内見の希望が土日に偏るとき大家が決める3つ|賃貸の申込みにクーリング・オフはありません

土曜の午後に3件、日曜の午前に2件。平日はゼロ。管理会社から届く内見の予定表が、先月からこの形でしか来ません。せっかくなら1日にまとめて、部屋の前に机を出して、その場で申し込みまで受けてもらったほうが早いのではないか——そう考えるところまでは、たいていの大家さんが同じです。

結論からお伝えすると、土日にまとめること自体は問題ありません。決めておくのは3つです。①鍵をどう渡すか ②現地で申込みまで受けるのか ③申込みが重なったときの順番。このうち②だけは、大家さんの段取りではなく法律の話になります。宅地建物取引業法は、契約や申込みを受ける場所に、事務所と同じ扱いを求めているからです。

土日の内見で先に決める5点。鍵をどう渡すか、現地で申込みまで受けるか、申込みが重なったときの順番、届出は業務開始の10日前まで、賃貸に撤回の8日間はない。

「案内所の届出は分譲の話」ではありません

宅地建物取引業法第31条の3は、専任の宅地建物取引士を置くべき場所を「その事務所その他国土交通省令で定める場所」と書いています。その国土交通省令が、同法施行規則第15条の5の2です。柱書を原文で見ると、こうなっています。

法第三十一条の三第一項の国土交通省令で定める場所は、次に掲げるもので、宅地若しくは建物の売買若しくは交換の契約(予約を含む。以下この項において同じ。)若しくは宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介の契約を締結し、又はこれらの契約の申込みを受けるものとする。

「貸借の代理若しくは媒介」が、はっきり書かれています。案内所の話は分譲マンションのモデルルームのことだと思われがちですが、条文はそう限定していません。続く各号を並べると、どこが賃貸に関係するかが見えます。

場所 賃貸で当たるか
1号 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外のもの 当たり得ます
2号 10区画以上・10戸以上の一団の宅地建物の分譲の案内所 分譲限定です
3号 他業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理・媒介の案内所 分譲限定です
4号 業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場所 当たり得ます

2号と3号は「一団の宅地建物の分譲」と書いてあるので売買の話です。ところが1号と4号には、その限定がありません。土日に「現地見学会」「オープンルーム」として催しを組み、そこで媒介契約や申込みまで受けるなら、4号の読み方が問題になります。

届出は「業務を開始する日の10日前まで」です

この場所に当たると、宅地建物取引業者の側に3つの義務が乗ります。

  1. 専任の宅地建物取引士を1人以上置く(施行規則第15条の5の3)。事務所は「業務に従事する者の数に対する割合が5分の1以上」ですが、案内所等は人数にかかわらず1人以上です
  2. あらかじめ届け出る(法第50条第2項)。所在地・業務内容・業務を行う期間・専任の宅地建物取引士の氏名を、免許権者と、その場所を管轄する都道府県知事に届けます
  3. 標識を掲げる(法第50条第1項)

届出の期限は施行規則第19条第3項にあります。「その業務を開始する日の十日前までに」と書かれています。土曜に見学会をやると決めたのが火曜日だとすると、その週の土曜には間に合いません。

ここは大家さんが手続きをする話ではなく、仲介会社の側の義務です。ただ、日程を決めるのは大家さんです。「今週末に現地でやりましょう」と言ったときに担当者が渋ったら、段取りが悪いのではなく、この10日を数えている可能性があります。

では、部屋の前に机を出すだけでも届出が要りますか?

そこを分けているのが、1号の「継続的に業務を行うことができる施設を有する場所」という言葉です。屋外に机とパラソルを出しただけの状態は、施設とは呼びにくい。空室の1室を使う、集会室を借りる、といった形になると、施設の側に寄っていきます。

そして、もう1つ大事な線があります。その場で契約や申込みを受けるかどうかです。第15条の5の2の柱書は「契約を締結し、又はこれらの契約の申込みを受けるもの」と限定しています。案内だけをして、申込みは後日事務所で受けるなら、この場所には当たりません。ただしその場合でも、施行規則第19条第1項が別に標識の掲示を求めています。標識は「申込みを受けない場所」にも必要です。様式が違うだけで、掲げること自体は変わりません。

大家さんが自分で鍵を開けて見せる場合は、また話が別です。自分の物件を自分で貸すのに免許は要りませんし、この条文も宅地建物取引業者に向けられたものです。整理は入居希望者だけで空室を見てもらうときの準備|大家がセルフ内見の前に決める4つにまとめました。

賃貸の申込みに、クーリング・オフはありません

土日に集めて、その場で申し込んでもらう。翌日「やっぱりやめます」と連絡が入る。このとき撤回できるのかという話になりますが、宅地建物取引業法のクーリング・オフは賃貸には及びません。第37条の2第1項の書き出しは、こうです。

宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所以外の場所において…

「自ら売主となる売買契約」と限定されています。8日間という期間も、事務所以外の場所という条件も、すべて売買の話です。賃貸の媒介には、この制度そのものがありません。

では賃貸の申込みは撤回できないのかというと、そうではありません。入居申込みは契約そのものではないため、契約が成立する前であれば撤回できるのが原則です。撤回に伴う預り金の返還を拒むことは、宅地建物取引業法第47条の2第3項と施行規則第16条の11第2号で禁じられています。日数の数え方は入居申込から契約まで何日かかるのか|大家が待たされる日数は3か所でしか動かないに書きました。

つまり、土日にその場で申込みを取っても、法律が撤回を8日間止めてくれるわけではありません。止まるのは、審査が進み、契約が成立してからです。

案内だけをする場所と、申込みまで受ける場所の比較。前者は標識の掲示のみで専任の宅地建物取引士も届出も不要。後者は標識に加え専任の宅地建物取引士1人以上と、業務開始の10日前までの届出が必要。

土日に決めるために、平日のうちに終わらせておくこと

内見が土日に偏るのは、働いている人が動ける日がそこしかないからで、これは動かしようがありません。動かせるのは、土日にできることを増やしておく側です。

  • 鍵の置き場所を決めておく……当日に管理会社の担当者が事務所へ取りに戻る動線が入ると、その日の案内本数が減ります
  • 審査の条件を先に文字にしておく……その場で「保証会社の審査次第です」としか言えないと、翌週まで決まりません
  • 設備の不具合を潰しておく……水が出ない、照明がない、といった状態は、土日の限られた時間では取り返せません
  • 申込書の受け渡し方法を決めておく……紙で預かるのか、後日事務所で受けるのか。ここが上の届出の話につながります

鍵の本数と持ち出しの記録は大家が持つ鍵は何本か|スペアの記録と、自分の物件に入れない理由、審査の基準の決め方は大家が入居審査をどこまで厳しくするか|空室が延びる基準と、緩めてはいけない一線にまとめています。

都合の悪いことも書いておきます

ここまで読んで「では現地で申込みを受けるのはやめよう」と考えたなら、それは半分だけ正解です。手続きが要るのは、催しとして組み、その場で申込みまで受ける場合です。ふつうの内見案内を土日に5件入れるだけなら、この条文の出番はありません。

それから、内見が土日に集まっていること自体は悪い状態ではありません。問題は、内見が入っているのに決まらない場合です。そのときに見る場所は条文ではなく部屋のほうで、内見はあるのに決まらないときに見る場所に整理しました。そもそも内見の申し込みが入っていないなら、原因は募集の入口にあります。内見の申し込みが入らないのはなぜか|ポータルサイトで最初に落ちている3か所募集条件の「相談可」はどこまで書けるか|大家が見分ける2種類の欄をご覧ください。

今日できること

次の土日に内見が入っている方は、管理会社に1つだけ聞いてください。「当日、現地で申込書まで受け取りますか」。受け取るという答えなら、その場所の扱いと標識の話を担当者が把握しているかどうかも、あわせて確認できます。受け取らないという答えなら、申込書がいつどこで動くのかを聞いておくと、決まるまでの日数が読めるようになります。

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