さいたま市でも、川によって届く知らせが違います|大家が見る「氾濫危険警報」と「氾濫危険情報」の一字違い

夜の11時すぎ、スマートフォンが鳴ります。画面には市からの避難情報ではなく、川の名前と「レベル4氾濫危険情報」の文字。同じ時間、別のアパートの入居者のところには「レベル4氾濫危険警報」が届いています。物件はどちらもさいたま市内で、直線距離にすれば数キロしか離れていません。

結論からお伝えすると、この「警報」と「情報」の一字は書き間違いではありません。その川に水位の予測があるかないかの違いです。予測がある川には「警報」、いま何メートルに達したという実測だけの川には「情報」が付きます。自分の物件のそばを流れる川がどちらなのかは、水が出る前に一度調べておかないと、当日はもう調べられません。

川の区分ごとに届く知らせの違いを示した図。洪水予報河川は約400で予測あり、水位周知河川は約1800で実測のみ、その他河川は約18000、大雨の知らせは市町村ごと。

川は4つに分かれていて、届く知らせが違います

国土交通省水管理・国土保全局と気象庁が令和7年12月に出し、令和8年4月に更新した資料「河川氾濫・大雨に関する情報の改善」に、区分と河川数がそのまま表で載っています。

  • 洪水予報河川:約400河川。発表は河川事務所または都道府県と気象台。発表指標は水位(実測・予測)
  • 水位周知河川:約1,800河川。発表は河川事務所または都道府県。発表指標は水位(実測)
  • その他河川:約18,000河川。発表指標は「確認情報等」
  • 大雨に関する情報。気象台が市町村ごとに出すもので、川の単位ではありません

河川数を並べると、洪水予報河川は全体のごく一部だと分かります。約400と約18,000では45倍の開きがあります。

「警報」と「情報」の一字で、予測があるかないかが分かれます

同じ警戒レベル4でも、名前が違います。

  • 洪水予報河川 → レベル4氾濫危険警報
  • 水位周知河川 → レベル4氾濫危険情報
  • その他河川 → 河川ごとのレベル4がなく、レベル4大雨危険警報を参照する

水防法の条文を読むと、この差がどこから来ているかが分かります。洪水予報河川について定めた第10条第2項は、国土交通大臣が気象庁長官と共同して「洪水のおそれがあると認められるときは水位又は流量を」示して周知すると書いています。これから上がるという予測の話です。

いっぽう水位周知河川について定めた第13条第2項は、都道府県知事が洪水特別警戒水位を定め、「当該河川の水位がこれに達したときは、その旨を」示して周知すると書いています。達したという事実の話で、予測は入っていません。

つまり水位周知河川では、水位が上がりはじめた段階で先を教えてくれる仕組みが、法律の建て付けとしてありません。届いた時点ですでに危険水位です。

水位周知河川と洪水予報河川を左右に比べた図。左は約1800河川で実測だけ、レベル4は氾濫危険情報。右は約400河川で予測が加わり、レベル4は氾濫危険警報。

さいたま市を流れる川は、どちらなのですか?

埼玉県が公表している「洪水予報河川・水位周知河川の指定」の一覧表(2025年5月30日掲載)で確かめられます。さいたま市が関係する川だけを抜くと、こう分かれています。

洪水予報河川(予測が出る側)

  • 国が指定:利根川上流部、江戸川、荒川、入間川ほか
  • 県が指定:芝川・新芝川(埼玉県・東京都と熊谷地方気象台・気象庁予報部の共同発表)、綾瀬川中流部(一の橋区間)、元荒川、新方川、新河岸川

水位周知河川(実測だけの側)

  • 鴻沼川(さいたま市、川口市、蕨市、戸田市)
  • 鴨川(さいたま市、川口市、上尾市、蕨市、戸田市)

芝川と鴻沼川は、どちらもさいたま市内を流れています。それでも届く知らせの種類が違います。物件が鴻沼川や鴨川の近くにあるなら、予測は来ない前提で段取りを組むことになります。

なお県の一覧には、令和7年3月25日に中川・元荒川・新方川・大落古利根川が、令和7年5月29日に入間川が、それぞれ水防法に基づく洪水予報河川に指定されたと書かれています。区分は動きます。数年前に調べた記憶のままにしないほうが安全です。

2026年5月29日から、知らせの名前そのものが変わりました

気象業務法及び水防法の一部を改正する法律(令和7年法律第86号)が2026年5月29日に施行されています。e-Gov法令検索の法令APIで時点を指定すると、水防法第11条の3は2026年5月28日時点では存在せず、5月29日時点から条文が返ります。

この改正にあわせて、防災気象情報の名前に警戒レベルの数字が入りました。気象庁のページでは現在、レベル5特別警報、レベル4危険警報、レベル3警報、レベル2注意報という並びで説明されています。

大家として押さえておきたい変更が2つあります。

  1. 「洪水警報」がなくなりました。これまで気象台が市町村ごとに出していた洪水警報・注意報の発表は行わず、大雨に関する情報へ統合されました。ニュースで「洪水警報が出ています」と聞かなくなったのは、放送局の言い換えではなく制度が変わったためです
  2. 大雨警報・注意報に、警戒レベル相当の位置づけが付きました。改正前の表には「大雨警報・注意報は、警戒レベル相当情報としての位置づけがない」と明記されています。同じ「大雨警報」という言葉でも、去年までと意味が違います

市からの避難指示を待つと、なぜ遅いのか

災害対策基本法第60条第1項は、市町村長は避難のための立退きを「指示することができる」と書いています。できる、という書き方です。出す義務が条文にあるわけではありません。

気象庁も「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」のページで、多くの場合、防災気象情報は自治体が発令する避難指示等よりも先に発表されると書き、避難指示が発令されていなくてもキキクルや河川の水位情報を用いて自ら判断するよう求めています。

伝わり方も、思っているほど強い仕組みではありません。気象業務法第15条は、気象庁が警報を出したら警察庁・消防庁・都道府県・NTT東日本・NTT西日本・NHKに通知しなければならないと定めています。ところが、そこから先の第2項(関係市町村長への通知)と第3項(市町村長から住民への周知)は、どちらも「努めなければならない」です。義務として「しなければならない」と書かれているのは、第6項のNHKの放送だけです。

入居者に「市から連絡が来るはずだ」と伝えるのは、法律の作りに合っていません。

大家が今日のうちにできること

  1. 自分の物件から最も近い川の名前を1つ書き出し、県の一覧表でどの区分かを確かめる。洪水予報河川なら「警報」、水位周知河川なら「情報」が届きます
  2. 水位周知河川だった場合は、雨量側の情報も見る段取りにしておく。川の予測が来ないぶん、市町村ごとのレベル4大雨危険警報とキキクルが判断材料になります
  3. 入居者へ配る紙に、川の名前と区分を書き添える。「大雨のときは気をつけてください」より、「この物件は◯◯川の水位周知区間にあり、予測は出ません」のほうが行動につながります

区域と図面の読み方は さいたま市の重説で示す水の図面は、2026年4月23日から1枚増えました|大家が読む洪水と内水 に、建物側の備えは 止水板を付けるか大家が決める4つの順番|同じ埼玉でも補助の上限は40万円と100万円に分かれます にまとめています。雨が近づいてからの動き方は 台風が来る前と後、オーナーが動く順番|築古アパートで先に見る5か所と入居者への連絡 が参考になります。

出典

  • 水防法(昭和24年法律第193号)第10条、第11条、第13条、第13条の2、第15条/気象業務法(昭和27年法律第165号)第13条、第14条の2、第15条、第23条/災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第60条(e-Gov法令検索・2026年9月12日時点)
  • 国土交通省水管理・国土保全局、気象庁「河川氾濫・大雨に関する情報の改善」令和7年12月(令和8年4月更新)
  • 気象庁「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」
  • 埼玉県県土整備部河川砂防課「洪水予報河川・水位周知河川の指定」(2025年5月30日掲載)および同ページ掲載の一覧表

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