工事で出た廃材を捨てる責任は、大家にはありません|元請が排出事業者になる条文と、大家に残る2つ

退去したばかりの1階の部屋の前に、はがしたクロスとクッションフロアが3袋、ベニヤの切れ端が10枚ほど、ブルーシートに載ったまま2日置かれている。入居中の2階の方から「あれ、いつまで置くんですか」と電話が入る。工事はあと1日で終わる予定でした。

結論からお伝えすると、工事で出た廃材を捨てる責任は、大家(注文者)ではなく元請業者にあります。これは慣習ではなく、廃棄物処理法21条の3第1項が名指しで決めていることです。ただし、大家の側に残るものが2つあります。工事の前からそこにあった物と、処理費をきちんと見積りに載せることです。

工事で出た廃材の排出事業者が元請業者になることを5点で示した図

法律は「元請業者を事業者とする」と書いています

廃棄物処理法3条1項は「事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」と定めています。ここでいう事業者を、建設工事については別に決めているのが21条の3第1項です。

土木建築に関する工事(建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事を含む。以下「建設工事」という。)が数次の請負によつて行われる場合にあつては、当該建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理についての(中略)規定の適用については、当該建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者から直接建設工事を請け負つた建設業(中略)を営む者(以下「元請業者」という。)を事業者とする

(出典:e-Gov法令検索・廃棄物の処理及び清掃に関する法律21条の3/2026年9月21日時点)

環境省の「建設廃棄物処理指針」も、この条文の趣旨をこう説明しています。「実際の工事の施工は下請業者が行っている場合であっても、発注者から直接工事を請け負った元請業者を排出事業者とし、元請業者に処理責任を負わせることとしている」。関係者が多くて責任の所在があいまいになるのを防ぐため、1人に寄せた、という書き方です。

この法律で「注文者」という語が出てくるのは、21条の3第1項のこの1か所だけです。元請業者を定義するために出てくるだけで、注文者に処理責任を負わせる条文はありません。

だから、マニフェストの写しは大家には来ません

産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付する義務は、廃棄物処理法12条の3第1項で「その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者」に課されています。建設工事では、それは元請業者です。交付する相手は運搬や処分を受託した業者で、注文者である大家は、法律上の交付先ではありません。

「工事が終わったらマニフェストの写しをもらいましょう」という説明をよく見ます。もらうこと自体は構いませんが、それは契約でお願いしている話であって、法律上の権利ではありません。断られても違法ではない、ということです。

では、大家は何を求めればよいのですか?

環境省の指針は、排出事業者が果たす役割として「元請業者は廃棄物の処理方法等を記載した廃棄物処理計画書を作業所ごとに作成し、発注者の要求に応じて提出すること」「廃棄物処理の結果を発注者に報告すること」を挙げています。

つまり、指針が想定している大家からの要求は、マニフェストではなく次の2つです。

  • 着工前:廃棄物処理計画書(何をどう分別し、どこへ持って行くか)
  • 完了時:処理の結果の報告

指針は発注者の責務としても「工事が終わった時は元請業者に報告させ、建設廃棄物が適正に処理されたことを確認する。また、建設廃棄物が放置されていないか注意を払うこと」と書いています。見に行って確かめるところまでが発注者側です。

工事で出た廃棄物と工事の前からあった廃棄物の扱いを左右で比べた図

大家に残るもの、その1。工事の前からそこにあった物

ここが実務でいちばん揉めます。指針は発注者の責務の1番目に、こう置いています。

建設工事等を行う以前からの廃棄物(例えば、解体予定建築物中に残置された家具等の廃棄物)を適正に処理すること。

前の入居者が置いていった冷蔵庫、押し入れの布団、ベランダの自転車。これらは工事で出たものではないので、元請業者の廃棄物になりません。建物の持ち主のものとして残ります。

実際の現場では、工事の見積りに「残置物撤去一式」として含めてしまうことが多く、それ自体は違法ではありません。ただし誰の廃棄物として、どの許可で運ぶのかが変わるため、工事の廃材と同じ扱いにはなりません。見積りの行が分かれていない場合は、そこだけ内訳を聞いてください。見積りの読み方は 原状回復の見積りが「一式」で来たら に書きました。

大家に残るもの、その2。処理費を値切らないこと

廃棄物処理法19条の6第1項は、不法投棄などが起きたときに都道府県知事が支障の除去を命じられる相手として「排出事業者等」を挙げ、その要件の2号にこう書いています。

排出事業者等が当該産業廃棄物の処理に関し適正な対価を負担していないとき、当該収集、運搬又は処分が行われることを知り、又は知ることができたときその他(中略)排出事業者等に支障の除去等の措置を採らせることが適当であるとき。

命令の相手は元請業者ですが、「適正な対価」を払えない金額に工事を叩いたのは誰かという話が、この条文の背景にあります。指針が発注者の責務に「積算上の取扱いにおいて適正な建設廃棄物の処理費を計上すること」を挙げているのは、そのためです。

相見積もりで金額だけを並べて一番安いところに決めるとき、処分費の行だけが極端に低い見積りがないかを見てください。総額の差が処分費の差である場合、その差は現場のどこかに出ます。

「大家が自分で運べば安い」は、条文の上では危ない道です

軽トラックを持っている方から「自分で運べば処分費が浮く」と言われることがあります。工事で出た廃材は元請業者の廃棄物です。他人の産業廃棄物を業として運ぶには許可が要り、無許可で行った場合の罰は廃棄物処理法25条1項1号で5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはその併科です。元請が許可のない相手に委託した場合も、同じ25条1項6号で同じ重さの罰が置かれています。

なお、下請業者が自分で運べる例外はありますが、条件はかなり細かく決まっています。廃棄物処理法21条の3第3項と施行規則18条の2により、次のすべてを満たす場合に限られます。

  • 解体・新築・増築以外の工事で、請負代金が500万円以下であること(引渡し後の瑕疵の修補工事も同様)
  • 1回に運ぶ量が1立方メートル以下であること
  • その現場の都道府県か、隣接する都道府県にある元請業者の施設へ運ぶこと
  • 運搬の途中で保管しないこと
  • 書面による請負契約でその旨を定めていること

しかも施行規則18条の2第2項は、同じ者が2つ以上の契約に分けて請け負った場合は1つの契約とみなす、と釘を刺しています(正当な理由がある場合を除く)。500万円の線を割るために契約を分けることはできません。

今日、確かめられること

  1. 次の工事の見積書で、処分費が独立した行になっているかを見る。「一式」に溶けていたら内訳を聞く
  2. 残置物の撤去が、工事の廃材と別の行になっているかを見る
  3. 着工前に廃棄物処理計画書、完了時に処理の結果の報告を出してもらえるか、口頭で確認しておく

工事の代金の払い方は 工事の前払いは法律上の原則ではありません、入居者への知らせ方は 工事のお知らせは何日前に出すか、現場に貼られる紙の見分け方は アパートの掲示板に法律上の設置義務はありません にあります。費用の負担区分そのものは 原状回復の費用は誰が払うのか をご覧ください。

個別の廃棄物の区分や許可の要否は、現場のある市区町村と都道府県の廃棄物担当課が窓口です。判断に迷うものが出たら、そこで確認してください。

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