アパートのカーテンは防炎でなくていいのか|大家が義務を負うのは高さ31m超・民泊・足場の3つ
空室のカーテンレールに、量販店で買った遮光カーテンを吊るす。裾のタグには品質表示と洗濯マークだけで、「防炎」の文字はどこにもない。これで大丈夫なのか、と手が止まる大家さんは少なくありません。
結論からお伝えすると、高さ31メートル以下の普通のアパートの住戸は、消防法の「防炎」の義務の対象外です。義務がかかるのは、①建物の高さが31メートルを超えるとき、②建物の一部を民泊・店舗・グループホームなどに使うとき(その部分だけ)、③足場をかけて工事をするとき(工事用シート)の3つです。ここでは消防法8条の3と消防法施行令4条の3を読み、どこで線が引かれているかを整理します(条文は2026年10月14日時点のe-Gov法令検索で確認)。

防炎の義務がかかる建物は、条文でどう決まっているか
消防法8条の3第1項は、「高層建築物若しくは地下街又は劇場、キャバレー、旅館、病院その他の政令で定める防火対象物」で使う防炎対象物品に、防炎性能を求めています。高層建築物は8条の2第1項で「高さ三十一メートルを超える建築物」と定義されています。
政令で定める防火対象物は、施行令4条の3第1項が施行令別表第一の番号で列挙しています。
| 別表第一の区分 | 主な用途 | 防炎の義務 |
|---|---|---|
| (1)〜(4)項 | 劇場・集会場・飲食店・物品販売店など | あり |
| (5)項イ | 旅館・ホテル・宿泊所など | あり |
| (5)項ロ | 寄宿舎・下宿・共同住宅 | 列挙されていない |
| (6)項 | 病院・老人ホーム・グループホーム・保育所など | あり |
| (9)項イ・(12)項ロ・(16の3)項 | 公衆浴場のうち蒸気浴場など・映画スタジオなど・準地下街 | あり |
普通のアパートの住戸は、なぜ防炎カーテンでなくてよいのか?
表のとおり、共同住宅は(5)項ロで、施行令4条の3第1項の列挙に入っていません。だから、高さ31メートル以下のアパートの住戸では、量販店のカーテンを使っても消防法上の問題は生じません。
ただし、高さが31メートルを超えると話が変わります。8条の3第1項は高層建築物を用途と関係なく名指ししているので、共同住宅でも建物全体が対象です。31メートルは、設計によって変わりますが、おおむね10階建て前後が目安とされています。
この場合、入居者が自分で持ち込んだカーテンも対象です。防炎の手続きを負う「関係者」は、消防法2条4項で「所有者、管理者又は占有者」と定義されており、部屋を借りて住んでいる入居者は占有者にあたります。高い賃貸マンションを持っているなら、入居時の案内に一文入れておくのが確実です。
建物の一部だけが対象になる場面
施行令4条の3第2項は、複合用途の建物(別表第一(16)項)のうち、防炎の対象になる用途に使う部分を「一の防炎防火対象物とみなす」と定めています。住戸はそのままで、その部分だけに防炎の義務がかかります。アパートで起きやすいのは次の3つです。
- 1室を民泊にする…家主不在型の民泊は原則として(5)項イ(旅館・ホテル等)として扱われます。火災報知設備の考え方はアパートの1室を民泊にすると、火災報知設備は建物の延べ面積で決まりますに、民泊に回す前の確認は空室を民泊に回す前に見る4つのことにまとめています
- 1階を飲食店や物品販売の店に貸す…(3)項・(4)項にあたり、その店のカーテンやじゅうたんが対象です
- 建物や1室をグループホームの事業者に貸す…(6)項にあたります。借り手が事業者でも、使い方で区分が決まります
どの部分がどの区分になるかは、面積の割合などで変わることがあります。一般的には、用途を変える前に所轄の消防署の予防課へ図面を持って確認するのが確実です。用途を変えると建築基準法側の手続きも動くことがあり、その点は既存不適格のアパートは、そのまま貸し続けられますで扱っています。
カーテン以外に対象になるもの
防炎対象物品は施行令4条の3第3項で、カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゅうたん等、展示用の合板、どん帳その他舞台で使う幕と大道具用の合板、工事用シートと定められています。
- ブラインドは「布製」だけ…アルミや木のブラインドは対象物品に入っていません
- 「じゅうたん等」は広い…消防法施行規則4条の3第2項は、じゅうたんのほか、ござ、人工芝、合成樹脂製床シートまで挙げています。民泊にした部屋の床材を選ぶときは、施工前に消防署で確認しておくと手戻りがありません
外壁塗装の足場のシートも防炎です
見落としやすいのが工事です。施行令4条の3第1項は「工事中の建築物その他の工作物」を対象に含めており、施行規則4条の3第1項で除かれるのは都市計画区域外の専ら住居用の建築物などに限られます。つまり、都市計画区域内のアパートに足場をかけて外壁塗装をするとき、足場に張る工事用シートは防炎のものでなければなりません。住戸のカーテンは対象外でも、工事の間だけ建物が対象になるわけです。
実際に用意するのは施工業者ですが、見積書の仮設工事の欄に「防炎シート」と書かれているか、足場が立ったらシートの防炎ラベルが見えるかは、大家側で確かめられます。修繕の計画は大規模修繕の積立をどう考えるか、工事中の事故の責任は工事中に入居者がけがをしても、大家は原則として責任を負いませんで整理しています。
防炎ラベルの見方と、内装制限とのちがい
防炎性能のある物品には、消防庁長官の登録を受けた者だけが表示を付けられます(施行規則4条の4第1項)。付け方は縫付け・貼付け・下げ札などで、物品ごとに見やすい場所です。表示のない物品を防炎物品として売ったり陳列したりすることはできず(8条の3第4項)、紛らわしい表示を付けると30万円以下の罰金の対象です(44条3号)。
既製品でなく生地から作らせたカーテンは、「防炎作製品」の文字、作製した者の名前、作製した年月を明らかにしておく決まりがあります(施行規則4条の4第9項)。業者にオーダーするときは、ラベルの有無を納品書と一緒に確認してください。
もう1つ混同されやすいのが、建築基準法35条の2の「内装制限」です。こちらは壁と天井の仕上げの話で、カーテンやじゅうたんは入っていません。床材やカーテンの防炎は消防法、壁と天井のクロスの燃えにくさは建築基準法、と法律が分かれています。

大家が確かめる順番
- 建物の高さが31メートルを超えるか(確認済証や図面で見る)
- 1室でも、住居以外(民泊・店舗・グループホームなど)に使っている部分があるか
- 足場をかける工事の予定があるか(見積書の工事用シートの欄)
3つとも当てはまらなければ、住戸のカーテンは入居者の好みに任せてかまいません。どれか1つでも当てはまるなら、その部分の図面を用意して、所轄の消防署の予防課に区分と対象物品を確認しておくと、検査のときに慌てずに済みます。消防署の立入りや点検の報告についてはアパートの消防設備点検は業者に頼むしかないのかもあわせてどうぞ。
(出典:消防法・消防法施行令・消防法施行規則・建築基準法〈e-Gov法令検索・2026年10月14日時点〉、公益財団法人日本防炎協会「防炎物品の種類と防炎規制の対象となる防火対象物」)
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