入居率と稼働率は別の数字です|管理会社の報告書にどちらも載っていない理由

管理会社から届いた1枚に「入居率95.5パーセント」と書かれていました。全22戸の建物です。22戸で95.5パーセントなら、空いているのは1戸です。ところが送金明細を見ると、家賃が入っていない部屋が3つありました。1つは5月に退去して募集中、1つは4月から滞納、1つは家賃を半額に下げて入っている部屋でした。「入居率」は、この3つのうち1つだけを空室として数えていました。

結論からお伝えすると、入居率と稼働率は別の数字で、どちらも法令が求める報告事項に入っていません。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則第40条第1項が管理業務報告書に載せるべきものとして挙げているのは3つだけで、入居率も稼働率も、空室数も、そこには書かれていません。だから管理会社から来る「入居率」は、各社が自分の定義で作っている数字です。

管理業務報告書に法令が求めている事項。報告の対象となる期間、管理業務の実施状況、入居者の苦情と対応の3つだけで、頻度は1年を超えない期間ごと。入居率は入っていないことを示した図

法令が求める報告は、3つだけです

賃貸住宅管理業法第20条は「賃貸住宅管理業者は、管理業務の実施状況その他の国土交通省令で定める事項について、国土交通省令で定めるところにより、定期的に、委託者に報告しなければならない」と定めています。その中身が施行規則第40条第1項です。

……管理受託契約を締結した日から一年を超えない期間ごとに、及び管理受託契約の期間の満了後遅滞なく、当該期間における管理受託契約に係る管理業務の状況について次に掲げる事項……を記載した管理業務報告書を作成し、これを委託者に交付して説明しなければならない。一 報告の対象となる期間 二 管理業務の実施状況 三 管理業務の対象となる賃貸住宅の入居者からの苦情の発生状況及び対応状況(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則第40条第1項)

ここから2つ読み取れます。

1つ目。頻度の最低ラインは「1年を超えない期間ごと」です。年1回で法令上は足ります。毎月の報告が来ているなら、それは法令ではなく管理受託契約でそう決めてあるからです。

2つ目。載せるべき事項に数字が1つもありません。入居率、稼働率、空室数、募集の反響件数、どれも省令が挙げていません。「管理業務の実施状況」の中に何を書くかは、管理会社が決めます。

なお報告に関する事項は、契約前の説明事項として施行規則第31条第8号に、契約時の書面の記載事項として同規則第35条第2項第5号に、それぞれ挙がっています。つまり「何をどの頻度で報告するか」は、契約の前に書面で説明されているはずのものです。手元の管理受託契約書を開けば、いま何を受け取る約束になっているかが書いてあります。

入居率と稼働率の比較。入居率はある日に埋まっている戸数で割る時点の数字、稼働率は延べの部屋月数で割る期間の数字であることを22戸の建物の計算で示した図

入居率と稼働率は、何が違うのか

言葉の定義が法令にないので、ここは実務の通りに使い分けます。全22戸・満室想定家賃が月132万円(1戸平均6万円)の建物で、1年分を計算します。

入居率は「時点」の数字です

ある日を切って、埋まっている戸数を全戸数で割ります。3月31日に19戸埋まっていれば19÷22で86.4パーセントです。切る日を変えると数字が変わります。3月末は繁忙期の直後なので高く出て、1月末は低く出ます。管理会社が「入居率」を出すときは、まずどの日で切った数字かを確かめてください。

稼働率は「期間」の数字です

延べの部屋月数で見ます。22戸×12か月=264部屋月が満室です。年間の空室が合計で28部屋月だったなら、(264−28)÷264で89.4パーセントになります。途中で埋まったり空いたりした動きが、全部この数字に入ります。時点の入居率では消えてしまう「2か月だけ空いた部屋」が、稼働率には残ります。

賃料ベースは、値下げを拾います

戸数ではなく金額で割ります。満室想定の年間家賃1,584万円に対し、実際に入った家賃が1,380万円なら87.1パーセントです。これだけが「家賃を下げて埋めた」を数字に出します。戸数で数える入居率と稼働率は、6万円の部屋を4万5,000円にして埋めても100パーセントと出ます。

冒頭の建物で起きていたのは、まさにこれでした。値下げした部屋は入居率では「埋まっている」、滞納の部屋も「埋まっている」。戸数で数えると、家賃が入っていない部屋と入っている部屋が同じ1戸になります。

滞納をどちらに入れるか、決めておく

ここに正解はありません。契約は生きているので「入居」として数えるのが普通です。ただし手元に現金が入っていないという点では空室と同じです。

おすすめできるのは、滞納は入居率から外さず、別の行に「回収済み家賃」として並べる形です。入居率95.5パーセント、賃料ベース87.1パーセント、回収率91.2パーセントと3つ並べておけば、どこが痛んでいるかが1目で分かります。1つの数字にまとめようとすると、必ずどれかが隠れます。

数字の置き方そのものは賃貸経営で最初に覚える3つの数字に書いています。サブリースから管理委託に切り替えたときに手取りがどう動くかはサブリース(一括借上)から管理委託に切り替えるときの注意点に、入居率別の試算があります。

管理会社に何を聞けばよいのか

「入居率を教えてください」では、また各社の定義の数字が来ます。聞くのは定義ではなく、元のデータです。

  1. 部屋ごとの、空室になった日と埋まった日の一覧。これがあれば稼働率は自分で出せます
  2. 部屋ごとの、いま契約している家賃の額。募集時の条件ではなく、契約書の額です
  3. その月に入金された家賃の合計。送金明細の金額と一致するはずです

この3つは管理会社が必ず持っています。持っていなければ、その会社は部屋の状態を把握していないということです。「出せない」と言われた場合、数字がないのか、出したくないのかを分けて考える必要があります。

管理会社を変えた直後に見る場所は管理会社を変えたあとの3か月で見る5か所に、集金だけを頼む形にしたときの業法上の位置は管理を「一部委託」にするという選択にまとめています。

都合の悪いことも書いておきます

自分で数え始めると、他社と比べられなくなります。世に出ている「入居率」は定義が揃っていないので、自分の建物の賃料ベース稼働率87.1パーセントと、どこかの会社が出している「入居率98パーセント」は、並べても意味がありません。比較の相手は他社ではなく、去年の自分の建物です。

そして、数え始めた最初の年は数字が悪く出ます。これまで見えていなかった空白(退去から募集開始までの日数、原状回復に使った日数)が、全部延べ月数に乗ってくるためです。悪く出たのは経営が悪化したからではなく、測り方が細かくなったからです。1年目の数字は、2年目と比べるための基準として残してください。

今日できること

直近12か月分の送金明細を並べて、家賃が入っていない部屋の数を月ごとに書き出してください。それを足すと、延べの空室月数が出ます。全戸数×12で割れば、稼働率です。管理会社に聞かなくても、明細だけで出ます。

出典

賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号)第2条第2項、第13条第1項、第14条第1項、第16条、第20条、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律施行規則(令和2年国土交通省令第83号)第31条第8号、第35条第2項第5号、第36条、第40条第1項(いずれもe-Gov法令検索で2026年9月22日に現行条文を確認)。記事中の戸数・家賃・パーセントは、計算方法を示すための仮の数値です。

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