委託を受けて預かるなら、条件が6つあります

2項は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとするとき、つまり本人の希望で預かるときの条件を定めています。強制ではなく、本人の委託があることが出発点です。

条件 中身 根拠
書面の協定 事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、なければ過半数を代表する者との書面による協定 18条2項
届出 協定を行政官庁に届け出る。様式第1号で、所轄の労働基準監督署長へ 18条2項・施行規則6条
規程と周知 貯蓄金の管理に関する規程を定め、労働者に周知する 18条3項
利子 預金の受入れなら利子をつける。省令で定める下限の利率を下回れない 18条4項
返還 本人が返還を請求したら、遅滞なく返す 18条5項
管理状況の報告 毎年3月31日以前1年間の預金の管理の状況を、4月30日までに様式第24号で報告する 施行規則57条

協定に定める事項は、預金の受入れの場合に限り、施行規則5条の2が5つ挙げています。預金者の範囲、預金者1人当たりの預金額の限度、預金の利率と利子の計算方法、預金の受入れと払いもどしの手続、預金の保全の方法です。

利子は、どのくらいつけるのですか?

18条4項は、金融機関の預金の利率を考慮して厚生労働省令で定める利率を、下回らないことを求めています。その省令(利率を定める省令)は、下限利率の算出のしかたを定めたうえで、算出した下限利率が5厘(年0.5%)未満であるときは、5厘とすると書いています(4条)。実際の下限利率は、厚生労働大臣の告示で年度ごとに決まる仕組みです。いまの数字は、この記事では確かめていません。預かる前に、所轄の労働基準監督署に確かめてください。

返さなかったら、どうなりますか?

5項に違反して返さず、管理を続けることが労働者の利益を著しく害すると認められるときは、行政官庁が管理の中止を命じることができます(6項)。中止を命じられた使用者は、遅滞なく、預かっていた貯蓄金を返さなければなりません(7項)。120条1号は、18条7項に違反した者を、30万円以下の罰金に処すると定めています。

条文で確かめた範囲では、18条2項から5項の違反に直接かかる罰則は、119条・120条の列挙には出てきません。罰則がないことが、やってよいことを意味するわけではありません。

24条の「控除の協定」と、同じものですか?

別の条文です。24条1項ただし書の協定は、賃金の一部を引いて払うためのものです(家賃を引く例は管理人の給与から家賃を引く大家は、書面の労使協定が要ります)。18条2項の協定は、労働者の貯蓄金を預かるためのものです。給料から天引きして貯金に回す形が、24条の控除にもあたるかは、条文だけでは読み切れません。協定を結ぶ前に、所轄の労働基準監督署に確かめてください。

24条の控除の協定と18条の貯蓄金の協定の違いの比較。

都合の悪いことも書いておきます

  • 家事使用人には、労働基準法が適用されません(116条2項)。賃貸経営のために雇う人があたるかは、条文だけでは判断できません。
  • 協定の相手になる「労働者の過半数を代表する者」は、施行規則6条の2で、監督または管理の地位にある者でないこと、投票・挙手などで選ばれた者で、使用者の意向で選ばれたものでないことが求められています。管理人が1人だけの事業場で誰を選ぶかは、条文だけでは読み切れません。
  • 通帳や印鑑を預かるだけのときに、18条2項の「貯蓄金を管理」にあたるかは、条文だけでは読み切れません。
  • 本人から「預かってほしい」と言われても、協定と届出なしに預かってよいことにはなりません。2項は、本人の委託があることと、協定・届出を並べて求めています。

今日やることを1つだけ選ぶなら

管理人との契約書と給与明細を開いて、「積立」「預り金」「保管」「貯金」と書いてある項目がないかを探してください。見つかったら、本人の希望で預かっているのか、条件になっているのかを確かめます。条件になっているなら、18条1項の対象と読めます。契約書に書く項目はアパートの管理人を雇う大家が書面で示すことに、就業規則の作成は雇う人が10人未満なら、就業規則を作らなくても法律違反ではありませんにあります。給料日の決まりは管理人の給料日は「毎月第4金曜日」では決められませんに、名簿と台帳の備え方は人を雇った大家が備える帳簿は2つですにあります。個別の判断は、労働基準監督署か社会保険労務士に確かめてください。

出典

  • 労働基準法18条・24条・116条・119条・120条(e-Gov法令検索・2026年10月7日時点)
  • 労働基準法施行規則5条の2・6条・6条の2・57条(同)
  • 労働基準法第十八条第四項の規定に基づき使用者が労働者の預金を受け入れる場合の利率を定める省令4条(同)

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