管理人に残業を頼んだら、2割5分以上の割増賃金です|労働基準法37条は月60時間を超えると5割以上に上がります
結論からお伝えすると、管理人や清掃のパートに1日8時間・週40時間を超えて働いてもらったときは、その時間に2割5分以上の割増賃金を払います。夜10時から朝5時までの労働には別に2割5分以上が乗り、休日に働いてもらったときは3割5分以上です。1か月の残業が60時間を超えると、超えた分は5割以上になります。労働基準法37条と施行規則を現行の条文で確かめました(2026年10月5日時点)。

割増の率は、場面ごとに決まっています
37条1項は、使用者が労働時間を延長したり休日に働かせたりしたときは、通常の賃金に2割5分以上5割以下の範囲で政令が定める率以上を掛けた割増賃金を払うと定めています。その政令(割増賃金の率の最低限度を定める政令)は、延長した労働時間の労働を2割5分、休日の労働を3割5分としています。
- 時間外(1日8時間・週40時間を超えた分):2割5分以上(37条1項と政令)
- 1か月の時間外が60時間を超えた分:5割以上(37条1項ただし書)
- 深夜(午後10時から午前5時):2割5分以上(37条4項)
- 休日(35条の休日):3割5分以上(政令)。休日の決まりは管理人にも毎週1回の休日が要りますに書きました
場面が重なるときは、施行規則20条が足し算の形を定めています。時間外が深夜に及ぶと5割以上(60時間を超えた分なら7割5分以上)、休日の労働が深夜に及ぶと6割以上です。
1か月60時間を超える部分の5割以上について、現行の37条1項ただし書は、事業の規模で分けていません。附則を調べた範囲でも、中小事業主だけを外す条文は見当たりませんでした。
時給1,200円の管理人に頼むと、1時間いくらになりますか?
時給1,200円の人で、割増の下限どおりに計算するとこうなります。
- 時間外の1時間:1,200円 × 1.25 = 1,500円
- 時間外が午後10時を過ぎた1時間:1,200円 × 1.5 = 1,800円
- 休日の1時間:1,200円 × 1.35 = 1,620円
- 休日の深夜の1時間:1,200円 × 1.6 = 1,920円
- 月60時間を超えた時間外の1時間:1,200円 × 1.5 = 1,800円
月給の人は、施行規則19条1項4号が、月によって定めた賃金を月の所定労働時間数で割った額を時間単価とするとしています。月によって所定労働時間が違うときは、1年間の1か月平均で割ります。割増の基礎になる月給が19万2,000円、月の所定労働時間が160時間なら、1時間は1,200円です。
割増の基礎に入れない手当があります
37条5項と施行規則21条は、割増賃金の基礎から家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金を外すとしています。外せるのはこの列記のものだけです。栃木労働局の解説も、名称ではなく内容で判断されるとしています。
住み込みの管理人に家賃の優遇をしているとき、その優遇が賃金に入るのかどうかは、条文だけでは読み切れません。給与から家賃を引く場合の決まりは管理人の給与から家賃を引く大家は、書面の労使協定が要りますに整理しました。
割増がつくのは、法定労働時間を超えた時間だけです
37条1項が割増を求めているのは、33条または36条1項によって労働時間を延長した場合です。36条1項は、32条の労働時間(1日8時間・週40時間)を延ばす話をしています。所定労働時間が1日6時間の管理人が7時間働いても、8時間までは法定労働時間の内側です。この1時間に2割5分を付けるかどうかは、条文の外にあり、雇用条件の書面で決めます。
ただし、割増がつかないことと、賃金を払わなくてよいことは別です。働いた1時間は、約束した時給で払います(24条1項は賃金の全額払いを求めています)。
住み込みの管理人は、残業代の対象から外れますか?
許可があれば外れる部分がありますが、自動では外れません。41条3号は、監視または断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたものについて、労働時間・休憩・休日の規定を適用しないとしています。許可がなければ37条はそのまま働きます。許可を受けていた場合に深夜の割増がどうなるかは、条文だけでは読み切れないので、許可書を持って労働基準監督署に確かめてください。

払わなかったときは、どうなりますか?
119条1号は、37条に違反した者を、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処すると定めています。払っていない分は、あとからさかのぼって請求を受けます。賃金の請求権の時効は条文では5年ですが、附則143条3項で当分の間は3年とされています(115条)。賃金台帳には、延長した時間数・休日労働の時間数・深夜の時間数を記入する決まりです(施行規則54条1項6号。人を雇った大家が備える帳簿は2つです)。
都合の悪いことも書いておきます
- 割増賃金を払えば残業を頼めるわけではありません。時間外に働いてもらうには、36条1項の書面の協定と届出が別に要ります。
- 毎月の手当に残業代を含めて払う形が認められるかは、条文だけでは読み切れません。
- 家事使用人には労働基準法が適用されません(116条2項)。賃貸経営のために雇う管理人が当たるかは、条文だけでは判断できません。
- 雇用保険や労災保険の加入は別の話です。清掃のパートを1人雇う大家の労災保険と大家が雇う管理人や清掃のパートは、週20時間から雇用保険の対象ですを見てください。
今日やることを1つだけ選ぶなら
管理人の出勤簿から、直近の1か月で1日8時間か週40時間を超えた日と、午後10時を過ぎた日を数えてください。1日もなければ、いまは割増の話は起きていません。あれば、その時間ぶんが上の率のどれに当たるかを書き出します。個別の判断は、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確かめてください。
出典
- 労働基準法24条・36条・37条・41条・115条・116条・119条、附則143条(e-Gov法令検索・2026年10月5日時点)
- 労働基準法施行規則19条・20条・21条・54条(同)
- 労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(同)
- 時間外、休日及び深夜の割増賃金(第37条)(栃木労働局)
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