岩槻区は人口が減っても、30代の世帯は入っています|地下鉄7号線の延伸は「要請」の段階です

結論からお伝えすると、岩槻区は市内でいちばん高齢化が進み、人口も減っている区ですが、子どもを連れた世帯は3年で入ってきています。減っているのは20代前半です。そして地下鉄7号線の延伸は、2026年3月31日に県と市が鉄道事業者へ要請した段階で、開業は国の認定から14年先の計画です。募集図面に「地下鉄が来る」と書ける段階ではありません。

この記事では、さいたま市が公開している区別・1歳刻みの人口(2023年9月1日と2026年9月1日)、市の統計書の駅別乗車人員、そして延伸について県・市・鉄道事業者が公表した文書を並べて、岩槻区で賃貸を続ける大家が何を前提にすればよいかを整理します。

岩槻区の人口は、どの年代が減っているのか

岩槻区 さいたま市全体
人口(2023年9月1日) 112,459人 1,343,507人
人口(2026年9月1日) 111,576人 1,360,813人
3年の増減 −0.8% +1.3%
65歳以上の割合(2026年) 30.1%(10区で最高) 23.5%
20〜34歳の割合(2026年) 14.7%(10区で最低) 17.8%

10区のうち人口が減ったのは岩槻区と桜区だけで、減り幅は岩槻区が大きくなっています。ただ、もう1つ目を引く数字があります。65歳以上の人数そのものが、3年で3万4,082人から3万3,602人へ480人減っています。市全体では65歳以上は増えています。岩槻区は、高齢の人が増える段階を過ぎ、亡くなる人や転出する人のほうが上回る段階に入りつつあると読めます。

岩槻区の人口減少と高齢化、若い世代の転出と子育て世帯の転入を示した図

同じ生まれ年の人を3年追いかけると、どこで抜けているか

「2023年に20〜24歳だった人が、2026年に23〜27歳で何人いるか」のように、同じ生まれ年の人を追いかけます。若い年代は亡くなる人がごく少ないので、差はほぼ転入と転出の差です。

追いかけた年代(2023年→2026年) 岩槻区 市全体
15〜19歳 → 18〜22歳 +214人(+4.3%) +11.0%
20〜24歳 → 23〜27歳 −31人(−0.6%) +12.3%
30〜34歳 → 33〜37歳 +274人(+4.9%) +3.9%
0〜2歳 → 3〜5歳 +126人(+6.0%) +2.5%

20〜24歳から23〜27歳への動きがマイナスになったのは、10区のうち岩槻区だけでした。学校を出て働き始める年代が、区の外へ出ています。一方で30代前半と未就学の子どもは、市全体より強く入ってきています。

つまり岩槻区で入居者として厚いのは、単身の若い社会人ではなく、30代の世帯です。岩槻は敷地と駐車場で選ばれるという話は大宮・浦和・岩槻|賃貸経営の違いで書きましたが、人口の数字もその向きを裏づけています。

駅は2つ。区の広さに対して少ない

さいたま市統計書(令和7年版)によると、2024年度の1日平均乗車人員は、東武アーバンパークラインの岩槻駅が17,562人、東岩槻駅が9,762人でした。前年度からの伸びは2.2%と1.1%です。

岩槻区の面積は49.17平方キロメートルで、市の面積の2割強を占めます。その区に鉄道の駅は2つしかありません。区の中でも、駅から歩ける物件とバスや車が前提の物件では、比べられる相手がまったく違います。

地下鉄7号線の延伸は、いまどの段階にあるのですか?

埼玉高速鉄道線(地下鉄7号線)を浦和美園から岩槻まで約7.2キロメートル延ばす計画です。公表されている手続きを順に並べます。

  1. 2026年3月31日……埼玉県とさいたま市が、都市鉄道等利便増進法11条1項にもとづき、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(整備主体)と埼玉高速鉄道(営業主体)に事業の実施を要請し、計画の素案を示しました。概算事業費は1,440億円(令和7年4月価格)、概算工期は「速達性向上計画の認定から開業までの期間」で14年です
  2. 2026年6月30日……埼玉高速鉄道が、同法11条2項にもとづいて回答を公表しました。内容は「営業構想の認定申請の準備に着手する」、そして環境影響評価などと並行して関係者間で調査を続け、「営業構想の認定申請を判断する」というものです

11条2項は、要請を受けた者に「認定の申請をするか否かについて、遅滞なく、公表しなければならない」と定めています。今回の回答は、申請の準備に着手したうえで、申請するかどうかの最終判断はこれから、という段階です。工期14年の起点になる認定は、まだ出ていません。

計画の素案では、整備されるのは浦和美園駅(既存)、埼玉スタジアム駅(仮称・臨時駅)、中間駅(仮称)、岩槻駅(仮称)です。岩槻の既成市街地から岩槻駅(仮称)までは地下の構造とされています。所要時間は岩槻駅(仮称)から永田町駅まで約66分が約52分になると試算されています。

地下鉄7号線延伸の要請から認定までの手続きの段階を示した図

募集図面に書いてよいのか

不動産広告のルールである「不動産の表示に関する公正競争規約」の施行規則9条6号は、「新設予定の駅等又はバスの停留所は、当該路線の運行主体が公表したものに限り、その新設予定時期を明示して表示することができる」としています。

この規約に従うのは広告を出す不動産会社ですが、募集を頼む大家もここは知っておいたほうが安全です。いまの段階で、営業主体が公表しているのは「認定申請の準備に着手」までです。「地下鉄開業予定」「都心直通へ」を、決まったことのように募集の売り文句にしないのが無難です。書き方に迷ったら、募集を依頼している不動産会社に確認してください。

家賃や売値への影響も、今の時点で見込みに入れるのは早すぎます。14年という工期は、築30年のアパートが築44年になる長さです。

都合の悪いことも書いておきます

  • 住民基本台帳は住民票を移した人だけを数えます。岩槻区にある大学に通う学生が住民票を移していなければ、18〜22歳の数字には入りません
  • 区の数字は、岩槻駅の近くと農地の多い地域をならした値です。駅の近くの部屋が区の平均どおりに苦戦するとは限りません
  • 延伸の計画は、今後の環境影響評価や認定の手続きで内容が変わることがあります。この記事の内容は2026年9月26日時点の公表資料によります

区ごとの人口の読み方は大宮区の単身需要は人口ではなく世帯で見ると浦和区のファミリー需要は「多い」けれど「増えて」はいませんで、地価の区ごとの開きは埼玉の地価は5年連続で上がっても、63市町村のうち21は下落で扱っています。ファミリー向けで駐車場代をどう契約するかは駐車場代を家賃に含めるか別契約にするかを参考にしてください。

今日やること

岩槻区の物件なら、いま出している募集図面を開いて、「駐車場の台数と月額」「最寄り駅までの距離」「指定校」の3つが1枚目に載っているかを確かめてください。3年の数字が示している入居者は30代の世帯です。その人たちが最初に探す情報が図面の上にあるかどうかで、問い合わせの数が変わります。

出典

  • さいたま市「年齢別人口(令和8年)」CSV(2026年9月1日現在)、「年齢別人口(令和5年)」Excel(2023年9月1日現在)。割合・増減率は公表数値から計算
  • さいたま市「第25回さいたま市統計書(令和7年版)」2-2 区別人口の推移、13-2 東武鉄道駅別乗車人員(2026年4月10日更新)
  • 埼玉県「埼玉高速鉄道線(地下鉄7号線)の延伸について」(2026年4月1日掲載)
  • 埼玉高速鉄道「埼玉高速鉄道線(地下鉄7号線)延伸に関する事業実施要請の回答について」(2026年6月30日)
  • e-Gov法令検索 都市鉄道等利便増進法11条(2026年9月26日時点)
  • 不動産公正取引協議会連合会「不動産の公正競争規約」(表示規約施行規則9条6号)

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