管理人に残業や休日出勤を頼むなら、1人でも36協定を結んで届け出ます|労働基準法36条の上限は月45時間・年360時間です
結論からお伝えすると、管理人や清掃のパートに、1日8時間・週40時間を超えて働いてもらうときや、毎週の休日に働いてもらうときは、書面の協定を結んで、労働基準監督署に届け出る決まりです(労働基準法36条1項)。これが「36協定」です。雇っている人が1人でも、この決まりは同じです。協定で決められる残業には上限があり、原則は月45時間・年360時間です。現行の条文で確かめました(2026年10月5日時点)。

協定を結ぶ相手は、「過半数の代表」です
36条1項は、その事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があればその組合、なければ労働者の過半数を代表する者との書面による協定を求めています。大家さんが雇う人たちには労働組合がないのが普通なので、相手は過半数代表者になります。
施行規則6条の2は、過半数代表者を、次の2つにあてはまる人としています。
- 監督や管理の地位にある人(41条2号)ではないこと
- 協定を結ぶ人を選ぶと明らかにしたうえで、投票や挙手などの方法で選ばれた人で、使用者の意向で選ばれた人ではないこと
使用者は、その人が過半数代表者になろうとしたことや、正当な行為をしたことを理由に、不利益な取扱いをしてはいけません。管理人が1人しかいないときに、誰が「過半数を代表する者」になるのかは、条文には書かれていません。結ぶ前に、所轄の労働基準監督署へ確かめてください(管理人の給与から家賃を引く大家は、書面の労使協定が要りますと同じ論点です)。
協定に書くことと、届出の様式は決まっています
36条2項は、協定に次の事項を定めるとしています。
- 残業や休日労働をさせられる労働者の範囲
- 対象期間(1年間に限ります)
- 残業や休日労働をさせられる場合
- 対象期間のうち、1日・1か月・1年それぞれについて延ばせる時間、または働かせられる休日の日数
- 省令で定める事項(施行規則17条:協定の有効期間、1年の起算日など)
「場合」には、できるだけ具体的な事由を書きます。厚生労働省のパンフレットは、「業務の都合上必要な場合」のような、長時間労働が続く恐れのある書き方は認められないとしています。管理人なら、退去が月末に重なる、緊急の水漏れで呼び出す、台風のあとに見回る、といった事由が考えられます。
届出は、施行規則16条1項により、様式第9号で所轄の労働基準監督署長にします。次の特別条項を定めるときは、様式第9号の2です。協定を更新するときは、更新する旨の協定を届け出れば、あらためて届出をしなくてよいとされています(16条3項)。協定は、労働者に周知します(106条1項。掲示・書面の交付・電子ファイルの備付けのいずれか。施行規則52条の2)。
残業の上限は、月45時間・年360時間です
36条3項と4項は、協定で定められる延長時間は、限度時間の範囲内に限るとしています。限度時間は、1か月について45時間、1年について360時間です。
臨時的に、これを超えて働いてもらう必要が見込まれるときは、36条5項の特別条項を協定に付けられます。通常は予見できない業務量の大幅な増加などが理由で、次の枠の中で定めます。
- 1か月:残業と休日労働を合わせて100時間未満
- 1年:残業が720時間以内
- 月45時間を超えられる月数:1年につき6か月以内
さらに、36条6項は、協定の内容にかかわらず、実際の労働が次の線を超えてはならないとしています。1か月の残業と休日労働の合計は100時間未満、2か月から6か月のどの期間をとっても、1か月あたりの平均は80時間以下です。

協定を結ばずに残業させたら、どうなりますか?
36協定がない状態で法定労働時間を超えて働かせると、32条の違反になります。119条1号は、32条に違反した者を、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処すると定めています。36条6項に違反した場合も同じ条文に入っています。
残業のあとには、割増賃金の話が続きます。協定を結んだからといって、割増賃金を払わなくてよいわけではありません。
協定がなくても、時間を延ばしてよい場合はありますか?
33条1項が、災害その他避けることのできない事由で、臨時の必要がある場合を定めています。使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度で、時間を延ばしたり休日に働かせたりできます。事態が急迫して許可を受ける暇がないときは、事後に遅滞なく届け出ます。台風で何か所も水漏れが起きた夜のような場合が考えられますが、「忙しい」というだけでは当たりません。当たるかどうかは、事情ごとに行政官庁が見ます。
都合の悪いことも書いておきます
- 許可を受けて監視または断続的労働として41条3号の対象にした管理人には、32条が働かないので、協定が要らないことがあります(管理人にも毎週1回の休日が要ります)。ただし、許可は自動では付きません。
- 家事使用人には労働基準法が適用されません(116条2項)。賃貸経営のために雇う管理人が当たるかは、条文だけでは判断できません。
- 協定の様式は、規則16条が示す様式第9号です。書式の細かい書き方は、条文ではなく、監督署の案内に従います。
- 協定を結ぶ前に、1日8時間・週40時間を超えない勤務表が組めないかを見るほうが先です。上限の数え方は、管理人の休憩は、6時間を超えたら45分ですの勤務表の数え方とあわせて見てください。
今日やることを1つだけ選ぶなら
管理人の直近1か月の勤務を見て、1日8時間か週40時間を超えた日、または休日に出てもらった日が1日でもあったかを数えてください。1日もなければ、いまは協定は要りません。あれば、協定の届出がないまま続いていないかを確認し、届出がなければ、所轄の労働基準監督署に様式第9号の書き方を確かめます。雇用条件の書面はアパートの管理人を雇う大家が書面で示すことを見てください。個別の判断は、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確かめてください。
出典
- 労働基準法32条・33条・36条・41条・106条・116条・119条(e-Gov法令検索・2026年10月5日時点)
- 労働基準法施行規則6条の2・16条・17条・52条の2(同)
- 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説(厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署/栃木労働局掲載)
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