大家が埼玉でワンルームを建てる前に|川口市は条例、さいたま市は指導基準です
同じ図面で、2つの市に持っていきました。1住戸24平方メートル、16戸のワンルームです。さいたま市の窓口では「指導基準の対象になるので管理等の計画を出してください」と言われました。川口市の窓口では「条例の対象です。事前協議が終わるまで確認申請に進めません」と言われました。図面は同じで、止まったのは川口市だけでした。
結論からお伝えすると、埼玉県内のワンルーム規制は、3つの層に分かれています。川口市は条例(法的な義務と公表がある)、さいたま市は指導基準(行政指導)、その他の多くの地域は埼玉県の指導指針です。そして対象になる住戸の面積の線が、40平方メートル未満・25平方メートル以下・25平方メートル未満で、それぞれ違います。

面積の線が、市ごとに違います
「ワンルーム規制は25平方メートルくらいの部屋の話」という理解が、いちばん取り違えやすいところです。実際の数字を並べます。
| 川口市(条例) | 40平方メートル未満の住戸を15戸以上有する共同住宅または長屋。間取りの種類は問わない |
| さいたま市(指導基準) | 主たる居室数が1である住戸で、床面積の合計が25平方メートル以下の住戸が15戸以上の共同住宅で、階数が2以上のもの |
| 埼玉県(指導指針) | 床面積(ベランダ、バルコニー、パイプシャフト等を除く)が25平方メートル未満の住戸または住室を15以上有する建築物 |
川口市の40平方メートル未満は、他の2つと性格が違います。1LDKや2Kの30平方メートル台が、まるごと対象に入ります。しかも「間取りの種類は問いません」と手引きに明記されているので、ワンルームでなくても入ります。川口市で30平方メートル台の部屋を16戸で計画した瞬間に、条例の手続が立ち上がる、ということです。
さいたま市の「25平方メートル以下」と埼玉県の「25平方メートル未満」も、24.9平方メートルなら両方に入りますが、ちょうど25.0平方メートルだとさいたま市は入り、県の指針は外れます。0.1平方メートルで扱いが分かれる線が、県内に2本走っています。
川口市の条例は、何を義務にしているのか
川口市ワンルームマンション等の建築及び管理に関する条例(平成28年6月29日条例第46号)は、義務と努力義務を分けて書いています。手引きから、建築のときのものを拾います。
- 住戸の専用面積を25平方メートル以上とすること……努力義務
- ワンルーム住戸1戸につき1台以上の駐輪施設の設置……義務
- 廃棄物保管場所の保管方法の措置……義務
- 管理計画(管理者の配置日時、廃棄物の排出方法、駐輪施設の使用方法など)の作成と、所有者への引継ぎ……義務
- 事前協議、標識の設置と届出、隣接住民等への説明と報告、意見への回答と報告……義務
- ワンルーム住戸が30以上の場合の管理人室の設置……義務
- 宅配ボックスの設置……義務(令和6年4月1日から)
面積が努力義務で、駐輪と宅配ボックスが義務です。「25平方メートル以上にしないと建てられない」ではありません。ここを逆に覚えていると、計画の自由度を自分で狭めます。
すでに建っている物件の所有者にも義務があります
これが大家にとって本題です。条例の義務は建築のときで終わりません。第23条第1項は、ワンルームマンション等の所有者等に対し、建築物の名称、所有者等の氏名または名称、住所、電話番号を記載した表示板(連絡先表示板)の設置を義務づけています。そして第2項が期限を切っています。
ワンルームマンション等の所有者等は、前項の規定により連絡先表示板を設置したときは、当該連絡先表示板を設置した日から起算して七日(市の休日を除く。)以内に、規則で定める報告書により市長に報告しなければならない。(川口市ワンルームマンション等の建築及び管理に関する条例第23条第2項)
手引きは、既存の物件についても整理しています。平成29年1月1日以前に存するワンルーム住戸を含む建築物でも、ワンルーム住戸数が15戸以上なら、連絡先表示板の設置と、変更したときの報告が義務です。1戸から14戸の建物は努力義務です。
管理の期間についても、15戸以上なら駐輪施設・廃棄物保管場所・宅配ボックスと管理計画を維持または遵守する義務、入居者に管理計画を説明する義務、そして所有権を移転するときに管理計画を引き継ぐ義務があります。30戸以上なら管理人室の維持管理義務が加わります。
従わないとどうなるのか
条例第32条が勧告、第33条が命令、第34条が公表です。第34条第1項は、命令を受けた者が正当な理由なくこれに従わないときに公表できるとし、第2項は、事前協議・標識の設置・報告・説明・回答をせずに検査済証の交付を受けたときにも公表できるとしています。
公表の中身は規則第23条第3項に4つ挙がっています。ワンルームマンション等の名称、敷地の場所、公表に係る者の住所及び氏名(法人なら所在地・名称・代表者の氏名)、公表をするに至った事由です。第4項で、掲示場への掲示、インターネットの利用その他の方法で行うとされています。
第3項で、公表の前に理由を通知し、意見を述べて証拠を提示する機会を与えることが義務づけられていますので、黙って出ることはありません。それでも、名前が出る仕組みがある点が、指導基準との決定的な差です。

さいたま市と埼玉県は、指導です
さいたま市のワンルーム形式集合住宅の建築に関する指導基準(令和5年4月1日施行)は、住戸等の床面積を16平方メートル以上とすること、駐輪場を住戸あたり1台を敷地内に確保すること、ゴミ置場を原則として敷地内に設けること、住戸等が30戸以上の建築物には管理人室を設けることを求めています。建築確認申請の2週間前から工事完了までの標識設置もあります。
埼玉県小規模住戸形式集合住宅の建築に関する指導指針は、1住戸16平方メートル以上、管理人室の設置(小規模住戸が50未満の場合または建築主等が近隣に居住する等の場合は設置しないことができる)、隣地境界線から外壁までを原則50センチメートル以上離すこと、小規模住戸が50以上なら管理人の常駐、緊急の際の連絡先を玄関ホール等に表示することを挙げています。
どちらも要請であって、従わなかったときの公表の規定はありません。ただし、窓口で計画が止まることはあります。さいたま市の場合、建築計画を市長に提出・報告することが基準に書かれているためです。「義務ではないから出さなくてよい」と考えると、確認申請の前で足止めされます。
都合の悪いことも書いておきます
川口市の手続は段数が多く、手引きのフローでは事前協議、結果通知、標識設置、設置報告、住民説明、説明状況報告、報告済証交付、意見のとりまとめ、意見対応状況報告、報告済証交付の10段です。標識設置から14日を経過し、かつ説明が完了してから次へ進む箇所があり、意見対応状況報告済証の交付を受けてはじめて確認申請ができます。着工の予定を先に決めると、ここで崩れます。
そして、建てたあとに条例が変わることもあります。宅配ボックスの義務は令和6年4月1日からで、それ以前に建てた建物には建築のときの義務としては及びません。手引きは「最終校正 令和8年3月」と書かれていますので、計画に入る前に現在の版を確認してください。市の制度は改正が続きます。
個別の敷地で条例と指導基準のどちらが効くか、面積の算定にバルコニーを含めるかは、市の担当課の判断です。ここに書いたのは線の位置までで、建てられるかどうかの判定はしていません。設計者と市の窓口に確認してください。
今日できること
持っている物件の1住戸あたりの床面積を出して、40平方メートル未満の住戸が何戸あるか数えてください。川口市に15戸以上の物件がある方は、連絡先表示板が付いているかを現地で見ます。付いていなければ、それは新築の話ではなく、いまの所有者の義務です。
さいたま市で建てる予定がある方は、高さの側の手続も同時に立ちます。近隣説明が要る高さの線はさいたま市で近隣説明が要るのは高さ10メートルから、緑化の協議は10月は都市緑化月間に書いています。
出典
川口市ワンルームマンション等の建築及び管理に関する条例(平成28年6月29日条例第46号)第23条、第32条、第33条、第34条、同条例施行規則第23条、および川口市「川口市ワンルームマンション等の建築及び管理に関する条例の手引き」(最終校正 令和8年3月)。さいたま市「ワンルーム形式集合住宅の建築に関する指導基準」(令和5年4月1日施行)。埼玉県「埼玉県小規模住戸形式集合住宅の建築に関する指導指針」。いずれも2026年9月22日に各公式サイトで閲覧。
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