エアコンクリーニングは退去のたびに必要か|国のガイドラインは大家負担の側に置いています
退去の精算書が届いた。ハウスクリーニング1式、そしてその下に「エアコン内部洗浄 1台」の行が並んでいる。前の入居者は2年半住んで、たばこは吸わない人だった。この1行は入居者に請求してよいものなのか、それとも自分で持つものなのか。管理会社に聞くと「うちは毎回入れています」と返ってきます。
結論からお伝えすると、エアコンの内部洗浄は、国のガイドラインでは賃貸人(大家さん)が負担するのが妥当とされている項目です。入居者に請求できるのは、喫煙等による臭いなどが付着している場合に限られます。そのうえで「毎回やるかどうか」は法律ではなく、前回からの経過と運転時間で決める話になります。

ガイドラインは、内部洗浄をどちら側に置いているか
国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(平成23年8月)は、設備・その他の項目に「エアコンの内部洗浄」を立てています。考え方として書かれているのは、次の1文です。
喫煙等による臭い等が付着していない限り、通常の生活において必ず行うとまでは言い切れず、賃借人の管理の範囲を超えているので、賃貸人負担とすることが妥当と考えられる。
同じガイドラインの一覧表でも、「賃貸人が負担することが妥当と考えられるもの」の側に「エアコンの内部洗浄(喫煙等の臭いなどが付着していない場合)」が並んでいます。
理由の書き方に注目してください。「汚れていないから」ではありません。通常の生活のなかで必ず行うとまでは言い切れず、借りている人の管理の範囲を超えているから、という理屈です。フィルターの掃除は入居者の日常の手入れの範囲でも、分解して熱交換器や送風ファンを洗うのは範囲の外だ、という線の引き方になっています。
民法第621条は、通常の使用によって生じた損耗と経年変化を、賃借人の原状回復義務から除いています。ガイドラインの整理はこの条文と同じ向きです。負担区分の全体像は原状回復の費用は誰が払うのか|ガイドラインの考え方にまとめました。
ハウスクリーニングとは、別の項目になっています
ここが取り違えやすいところです。ガイドラインは「専門業者による全体のハウスクリーニング」と「エアコンの内部洗浄」を、別の項目として並べています。どちらも賃貸人負担側ですが、1つの項目にまとめてはいません。
これは料金表の作られ方とも一致しています。当社が運営する「大家さんの内装屋」の料金表では、ハウスクリーニング一式が間取り別の価格で、エアコンクリーニングはその外に別料金として立っています。作業内容の一覧にも、窓サッシ・浴室・トイレ・台所・各収納は入っていますが、エアコンの内部洗浄は入っていません。
つまり「ハウスクリーニング1式」という1行の中に、エアコンの内部洗浄が含まれているとは限りません。精算書に「クリーニング一式」とだけ書かれていて金額が大きいときは、何が入っているのかを分けてもらってください。一式表記の見方は原状回復の見積りが「一式」で来たら|大家が内訳を請求できる根拠と、自分の義務に書きました。
契約書にクリーニング特約を入れている場合も同じです。特約の文言が「ハウスクリーニング費用」となっているなら、エアコンの内部洗浄はその文言に入っていない可能性があります。特約が効くための条件は大家が賃貸借契約書で必ず読む3か所|特約は書けば通るわけではないをご覧ください。
例外は、喫煙等による臭いが付着している場合です
ガイドラインが例外として名指ししているのは、喫煙等による臭い等が付着している場合です。壁のクロスについても同じ考え方が示されており、喫煙等により居室全体でクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合に限り、居室全体のクリーニングまたは張替費用を賃借人負担とすることが妥当、とされています。
ここで必要になるのが記録です。臭いは写真に写りません。入居時と退去時の状態を比べられる材料がないと、「もともとそうだった」で終わります。立会いの記録の作り方は退去立会いで確認すべき場所と、写真の撮り方に整理しています。

では、毎回やるかどうかは何で決めますか?
ガイドラインが決めているのは負担する人であって、実施の要否ではありません。やる・やらないは大家さんが決めます。判断の材料は3つです。
| 見るもの | 目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 前回の洗浄からの年数 | おおむね2〜3年 | 入居期間が半年で退去した部屋を毎回洗う必要は薄いです |
| 実際に運転していた期間 | 通年か、夏だけか | 同じ2年でも、通年運転と夏場だけでは中の状態が違います |
| 本体そのものの年数 | 10年前後 | 交換が近いなら、洗う費用を交換に回す判断もあります |
3つ目については、ガイドラインが冷房用・暖房用機器(エアコン、ルームクーラー)の耐用年数を6年とし、6年で残存価値1円となるように負担割合を計算する考え方を示しています。これは入居者に費用を負担してもらう場面の計算で、機械が6年で壊れるという意味ではありません。ただ、洗浄費を毎回かけるより入れ替えたほうが早い時期は必ず来ます。切り替えの考え方はエアコン・給湯器はいつ替えるか|壊れる前と後の費用差と熱中症で運ばれた場所の1位は住居|大家が空室のうちに決めるエアコンの扱いにまとめました。
金額は「単体で頼むか、一緒に出すか」で変わります
費用の水準を、公表されている数字で置いておきます。
当社が運営する「大家さんの内装屋」の場合、エアコンクリーニングはハウスクリーニング一式と一緒に頼むと1台10,000円(税込11,000円)、単体で頼むと1台15,000円(税込16,500円)です(税別表記・料金表より)。ハウスクリーニング一式はワンルーム/1Kの25平方メートルまでで18,000円(税込19,800円)からとなっています。これは継続して発注する事業者向けの業者価格で、個人が単発で頼む一般消費者価格は2〜3割上と考えてください。
一般の消費者向けの水準としては、ダスキンのサービスマスターがエアコンクリーニング(壁掛けタイプ)の標準料金を15,400円(税抜14,000円)と公表しています(出典:ダスキン公式サイト・サービスマスターのエアコンクリーニング。運営は株式会社ダスキン、代表取締役社長執行役員 大久保裕行)。天井埋込1・2方向タイプは34,100円(税抜31,000円)からです。
ここで効くのは金額の高い安いではなく、まとめて出したときと単体で出したときの差です。同じ作業でも1台あたり5,000円(税別)動きます。エアコンだけを後から思い出して追加で頼むと、そのぶん高くなります。退去のたびにやるかどうかを迷うより、「やると決めた回は、クロスやクリーニングと同じ発注に載せる」ほうが金額には効きます。工事をまとめる考え方は原状回復を安くする方法と、安くしてはいけない場所に書いています。
都合の悪いことも書いておきます
エアコンの内部洗浄が大家さん負担だということは、退去のたびに毎回やれば、その費用は全額こちら持ちだという意味です。2年ごとに退去が出る部屋なら、10年で5回。単体で頼み続ければ8万2,500円(税込)になります。空室対策として意味のある出費なのか、それとも習慣で入れているだけなのかは、分けて考える必要があります。
逆に、洗わないまま次の入居者に渡して、入居後すぐに「臭いがする」と連絡が来れば、そのとき動くのは同じ大家さんです。しかも入居中なので日程調整が要り、部屋の中に人がいる状態での作業になります。空室のうちに済ませておくほうが、手間としては軽く済みます。
もう1つ。ここで書いたのはガイドラインの考え方で、これは法律そのものではありません。実際の負担区分は契約書の内容と使用状況で決まりますし、特約の効力は個別の事情で判断が分かれます。金額の大きい案件や、契約書の文言があいまいな場合は、弁護士や消費生活センターなど専門の窓口に条文ごと見てもらってください。
今日できること
手元にある直近の退去精算書を1枚開いて、エアコンの内部洗浄が「入居者負担」の欄に入っていないかを見てください。入っていて、その入居者が喫煙者でなかったのなら、ガイドラインの整理とは逆向きです。次の退去の前に、管理会社と負担区分の取り決めを確認しておくと、同じ行がもう一度出てくるのを止められます。退去から次の募集までの流れははじめて空室が出たときの流れ|退去連絡から次の入居まで大家がやることにまとめています。
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