給湯器を屋外に置くのは、法律の決まりではありません|大家が確かめるボンベの2メートルと排気筒
外階段の下、1畳ほどの空きにガス給湯器が壁付けで並び、その足元に20キロのボンベが2本。すぐ隣には、隣室のエアコン室外機が置かれています。給湯器を交換したい、ついでに室外機の位置も直したいと相談したとき、業者から返ってきたのは「ボンベの2メートルだけ気をつけてください」の一言でした。何の2メートルなのか、そのときは分かりませんでした。
結論からお伝えすると、給湯器を屋外に置くことを義務づけた条文はありません。法令が書いているのは「屋内に置くなら排気筒を付けろ」であって、屋外に出すのは慣習と工事のしやすさによるものです。いっぽうでLPガスのボンベのほうには、置き場所の条件が明確に書かれています。大家が確かめるべき条件は、給湯器本体ではなくボンベ側と排気筒側にあります。

ボンベの置き場所には、条文があります
液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則(平成9年通商産業省令第11号)第18条第1号は、貯蔵能力1,000キログラム未満の貯蔵設備について次のように定めています(内容積20リットル以上の容器の場合)。
- イ 容器を置く位置から2メートル以内にある火気をさえぎる措置を講じ、かつ屋外に置くこと。屋外に置くことが著しく困難な場合に限り、ガスが屋内に滞留せず火気に触れない措置を講じたうえで屋内に置ける
- ロ 湿気、水滴等による腐食を防止する措置を講ずること
- ハ 常に温度40度以下に保つこと
- ニ 転落・転倒等による衝撃とバルブ等の損傷を防止する措置を講ずるとともに、浸水のおそれのある地域においては、容器が浸水によって流されることを防止する措置を講ずること
業者が言った「2メートル」はイのことです。火気から2メートルではなく、2メートル以内に火気があるならさえぎれ、という書き方である点に注意してください。壁やへいで間を切れば条件は満たせます。
大家として効いてくるのは、むしろハとニです。ハの「40度以下」は、夏の西日が当たる位置に置いたボンベの話です。ニの浸水は、半地下や1階の裏手にボンベがある物件で、雨のたびに問われます。容器が流されないよう固定されているかは、見れば分かります。
給湯器を屋内に置くと、何が変わるのですか?
同じ施行規則の第44条第1号ヨは、消費設備の技術上の基準として、屋内に設置する密閉式以外の燃焼器に排気筒を設けることを求めています。対象はこう書き分けられています。
- ガス湯沸器(暖房兼用を含む)。ガス瞬間湯沸器は消費量12キロワット超、その他のものは7キロワット超
- ガスバーナー付きふろがま、およびガスバーナーを使用できる構造のふろがま
12キロワットと7キロワットという境目が条文にあります。小さな湯沸器まで一律に排気筒が要るわけではありません。
続く第44条第1号タは、その排気筒の条件を並べています。実務で効くのは次の3つです。
- 排気筒の先端は、屋外に出ていること
- 先端は、障害物または外気の流れによって排気が妨げられない位置にあること
- 先端は、鳥・落葉・雨水その他の異物の侵入や、風雨等の圧力で排気が妨げられるおそれのない構造であること
2番目の「障害物によって排気が妨げられない位置」が、置き場所を考えるときの実質的な線になります。給湯器の前に物置を寄せる、目隠しのルーバーで囲う、隣接して室外機を置いて風を吹きつける。いずれも条文の言葉に当たり得ます。この条文は屋内設置の燃焼器についてのものですが、排気の妨げという考え方は、屋外に付けた給湯器の前をふさいだときにも同じ問題を起こします。
エアコンの室外機には、置き場所の法令がありません
ここが、給湯器といちばん違うところです。住宅用エアコンの室外機について、国の法令で置き場所を定めたものは見当たりません。私が確認した範囲では、位置を縛るのは次の3つです。
1. メーカーの据付説明書
壁からの離隔、吹き出し前方の空き、上部の空きが機種ごとに決まっています。守らないと能力が落ち、保証の対象からも外れます。法令ではありませんが、トラブルになったときに最初に見られる紙です。
2. 避難のための通り道をふさがないこと
バルコニーの隔て板の前や避難ハッチの上に室外機を置くと、非常時に逃げ道が消えます。ベランダの扱いと避難設備の位置づけは アパートのベランダは誰の場所か|築古アパートのオーナーが物を置かせない2か所と手すりの1.1メートル に整理されています。
3. 音と風のゆくえ
室外機の運転音や排気は、法令の基準ではなく、民事の話として出てきます。隣室の窓の真正面、寝室の枕元の外側、隣地との境界すれすれ。どこに向けたかは、あとから写真では分かりません。設置のときに位置と向きを記録しておくと、苦情が出たときに事実から話せます。

ボンベ・給湯器・室外機が1か所に集まる理由
築古のアパートで、この3つが同じ隅にまとまっているのは偶然ではありません。配管とドレンと電源が短くて済むからです。工事は安く、早く終わります。
ただしその結果として、火気から2メートルの条件、排気を妨げない条件、室外機の吹き出しの空きが、1か所で同時に問われる状態になります。1台だけ交換するときに位置をずらすと、残りの2つの条件が崩れることがあります。
交換の見積りを取るときは、その1台の値段だけでなく、「動かした結果、隣の機器の条件はどうなるか」を先に聞いてください。聞かれた業者は、たいてい現地でもう一度測ります。
大家が今日のうちにできること
- ボンベの足元を1か所だけ見る。固定のチェーンかベルトが掛かっているか、そして夏の午後に日が直接当たる位置かどうか
- 給湯器の前に、あとから置かれた物がないか確かめる。入居者の物置、植木鉢、自転車。排気の行き先をふさいでいるものは、写真を撮って移動を依頼する
- 室外機の据付説明書を、物件ごとのファイルに1部入れておく。型番が分かれば、メーカーのサイトから取れます
設備そのものを足す順番は 単身向けの部屋に大家が設備を足す順番|ガス会社に費用を持たせる形は省令で名指しされました に、交換の時期の決め方は エアコン・給湯器はいつ替えるか|壊れる前と後の費用差 にまとめています。
出典
- 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則(平成9年通商産業省令第11号)第18条第1号、第44条第1号(e-Gov法令検索・2026年9月12日時点)
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