自主管理でできること・できないこと

結論からお伝えすると、自主管理でできないことは、思われているほど多くありません。本当にできないのは「他人の物件を仲介して手数料を受け取ること」だけで、自分の物件を貸し、契約し、集金し、修繕を手配することは一般的にはご自身でできます。問題になるのは、できるかどうかではなく、やり続けられるかどうかです。

釈迦に説法かもしれませんが、賃貸管理という言葉には10種類以上の作業が入っています。ひとまとめに「管理」と呼んでいるせいで、自分で持てる部分と外に出したほうがいい部分の切り分けができなくなります。ここでは業務を分解して、どこまでが自力の範囲かを整理します。

先に、よくある失敗から

「自分でやれる」と判断した結果、次のようなことが起きています。

  • インターネットで拾った契約書のひな型をそのまま使い、更新料と原状回復の条項が抜けていた
  • 知り合いの大家さんの部屋の入居者を紹介し、謝礼を受け取ってしまった
  • 敷金を生活口座に混ぜて管理していたため、退去時に精算根拠を示せなくなった
  • 火災保険の更新を入居者任せにしていて、失効したまま3年が経っていた
  • 電気温水器の交換を1社の見積だけで発注し、後で相場の1.5倍だったと分かった

2つ目は法令に触れる可能性がある行為です。残りは、手が回らなかったのではなくその作業が管理業務だと認識されていなかったものです。抜けやすいのは、忙しい作業ではなく数年に1回しか出てこない作業です。

自主管理でできること

費用の目安とあわせて並べます。金額は地域や物件によって幅があるため、実際の水準はお手元の見積で確認してください。

業務自分でやる場合外に出す場合の目安
募集の依頼・条件決め仲介会社に募集だけ依頼できる仲介手数料は家賃の1か月分が上限。広告料は0〜2か月分
入居審査保証会社の審査結果を使えば判断材料になる保証会社の初回料は総賃料の30〜50%程度が多い
契約書の作成・締結ひな型を一度専門家に確認すれば以後使える初回の確認費用のみ
家賃の集金・入金確認口座の入金を月2回確認すれば足りる集金代行のみの依頼も可能
更新手続き期限を管理表に入れておけば対応できる更新事務手数料が発生する場合がある
修繕の手配2社以上から見積を取る運用にする手配だけの依頼も可能
退去立会い・精算写真を撮り、区分をその場で書面化する立会い代行のみの依頼も可能

ご覧のとおり、ほとんどの業務は「全部やる」か「全部任せる」の二択ではありません。1業務ずつ外に出せます。ここを知らないまま、限界が来た瞬間に一括委託へ飛ぶ方が多いのが実情です。

できないこと・自分でやらないほうがいいこと

内容理由
他人の物件の貸し借りを仲介し、報酬を受け取る宅地建物取引業に当たる可能性が高い。免許が必要
借り上げて第三者に貸し、それを業として繰り返す転貸の形態によって扱いが変わる。事前確認が必要
深夜・早朝の一次受付できるが継続しない。受付だけ外に出すほうが現実的
入居者間のトラブルへの直接介入当事者と利害が近く、感情の受け皿になりやすい
滞納が3か月を超えたあとの対応法的手続きが絡む。弁護士・司法書士へ

1つ目と2つ目については、大家さんが自分の所有物件を自分で貸す行為は、一般的には宅地建物取引業の免許を必要としないと整理されています。ただし反復継続性の程度や転貸の有無で判断が変わるため、区分所有を多数貸す場合や転貸を含む場合は、事業を始める前に都道府県の宅地建物取引業免許の担当窓口に確認してください。

「できない」と「やらないほうがいい」は、同じことか?

違います。そして、この2つを混ぜて考えることが自主管理をこじらせる一番の原因です。一般的には「自主管理には限界がある」と言われますが、限界が来ているのは業務ではなく時間割のほうです。やれる業務を全部自分で抱えたまま本業の繁忙期が来た、というだけの話が大半です。

判断の順番としては、まず「法令上できないもの」を外し、次に「自分がやると精神的に消耗するもの」を外します。滞納の督促と入居者間トラブルは、この2番目に入りやすい業務です。滞納の初動については家賃を滞納された。最初の3日でやることに手順をまとめてあります。物件が離れている場合の組み立て方は遠方の物件をどう管理するかをご覧ください。

まとめ

自主管理でできないことは、他人の物件の仲介と、業としての転貸に関わる部分だけです。それ以外は一般的にはご自身でできます。したがって考えるべきは「どこまでできるか」ではなく「どの業務を手元に残すか」です。募集だけ、集金だけ、立会いだけ、という部分委託もできます。

一括での委託先を検討する段階になったら、会社の規模ではなく担当者を見てください。「あなたは何戸を担当されていますか」「5万円の修繕はご自身の判断で発注できますか」「経営者の方は、自分でも賃貸経営をされていますか」。この3つで対応の見通しが立ちます。3つ目が大事なのは担当者が特別だからではなく、経営者自身が家賃と返済の間で判断している会社では、スタッフに渡される優先順位が大家さんの側から作られているためです。

なお、契約書のひな型、保証の範囲、トラブル時の法的対応については弁護士・司法書士に、税務の扱いについては税理士にご確認ください。この記事は一般的な考え方の整理にとどめています。

さいたま市周辺で、どの業務を手元に残すか整理したいという方は、ご相談ください。全部を任せるかどうかを決めていない段階でもかまいません。

投稿者プロフィール

Follow me!

この記事の内容について、個別に相談したい方へ

さいたま市周辺で賃貸管理をお探しの方、いまの管理に迷いがある方のご相談をお受けしています。 まだ何も決めていない段階でもかまいません。

相談する(お問い合わせフォーム)